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365個の物語  作者: ひなた
文月 夏の日の夢
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文月九日

  夏の夜の 短きにありて 掴み得ず

     長閑な春眠 求むる日かな


 夏の夜というのは、どうにも短すぎて、十分に眠ることもできない。

 こんな状況だというのに、夏に恋が熱くなるなどと、僕にはとても考えられないね。だってそうは思わないかい?

 寒い冬の方が、体を重ね互いに熱を共有し、温め合いたいと思うものではないか。

 暑いからこそ、眠る気にもなれず、夜でも遊び歩くために起こる、一夏の恋ということだろうか。

 それとも火照る体を、恋と勘違いしてのことだろうか。

 何にしても、僕には夏の魅力などといったものは、少しも理解できないわけである。

 暑い。暑い。暑いったら暑い。

 まだ春だろってツッコみたくなる頃から、暑さを訴えてきた僕だけれど、いやはや、ここまで本格的に夏へ入ってしまうと、なんともね。

 春のうちから暑くては、実際に夏であるべき、七月や八月にはどうなってしまうことか。そう嘆いたことを覚えているが、七月にはこうなっていた。

 もう暑いという言葉じゃ言い表せないほどに、暑い。

 せめて眠れるように、夜だけでも涼しくしてくれたなら。

 しかしそれでは、今よりももっと、夜が長く続くようにと、夜が恋しく思えてしまうだろうから、それはそれで困るのかもしれないけれど。

 手に入らない安眠が、僕を狂わせようとするのだ。

 春の眠り。あの心地好い日々へ、戻れたならば。

 一つ、願いを呟く。七夕にはもう間に合わない、切実なる願いを。

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