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365個の物語  作者: ひなた
文月 夏の日の夢
189/365

文月八日

  夏の日の 暑さを癒す 蛍かな


 夏は夜とは、よく言ったものである。

 日が暮れても蒸し暑さは変わらないのだけれど、昼よりは無論ましになるわけだし、なんといっても夜の暗さというものは、昼の直射日光の強さと対比して、とても素晴らしいものに思えるのだ。

 暑さも辛いのだが、あの眩しさも、僕にとっては耐えられたものじゃない。

 夜の闇はそんなものなど、少しも感じさせないで、ただ静かに全てを包み込む。

 そこを照らす光の小ささは、生命の漲る夏という季節にもある、儚い印象というものをどれも纏っているように思えた。

 夜空の星。

 光り輝くのだけれども、どこか強い光にも弱々しさを感じさせる。

 飛び交う蛍。

 光ったり、消えてしまったり、その繰り返し。手に入りそうで入らない、切ない夢のように、僕の前をゆらゆら揺れる。

 この美しさといえば、夏の暑さなどというものも、気にならなくなるほどであった。

 「夏」というもので取り繕っていないせいかもしれない。

 どれも限りあるのだから、儚さも少しは纏うかもしれないが、「夏」の仮面で取り繕ったからには、力強く輝いてしまう。

 それこそが夏らしさだと僕は思うし、暑い、と一言そうも思う。

 この蛍の光くらいが、結局は、ちょうどいいということなのだろう。

 外を見つつも、そっと僕は本のページを捲った――。

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