文月四日
星空の 下に結ぶ手 永遠を
夜の外出は、危険が伴いますから、心配性な貴方によって禁止されていました。
ですから窓から見える景色の他は、何も見たことがありませんでした。闇夜に浮かぶ星など、見たことがありませんでした。
月にまでなれば、窓からでも見えますのに。
どれほど星空がロマンティックなものか想い、見たい気持ちはありましたが、貴方に禁止されていることを、私としてもしたくはなかったのです。
どうしてもというほどではありませんから、我慢していました。
だからこそ今日は、とても嬉しかったのです。
「今夜は星が綺麗に見えるのだという。一緒に見に行くとしないか」
貴方がそう誘って下さいましたから。
「行きたいです。えへっ、それは楽しみですね、期待していますよ」
未来のことなのだから、天気なども、どうなるかわかりません。
なのですから、あまりに期待をしてしまうと、落胆することの多くなるかもしれません。
期待して裏切られる、その苦しさは十分に理解しているのですが、期待をするなという方が無理な話です。
夜が待ち遠しいですよ。
「なっ。そんな可愛い顔するな、外に出すのが、不安になるだろ? 私が守ってやるとはいえ、それでも守りきれなくなりそうなほどに、……可愛いんだよ」
嬉しさで貴方に抱き着いた私を、そう言って貴方は抱き締めて下さいました。
その夜、貴方に手を引かれて、私は山を登りました。
とはいえ、ほとんどは貴方のおかげであって、私は何もしていないようなものですが。
疲れたような素振りを見せれば、仕方がないというように、甘やかした笑顔を浮かべて、貴方は私を背負ったまま山を登っていくのですもの。
そうして漸く山頂に辿り着きましたら、タイミングとしましては抜群で、日の沈むところでした。
星が目的ではありましたが、美しい夕日も見られましたし。
「まあっ。ほんとに、ほんっとに素敵です。私、こんなにも美しい光景、見たことがありませんもの」
辺りが暗闇に包まれて行き、周囲が見えなくなってきます。
貴方の姿が見えなくなって、一人になってしまうようで、怖くて、そう思っていますと、貴方が私の手を握って下さいました。
途端に不安がなくなりましたから、安心して私は上を見上げます。
それはそれは美しく、感動の声を上げて、興奮して貴方に語り掛けました。
そうしましたら、急に貴方が私の体を押して、圧し掛かられるのを感じました。
優しく私を安心させて下さっていた手が、今は私の肩を抑えて、動きを封じているのですね。上に貴方が覆い被さっていますから、星も見えません。
驚きに戸惑っていますと、この行動とはそぐわない、柔らかい唇が降ってきました。
「綺麗な星空だが、私にとっては、どう頑張っても二番かな。少なくとも私が見てきたものの中では、最も美しいものは、間違えなくお前だからな」
なんて卑怯なことを仰るのでしょう。
そのように言われてしまいますと、どうしても、ときめいてしまうではありませんか。
今度は私の方から唇を重ね、隣に寝転び空を見上げました。
星空の下で指を絡めていると、幸せに満ち溢れていきます。吸い込まれてしまいそうなほどに、幻想的な光景でして、私たちは永遠に一緒にいられるのだと、信じさせて下さるようでした。
永遠なんて、叶うはずのない願いを、叶えて下さりそうなほどでした。
やはり貴方の教えて下さることは、期待を裏切らないどころか、いつも私の過剰な期待さえも上回ってきます。
これからも、私を知らない世界へ誘って下さいね。




