文月三日
願い事 何にしようと 悩む末
飾る短冊 かの優しみか
「短冊に願い事を書くのよ。そうしたらね、七月七日の七夕の日、晴れたらお星さまに届くんだわ。流れ星が願いを叶えてくれるのはわかるでしょう? お星さまは、みんなの願い事を見て、それを叶えてくれるの」
「「「えー、すごーい! おほしさますごーい!」」」
あたしの言葉に、子どもたちは瞳を輝かせて、我先にと短冊とペンを取る。
次々に願い事を書いて、用意された笹に飾っていく子どもたちを見ていると、ただ一人だけ、一つも書いていないことに気が付いた。
よく意味がわかっていないのだろうか。
「ここにお願いしたいことを書けばいいのよ。文字は書ける?」
「うん、書けるよ。だけどね、何をお願いしようかなって、困ってるの」
なるほど。願い事を悩むとは、この年代の子どもらしからず慎重な子なのだろう。
「たくさん願いを書いても大丈夫だから、迷っているのなら、すべて書いたらいいんじゃないかしら」
飾る場所も用意した短冊も、もうなくなってしまいそうだったので、あたしはそう言って頭を撫でてあげる。
その後、あの子が何を書いたのか気になって、笹をあたしは確認してみた。
”くまのおにんぎょうを、かってもらえますように”
”あたらしいげーむがほしい!”
”ぱぱとままとあそびにいきたいように”
平仮名で書かれた願い事、ゆらゆらと揺れて空を無邪気に想う。
いきたいように、というのは、行けますようにということなのかな?
少し間違えているところも、可愛らしいと思える。
そんな中で、やっとあの子の名前を見付けることができた。
”みんなのおねがいが、かないますように”




