水無月二十七日
雨音に 波の打つ音 ハーモニー
もう七月さえもすぐそこなのだからと、僕はふと、海へと来てみた。夏と判断することさえ、できるようになっているのではないか、そのように思えてしまったのだ。
もう十分に賑わっている海水浴場。僕と同じように、夏の近付く気配を、夏と判断した人がいたということだろうか。
とはいえ、僕には海に入る気など毛頭ないので、海の様子を眺めているだけだ。というよりも、海で遊んでいる人を、眺めていると言った方が近くなってしまうかもしれないが。
暫くボーっとしていたところ、雨がぽたぽたと降り始めたようだ。
突然に訪れたこの雨が、より激しいものであったならば、これを夏の雨とも受け取れたことだろう。
しかしそうではなくて、緩やかな雨が、降り始めてしまったのである。それも、遠くの空までが黒く覆われてしまっていて、その切れる場所など見えないのだから、局地的なものでも一時的なものでもないと見える。湿気を纏う、梅雨らしい雨だ。
雨が打つ。波が打つ。水の音が、水の持つ自然の力が、人工的に作られた僕たちの世界を打ち付ける。
その悲鳴にも近いような音が、ひどく美しく絡み合っているように、僕には思えてならないのである。
このハーモニーこそが、人々が自然から得るべき、本当の声なのではないかと、僕には思えてならないのである。




