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365個の物語  作者: ひなた
水無月 春と夏の狭間で
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水無月二十七日

  雨音に 波の打つ音 ハーモニー


 もう七月さえもすぐそこなのだからと、僕はふと、海へと来てみた。夏と判断することさえ、できるようになっているのではないか、そのように思えてしまったのだ。

 もう十分に賑わっている海水浴場。僕と同じように、夏の近付く気配を、夏と判断した人がいたということだろうか。

 とはいえ、僕には海に入る気など毛頭ないので、海の様子を眺めているだけだ。というよりも、海で遊んでいる人を、眺めていると言った方が近くなってしまうかもしれないが。

 暫くボーっとしていたところ、雨がぽたぽたと降り始めたようだ。

 突然に訪れたこの雨が、より激しいものであったならば、これを夏の雨とも受け取れたことだろう。

 しかしそうではなくて、緩やかな雨が、降り始めてしまったのである。それも、遠くの空までが黒く覆われてしまっていて、その切れる場所など見えないのだから、局地的なものでも一時的なものでもないと見える。湿気を纏う、梅雨らしい雨だ。

 雨が打つ。波が打つ。水の音が、水の持つ自然の力が、人工的に作られた僕たちの世界を打ち付ける。

 その悲鳴にも近いような音が、ひどく美しく絡み合っているように、僕には思えてならないのである。

 このハーモニーこそが、人々が自然から得るべき、本当の声なのではないかと、僕には思えてならないのである。

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