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365個の物語  作者: ひなた
水無月 憂鬱な雨の魅力
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水無月八日

  哀しみを 偲ぶ心に 雨は降る


 いつまでも忘れられないあの日の記憶。

 哀しくて、辛くて、けれども大切なあの日の記憶。

 あの日というよりも、あの日々、あの日以前といった言い方をした方が良いかもしれない。

 忘れたい。何度、そう思ったことか。

 忘れたくない。何度、そう願ったことか。

 そうして何度、この切なさを味わったことか。

 この哀しみを忘れられないままに、残してもおけず、心の中にだけ半端に影を落として。それで私は、中途半端な場所で、閉じ込められてしまっている。

 梅雨の時期に降り続く雨。変わらない雨音。

 その音が心の奥底でも響いていて、悲しみを増幅させるようだった。

 見上げた空は、今日も泣いている。

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