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365個の物語  作者: ひなた
水無月 それでも雨は降り続ける。
153/365

水無月二日

  窓の外 どんより雲は 雨遠く

    冷たい心を 沈めゆきけり


 この人は敵だ。直感的にそう思うこともある。

 初めましての人なんだけど、目の前の男性に今、あたしは本能でそう感じてしまったの。

 とっても男らしくって顔も整っていて、どこか聡明で優しそうでもあるの。外見から受ける印象として、欠けるところなんて、ちっともないと思うわ。

 でもだからといって、胡散臭さだってないのよ?

 もう完璧って感じ。

 あっ、別にあたしは、完璧な人を嫌うような、妬みに染まった汚い性格はしてないつもりよ。

 なんだけどなぜだか、この人のこと、好きになれないような気がするの。

「この家に何か用があるのか」

 怖くって、逃げ出しそうになってしまったとき、見た目どおりの優しい声で、その男性はあたしに声を掛けてきた。

 この人、あたしの王子様と、どういう関係なんだろう。

 一人暮らしだって言ってたはず。

 だったらば、いつあたしがこの家を訪ねようと、この人には関係ないはずよ。

「あぁ、いらしたのですね。すっかり花々は散ってしまって、紫陽花くらいしかありませんが、窓から眺めると中々に粋なものですよ。雨が降ると、より美しく見えるのですが、珍しく今はすっかり晴れですね」

 彼が微笑みながらやってきてくれて、家の中にまであたしを入れてくれる。

 それと一緒に、すごく自然な感じで、完璧イケメンも家の中に入って来るの。

「ここから見るのが、私としては一番のお気に入りです。お二人とも、ご覧になればわかると思いますよ」

 お二人とも……?

 綺麗な微笑みを浮かべてるから、このイケメンが、あたしの王子様にとって、大切な人だってことはわかる。おともだちなんだったら、あたしも、仲良くなりたいと思う。

 なのになんでなんだろ。

 敵としか思えないの。優しい笑顔を向けてくれてるのに、たぶん、あたしを傷付ける人だって、本能的に感じるの。

「本当だ。これは良い」「まぁ、ほんとに素敵ね」

 感嘆の声を漏らすのが、同時だったことさえ、なんだか腹立たしく思える。

 もしかしたら、これが嫉妬ってことなのかもしれない。

 あたし、嫉妬までしちゃうくらい、王子様のこと、好きになっちゃってるのかな?

 きっと恋しているんだってことも、わかってるのに。そんな中で戦うんだから、おともだちにまで、嫉妬してたって駄目に決まってるのに。

 意外とあたしは嫉妬深くて、独占欲が強くって、嫌な性格だったのね。

 自分でも初めて知ることばっかりで、……なんか……辛いよ…………。

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