皐月十六日
梅雨前の 爽やかなるは 春の風吹き
沖縄の方は別として、まだ梅雨に入るには早い、五月中旬の日ごろに思う。この爽やかな陽気は、本当に春というものを、示したものなのだろうかと。
僕らは、夏を知っている。
これから訪れるべき、夏というものを知っている。
けれども僕らは、今がまだ、そのときでないことも知っている。
春が去って梅雨入りし、それもまた明けてから、暑い夏というものは訪れるのだ。
今は夏ではないけれど、それでもいくらか暑い日くらいは訪れる。
春の風。三月ごろから感じている、爽やかな香りのする、気持ちの良い風だ。
これこそを春と呼ぶには、暑く湿気の高い春の日に、夏というようなものではないだろうか。
やはりイメージ上の差は仕方がなく、春と夏との差というのは、月の差というものしかないのだろうか。
そんなことをふと考え、首を傾げた僕の頬を、冷たくも柔らかい風が吹き抜けていった。
冬から春への移り変わりのような、薄着の僕には少し寒い風。
肌寒さを感じるけれども、その柔らかさに包まれる感覚には、僕は覚えがあった。
そうか。これが春というものなんだね。




