皐月十五日
手を伸べた 木々の指先 届かずに
ただ吹かせるる 何も言わずに
高い方の枝が、僕たちに合わせてくれているかのように、すぐ近くの低いところにまで降りてきてくれている。
そんなはずがないのに、なんだか意志を持って、僕たちの方へと手を伸べてくれているように、そう思えてならない。細い枝がふらふらと目の前に現れて、ひらひらと葉を揺らす。
差し伸べてくれている手を、僕はそっと触れてみようとする。
しかしそれは叶わずに、手を伸ばしたなら、枝は高くへと舞い戻ってしまう。
近くにあるその手を、実際に触れることは許されないということだろうか? それとも、そんなに甘くはないのだと、多角を目指して見ろと、そう告げてでもいるのだろうか?
もちろん、答えなど返って来るはずもない。
相手はただの木なのだから、言葉など知らず、風に吹かれて揺れているだけ。
そうは思いつつも、偶然というには強い意志を感じられるその姿に、僕は力をもらっているのであった。
無言の強さというのはこういうものなのだろう。
僕たちが目指すべきなのは、こういった姿勢なのだろう。それを示してくれているようで、……。




