卯月十六日
花から葉 新たな季節 廻りゆく
新しい季節が、また始まってしまうのですね。
冬から春になっていくのは、あんなにも寂しいことでしたのに、春から夏に変わるのは、こんなにも幸せなことなのでしょうか。
それはきっと、貴方が隣にいてくれるからなのでしょう。
寒い冬を乗り越えて、暖かな春がやってくることが、寂しいはずなどありません。
ありませんのに、私にとっては寂しくて仕方がない、とても辛いことだったのです。
季節が廻ることは、悲しいことではありません。
けれど貴方が戻らない季節を、いくつも一人で過ごしていると思ったら、悲しくて寂しくて……。
「どうして笑ってくれないの? せっかく帰ってきたのに、どうして、笑ってくれないんだよ」
貴方が優しくしてくれるからこそ、我慢していた寂しさが、今更になって溢れてくるのでした。
今は少しも寂しくありませんのに。
今は貴方といられる、とても幸せなはずですのに。
「嬉しくないの?」
「ううん、そうじゃありませんよ。あまりにも、嬉しすぎるんです。本当に嬉しくて、堪らないんです。だからなんだか、まだ信じられなくて、……ごめんなさい」
謝った私の肩を抱き寄せて、貴方は男らしい笑顔を浮かべてくれました。
新しい季節は、貴方と一緒にいられる、そう思うと幸せで壊れてしまいそうでした。




