084:ひとりあそび、ふたりあそび
ねえ、つまんないよ、ひとりで遊ぶのは。きみもそこから出てきて、いっしょに遊ぼうよ。
木の実をとんとんと茶色い地面につきながら、子供は呼びかけた。それは近くの林からとってきたもので、丸くて、子供の頭ほどの大きさがあって、透明で、地面にぶつかるとよく弾んだ。
空が明るくなり、暗くなり、また明るくなって、暗くなった。子供は木の実を地面につき、投げ、追いかけていって蹴とばし、拾ってまた地面についた。木の実は子供のするがままに弾んだり転がったりした。
ねえ、まだ出てきてくれないの。そのうちになんて言うけど、いつになったらふたりで遊べるのかな。
子供は飽きもせずに呼びかけながら、いつまでも木の実とたわむれつづけた。
やがて空が明るくなり、明るくなり、もっと明るくなり、さらに明るくなった。
ふたたび空が暗くなったとき、子供はすでに地面に横たわる影にすぎなかった。木の実はそのそばに転がっていた。それはもう透明ではなく白くにごり、表面には堅いしわが寄っていた。
空が明るくなったり暗くなったりするたびに、木の実のしわはしだいに深くなった。しわはいつしかひびになり、ついにはめりめりと裂けた。その中から這い出てきたのは、あたらしい子供。
子供は横たわる影に近づいて、ゆさぶった。首がごろりともげて転がった。子供がそれをほうり投げると、地面にぶつかってぽんぽんと弾んだ。追いかけて走りながら、子供は言った。
やっとふたりで遊べるね。
今回のイメージの元となったのは、『wipEout PULSE』(SCE Studio Liverpool、2007年)から、
「Steady Rush」(Booka Shade作曲)です。




