一話
パキッ、何かを踏む音がした。
真っ黒に焼け焦げた、かつて自分の村があった場所で、
俺ら二人は、ただ、呆然と突っ立っていた。
ふっと、隣でうずくまっていた弟が言う。
「これから、どうすればいいの?」
そう呟いた弟は、俺の肩を掴み揺さぶるように、
再度問いかける。
「これから、どうすればいいの!?」
答えられない俺をよそに、弟はどんどん大きくなっていく。
「お前のせいだ」
「お前が精霊なんかと仲が良いからこの村が狙われたんだ」
「お前のせいだ」「お前のせいだ」「お前のせいだ」
弟は俺の3倍ほどの大きさになって、俺に襲いかかってくる!
うぁぁぁぁあああああ!!
自分の叫び声で目が覚めた。
小さい頃の記憶と、恐怖が混ざった夢。
何度も何度も繰り返し見る、俺のトラウマ。
ふぅっ、と詰めていた息を吐き出す。
服を着替え、顔を洗う。
その頃にはもう、夢の名残は消えていて、
俺はいつもの俺に戻っていた。
*****
ガランガランッ
重たい音を響かせてギルドの扉が開いた。
金髪の若い綺麗な色男が、依頼書を片手に、
笑いながら目の前に腰かける。
まぁ、当たり前だ。ギルドのカウンターなんだから。
この世界は魔物がいる。
ピクシー、ウェアウルフ、魔獣等々
人間にとったら危なっかしくて、嫌なやつらだ。
そんな奴らの被害を少しでも押さえるために、
ギルドはある。
ここで収入を得ている奴らは、大概柄の悪い、
よく問題を起こすような奴らだが、こいつは違う。
もともと筋肉が付きにくい体質なのか、
使う最低限の筋肉しかついていない身体は
女からは相当ウケがいい
色素の薄い金髪は、癖ッ毛なのかくるくるしていて、
何が楽しいのか、常に弧をえがく翡翠色の目は
まるで宝石のように、輝く。
しかし、俺はこいつの本性を知っている。
こいつは、村を魔物に襲われたとかで、
かなり魔物を憎んでいる。
笑いながら八つ裂きにして、炙って遊んでいた
コイツを見つけた時、俺の心臓は止まるかと思った。
それくらいまがまがしい笑みだったんだ。
それ以来、俺はコイツが好んで履く東の国の履き物と、
民族衣装をみるたびに、コイツを思いだしちまう
うちのギルド最強の冒険者。
破壊神シャナイア