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第4話 真実【壱】

 

 第4話 真実【壱】


星の光は 何万年もの年月を越え この地へと届く

遥か昔放たれた光が 今 この場所を照らし始める

そこには ひとつの真実が 存在した


§§§


 私が人形師見習いとしてこの館へ来てから、早くも二ヶ月目が過ぎようとしていた。

 森のあちこちにある、もみじやイチョウの葉は赤や黄色に染まり始め、日が暮れるのもだいぶ早くなった。


 ・・・それなのに。

 私がここへ来てから、怜には食事の時にしか会わないし、修行らしい修行は一度もやっていない。

 毎日、紅燐の仕事(主に家事全般)を手伝ったり、図書館(何故かこの館にはあるのだ。かなり立派なのが。)で本を読んだりして過ごしている。


 怜曰く、『全く知識の無い奴に教えるのは思ったより難しいんだ。(面倒だから)基本的な知識は自分で身に付けさせたほうが後々のためにもなる』だそうだ。


 どうして私が初心者だとわかったのか・・・。

 怜は不思議なところばっかりだ。見た目はとても若く見えるのに、雰囲気はとても大人っぽい。それに、いつも人の心を見透かしたような言動をとる。

 だけど、常に人を拒絶したような振る舞いを見せ、顔を合わせることはほとんどない。(まぁ、私が余所者だということもあるだろうけど・・・。)


 私はそんなことを考えながら、もう何回も読んだ『人形師入門』の本を閉じる。

 この図書館の棚はすべて人形師に関わる本(ざっと三百冊はあろうか。)で埋まっている。今日は午前中に紅燐の手伝いを済ませ、午後からここで本を読んでいた。

 だが、ここの本は大体読み尽くしたため、ぼーっと考えに耽っていたのだ。

 開いた窓からは優しい秋の日差しと微風が入り込んでくる。



 何気なく棚に目を向けると、一冊の本が目に飛び込んできた。

 それは本棚の端の端、奥深くに一冊、埃をかぶり眠っていた。

 特に変わった所はないが、何故かとても気になり誘われるように手に取る。

 埃をはらってもかなり古い物だとわかる。


 めくってみると、たくさんの写真が整理され並んでいた。

 そのひとつひとつの下に綺麗な整った字で札がついていることから持ち主の几帳面さが伝わってくる。

 この頃はまだ多くの人形師がこの館にいたのか、大勢で写っている写真がいくつもある。


 おそらく、一番多く写っている黒髪の青年がこのアルバムの持ち主なのだろう。

 腰に届きそうなほど長い黒髪を後ろでひとつにしばっている。

 歳は20〜22くらいで、眼鏡をかけている。

 その眼鏡の奥の瞳は黄金色で、とても温厚そうな笑顔をしている。

 なんか優しそうな雰囲気の人だなぁ。

 そんなことを思いながら、次のページをめくった。



『怜君、紅蓮君、紅燐さんと』



 その写真は他の写真と同じように貼られていた。

 怜と紅蓮と紅燐と持ち主だろう青年の写った写真。

 私はその札の文字を読むと次のページに進もうとした。

 しかし、あることに違和感を覚え、手を止める。


 もう一度先程の写真をまじまじと見る。

 違和感が気のせいでないことを確認すると、一瞬にして私の頭の中で情報が整理され、一つの仮説が浮かび上がった。

 しかし、私はこの仮説を否定したくてたまらなかった。

 もう一度違う仮説を立てようとするが、どうしても腑に落ちない点が多すぎる。結局、初めに立てた仮説しか浮かばなかった。

 でも、こんなことがあってはならないのだ。絶対に。


 私はアルバムを片手に図書館を飛び出した。

 この館の主の部屋へと急ぐ。真実を知るために。


 後には開けられたままの窓と、そこから入り込む風によってぱらぱらとページがめくれている本が一冊。そしていつの間に入ってきたのか、紅葉もみじの葉が一枚。

 それらが穏やかな秋の日差しの下にあるだけだった。平凡な秋の昼下がり


 ─be to continue─




DM、第4話になります。とうとう物語が急展開!する予定です。第5話では、怜の秘密が明らかになります。(予定)

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