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明日もきっと

作者: ニィギンヤ
掲載日:2026/04/06

 目が覚めた時点で、もう遅かった。


「うわ、やば」


 時計を見て、すぐに諦める。

急ぐしかない。


 顔だけ洗って、階段を降りる。


「おはよー!」


「遅い」


 妹が即答する。


 キッチンでは母がフライパンを振っていた。


「もう少し早く起きなさいよ」


「無理、眠い」


「威張るな」


 テーブルにつくと、朝ごはんが並んでいる。


「いただきます」


「ちゃんと噛みなさいよ」

「時間ないって」


 適当に詰め込んで、水で流し込む。


「ほら弁当」


「あ、サンキュー」


 受け取って、そのまま玄関へ。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃい」


 ドアを閉めると、少しだけ静かになる。



「おはよー!」


「ギリだな」

「セーフだろ」


 席に座って、いつもの連中とだらだら話す。


「昨日のやつ見た?」

「見た見た、最後意味分からんくて笑った」

「あれ編集雑すぎ」


 どうでもいい話で笑う。


 チャイムが鳴って、授業が始まる。



 昼休み。


 屋上に出ると、風が気持ちいい。


「パンそれだけ?」

「金ない」

「昨日も言ってたなそれ」


 適当に座って、食べながら話す。


「次のテストやばくね」

「やばい」

「毎回言ってるだろそれ」


 誰かが笑って、誰かがツッコんで、また笑う。



 放課後。


「今日どうする?」


「帰る」

「早っ」

「だるい」


 昇降口で靴を履き替える。


「またな」


「おう」


 手を軽く上げて、それぞれ帰る。



「ただいまー」


 返事はなかった。


 まあいいかと思って、靴を脱ぐ。


 テーブルの上に、封筒が置いてあった。


 自分の名前。


 裏返す。


 何も書いてない。


 開ける。



『ごめんね』



 それだけだった。



 意味が分からなくて、スマホを見る。


 通知が並んでいる。


 知らない番号。

クラスのグループ。

ニュースアプリ。



 最初に開いたのは、クラスのやつだった。



『見た?』


『やばいってこれ』


『〇〇も?』



 スクロールする。


 途中で止まる。



 リンク。



 なんとなく押す。



 画面が切り替わる。



 写真が出る。



 見覚えのある家。



 その下に、文字。



 ——一家心中。



 指が止まる。



 次の行。



 ——未成年含む複数人が死亡。



 名前が並んでいる。



 ゆっくり読んでいく。



 途中で、分かる。



 全部、知ってる名前だった。



 指が、震える。



 画面を閉じる。


 また開く。


 変わらない。



 テレビをつける。


 同じことを言っている。


 同じ映像が流れている。



 さっきまでいた場所が映る。



 屋上。



 カメラがゆっくり動く。



 フェンスの外側。



 靴が、揃えて置いてあった。



「……は?」



 声が出たのか分からない。



 ポケットの中で、紙がぐしゃっと音を立てる。



『ごめんね』



 それだけが、残っていた。


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