表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/27

22

「アンタ今日、綿摘(わたつみ)くんと話してたよね?」

 学校が終わりスーパーをはしごして厳選した特売品を手に帰宅した俺より、少し遅れて帰ってきた鳴海(なるみ)がスニーカーも脱ぎきらないうちに問い質してきた。


「ん? ああ、そうだな。一方的に向こうからだけどな」

 指摘されて綿摘が話しかけてきたことを思い出す。


 興味がないせいで完全に記憶から抜け落ちていた。俺にはイケメンに話しかけられてときめく乙女心は備わっていないらしい。


「友達、ってことはないだろうから……、どんな関係なのよ?」

「なんで真っ先に友達って選択肢を除外するんだ。まあ友達じゃねえけど」

「だったらどういう繋がりなわけ?」

「どういうもなにもクラスメイト以上の繋がりなんてねえよ……」

 俺の返答がお気に召さないのか、鳴海は憮然とした表情で見据えてくる。


 なんなんだこいつら?


 陽キャって連中は自分の心情を隠そうって気はないのか?


 人狼とかやらせたらバカ丸出しで名乗り出そうな拗らせ方だな。


「あ、そうそう、波瑠(はる)ちんとも話してたよね? 陰キャのくせに」

「誰と話したって陰キャかどうかは関係ねえだろ。お前の価値観どうなってんだ?」

 鳴海と波瑠は友達なのだと以前、波瑠から聞いたことがあった。


 今朝みたいに綿摘が波瑠に頻繁に声をかけるため自然と陽キャグループから仲間として認識されているらしい。

 そんな中でも鳴海からは『波瑠ちん』とあだ名で呼ばれるくらいには仲が良いそうだ。


「あ、それから(まどか)とも話してたよね? まあ円はオタクに優しいギャルとか似合いそうだから、どんな陰キャにでもほいほい話しかけるか」

「誰にだろうと優しいんだから人を陰キャ扱いして蔑んでるよりよっぽど健全じゃねえか」

「あんな尻軽な態度が陰キャを勘違いさせるのよ。わたしは一線を引いてるだけだし」

 考えられないと言わんばかりに首を振りながら鼻の頭に皺を寄せる。


「友達を尻軽呼ばわりかよ、女の友情って儚いな……」

「ぼっちが友情を語らないでくれる? とりあえず円のことはいいわ。それで波瑠ちんとはどんな利害が一致してる関係なのよ?」

「俺と波瑠が普通に知り合いって発想は出てこねえのかよ?」

「えっ、下の名前呼びとかなに? キモ……」

「俺が誰をどう呼ぼうとキモくはねえだろ。ほっとけよ」

「もしかして綿摘くんのことも名前で呼んだりしてるの?」

「呼んでねえよ、友達じゃねえって言ったばっかだろ。……それに綿摘が話しかけたのは波瑠に対してだ。俺はそのついでだよ」

「わかってるわよ、そんなこと」

 ほんの牽制球のつもりで投じたボールは気持ちいいほどあっさりと打ち返された。その直球ライナーの場外ホームランくらいの勢いには、さすがに意表を突かれてしまった。


 疑う余地さえなく綿摘は波瑠に気がある。


 その波瑠が俺の元によくやってくるので、接点を持ちたい綿摘は俺に対する牽制も兼ねて声をかけてくるのだ。


 だから俺はあのイケメンをいまいち素直に受け入れられないのだ。友情でもなければ仲間意識すらないのだから。


「綿摘くん、波瑠ちんのどこが良いんだろう……」

「お前マジですげえな、友達に対してその上から目線ってどうなんだよ?」

「別に上から目線なんかじゃないわよ。そう聞こえたアンタがひねくれてるだけでしょ。友達だからこそちゃんと知ってるから言ってるのよ。波瑠ちんはすごくかわいいし性格も良いし勉強も出来る。でも、それならわたしだって変わんないじゃない?」

「お前、性格悪いし馬鹿じゃねえか。かわいいしか当てはまってねえぞ?」

「うっさい! 余計な口挟まないで!」

 かわいいって部分だけは認めてやったのに理不尽に怒鳴られる。


 それにしても鳴海は、綿摘に対する気持ちを隠そうともせず喋る。

 ただ仮に、煮え切らない態度で遠回しな口ぶりだったとしても鳴海の気持ちは察しがついていた。


 告白と勘違いされて一方的にフラれて以降、恨みがましく目の端で追っていて気が付いた。綿摘に向ける視線や態度、細かい仕草などが口より顕著に気持ちを物語っていたからだ。


 だが俺には関係ないことだ。口を挟むなと言うなら晩ご飯の仕込みを始めることにしよう。






気に入っていただけたら★やブックマークで応援よろしくお願いします。励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ