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誰かと関わること

周りの空気はほんのり暖かく、この場にとどまりたくなってしまう。

その一方で、このどこかおかしいむずがゆさが嫌で今すぐにでもこの場から逃げ出したくもある。

私が正反対の気持ちと奮闘しているなか、目の前にいる男は難しそうな顔をして、こちらを見ていた。


そう、私は結局、優也の家に来ている。

断ろうとしても有無を言わさぬ顔で見てきたので、しかたなくついてきた。

けれども、先ほど言ったよう逃げ出したい気持ちが既にここにあった。

なんせ、施設育ちの嫌われ者が誰かの家に行く気かなってあったわけがなく。

誰かの家にいるという違和感が膨らんで暴れているのだ。


一方そんな私の気も知らずに優也は、悶々と考え込んでいる。

ちなみに、その考え事は私について。

今までの経緯をいろいろ話したところで、いろいろと考えさせてしまったらしい。


「別に、優也がそこまで考え込む必要はないと思うんだけど」


本心を口に出してみるものの、優也はいいやとでも言いたげに首を横に振り、言葉を紡ぐ。


「僕が君の事情に勝手に顔を突っ込んでいるんだから、このくらいはしなくちゃいけないだろう」


そういえばこの人、急に声をかけてきた不審者なんだったと思い出す。

っていうか、そんな人に家にいるのか、私。

…施設よりかは、はるかに居心地がいいけれども。


「だからこそ、そこまで考えなくちゃいけないなんてことは無いでしょ」

「君は、わかっていないな」


急に馬鹿にされた。

優也はそのまま、目を伏せたまま言う。


「知ってしまったからには、僕も僕のできることをする。最初からそのつもりだったしね」


…なんなんだこの人は。

こういうのが優しい人の見本なのかもしれないけど、私には全く理解ができない。

なんで私にそこまで手を差し伸べようとするのか。

自分じゃわからない問いがまた一つ増えて、最近こんなのばっかだと心の中で呟く。

けれども、結局私の中の答えは変わらなくて少々呆れる。


私は、誰の助けも必要としていなくて。

信じても利益なんてないと心の底から信じてて。

ただ、憎悪だけを燃やし続けて生きてきた。

だから――。


目の前に茶色のマグカップが現れる。

「うわっ」とつい声をあげると、優也が『どうした?』とでも言わんばかりの視線を向けてくる。

そのマグカップは私に差し出されたものだったらしい。

変な声をあげたことに恥ずかしさを覚えながら、このマグカップは何かと思って優也を見る。


「あったかいミルク」


たった一言、そう返してきたけど。いや、聞きたいのはそこじゃなくて。


「なんで私に?」

「こういうものを飲むと落ち着くだろう?」


その常識が通じるのは一部の人間だけだと思う、と言いかけたが、言葉を飲み込む。

なぜなら、絶対受け取れという視線がチラついたから、である。

渋々受け取って口をつけると、じんわりと甘さと温かさがしみ込んでくる。

…確かに少しだけ、気持ちがわかる気がすると思いながら、もう一度口をつける。


その様子を静かに見ていた優也はいった。


「まずは、君に誰かと関わることを知ってほしいと思う」


それは私には理解できなくても、優也の本心なんだと。

そう、その淋しげに揺れる瞳が物語っていた。

次回初の優也視点になると思います。

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