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目覚めと、まだそこに在ったもの

瞼をゆっくりと開く。

そこは見慣れた公園で、変わり映えのない風景だと素直に思う。

そのまま、また体を起こして、今までの出来事を思い出すべく頭を動かす。

夢を見た、結奈ちゃんのいる、夢。

じゃあ、その前にやった、博之は、博之はどうなった。

ここに、博之の姿は見えない。どこにいったのだろう。

そもそも私は、なんであんなに冷静さが欠けていたんだろう。

ぐるぐると思考は渦巻くけれど、すべての問いに私は答えることができない。


自分じゃわからないなと思って、とりあいず諦めることとして立ち上がる。

そこで、ふと頭をよぎったのは夢の出来事だ。

結奈ちゃんが、繰り返し私に言った言葉。


『幸せになっていいんだよ』


静かに目を伏せて、やっぱりそれは無理だと心の中で答え結奈ちゃんに告げる。

私は、博之を、私を馬鹿にしてきたやつらを許せるなんて気は微塵もない。

それに、私はもうすでに戻れない道まで来てしまった。

博之があの時放った言葉。


『施設の子供を殺したっていう噂!』


()()()()()()()()()

だって、私は――。

いや、思い出したくはないし、これ以上考えるのはやめる。

けれど、やっぱり、思いは変わりそうになくて。

私は、まだこの心に在るものは、憎悪というものは消えることがないんだろうなと感じた。

納得してしまう自分を乾いた声で嘲笑(わら)う。

そんな時だった。


「大丈夫?」


突然、至近距離で声が響く。

驚いて前を見れば、さらりと揺れる黒髪と、濁りのない瞳があった。

そして、その声はとても優しげに聞こえた。

そっと、その人物の名前を呟く。


「優也…」

「うん、そうだけど…こんなところにいたら濡れるよ?」


そういって傘を突き出してきた優也を見て、雨が降っていると初めて理解する。

なんで優也がここに…と言いかけたところで、優也を呼んで路地裏に向かう途中だったと思い出す。

どうやら、今の私は少し疲れているらしい。


「…ごめん…呼んだのに…」

「ああ、来ないからどうしたのかとは思っていたけど…気にしなくていいよ」


名前の通り優也は優しいらしい。そういって、本当に気にしていなさそうに笑う。

…これなかった理由話したほうがよいだろうか…などと悶々と考える中、優也が口を開く。


「…それより、家ってどこなの?このままいると風邪ひくけど…」


思わず顔を顰める。

それには優也は不思議そうに首をかしげていた。

いや、周りから見たら家の話で顔を顰めるのは不思議なんだろうけど。

答えようとしない私と、ただただ不思議そうにしてる優也。

どうしようか、説明したくはないのだけれど。

そんな風に考えている私を察してくれたのか、優也は少し考えてまた口を開いた。


「僕の家来る?」

「…え?」


その言葉は、とんでもないものだったけど。

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