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夢に墜ちる

「はーるな!」


明るい声。いつだって、太陽みたいに輝く人の、聞いていて心地よい声。


「…え?」

「もー!なにぼーっとしてんの!」


頬を膨らませてこっちを見てくる。

人形みたいな綺麗な金髪が揺れて、透き通った水色の瞳がよりその可愛らしさを引き立てている。

…いや、違う。そうじゃなくて。


この人は。

忘れるはずもない記憶が、目の前にいる人が誰なのかをはっきりさせる。

唇が震えて、いうことを聞かない。伝えたいのに。


彼女は、眉尻を下げて、寂しそうに笑う。


「私と一緒にいるのは楽しくない?」

「違う!」


思ったより大きな声が出たことへの驚きと、ちゃんと声が出せたことへの安堵で感情がごっちゃになる。


彼女は、にぱっといつも通りの笑顔に変わって一際明るい声を発した。


「じゃあ、そんな顔しないでよ。…これは夢で、私たちには時間がないんだからさ」


それを聞いて、彼女がここにいる理由を理解した。

そして、同時に悲しくなってしまう。今さらどうにかなる話じゃないのは変わらないのに。


「…って、もー、そんな顔しないでって言ったのに!ほら、せっかく可愛い顔が台無しだよ!」

「っ…私はそんな可愛くないもん…」

「ええー?もう、春菜は自分の魅力になんで気づかないかなー。まあ、それよりほらいくよ!」


急に彼女に手を引かれる。


「えっ、あっ、ちょ!」

「またないよー!」


空は快晴で、私たちは何処かへと足を進めていて。

夢だといわれたのに、都合のいい妄想だとわかっているのに。

あの時に戻った気がして楽しくなってしまう。


「…今日はどこに行くの?」

「ふふっ、ついてからのお楽しみ!」


本当にあの時みたいな会話をして。彼女はあの時みたいに笑って、歩いていて。

目頭が熱くなる。けれど、泣きそうになったらダメだと言い聞かせて、その熱に気づかないふりをする。


しばらく歩いて、歩いて、歩いて。

草木はなくて、鮮やかな青だけが広がる、海についた。

そこは、今まで見た景色のなかで一番綺麗で。輝く光は少し眩しくて。

言い切れない感情でいっぱいになっていると、彼女はまた、光に負けないくらい眩しい笑顔で言った。


「綺麗でしょ?」


一瞬、今見ている景色よりも、彼女のほうが綺麗だと思ったけれど、それは昔に言ったと思って口にするのをやめた。

かわりに、彼女に同意を示す頷きを贈る。

彼女は海を見て、少しだけ目を伏せて、それでも笑顔を絶やさずに私に話しかける。


「…ねえ、春菜」

「なに?」

「春菜は、幸せになっていいんだよ」


何を言っているのか、何を言いたいのかわからなくて、なんと返せばいいのかわからなくて。

そのまま彼女の続きの言葉を聞くことにする。


「春菜は、ただ普通に、幸せになればいいの。大人になるまで生きて、笑顔でいればいいの」


無理だよ、と言いかけた私に、彼女はまだ言葉を紡ぐ。


「なれるよ、春菜は。私は神様に長く生きる権利をもらえなかったけど、春菜は貰ったんだから」


それじゃあなんで神様は、私なんかに与えて、目の前にいる彼女には与えなかったんだろうね。

そう言おうとして、これもまた昔に言っていたと思ってやめる。


「だから、ねえ、春菜」


視界が霞む。夢が終わろうとしているのだろうか。

まだ彼女の声を聞いていたい。まだ一緒にいたい。

そんな願いも虚しく、どんどんと意識現実に引っ張られていく。

ああ、嫌だ、嫌だ…。


~~~~~~~


「復讐なんて、しなくていいよ」


人形みたいな女の子の、その声は誰かに届いたかどうかはわからない。

けれど、彼女はまだ、誰にも届かない言葉を紡いでいた。


「あの、安齋先生、だっけな。あの人も春菜が幸せになる道を探してるんだよ」


誰もいない空間を静かに見つめている彼女は、坂井春菜の夢の中だけで生きる存在。


(たちばな)結菜であった。

実は、キャラの見た目について全く書いてなかったなと思いまして、過去の話に少し修正を加えています。

今回の結菜ちゃんはめちゃくちゃ書いてあるんですけどね…。

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