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“先生”

安齋先生。初めて聞いた名前だ。いや、私はあまり記憶力がないから、忘れているだけかもしれないけれど。それでも私が坂井春菜であることには変わりがないから、「多分、あっていると思います」と答える。


「そう…なら、私の名前も分からないわよね」


そう言って瞼を伏せたと思ったのも束の間、そのまま言葉を紡ぎだした。


「私は大野(おおの)(ゆき)というの、よろしくね」

「え、あ、大野、せん、せい?」

「雪先生でいいわよ」

「ゆ、雪先生 、よろしくお願いします」


突然の自己紹介だったのと、私には経こういう験がなかったということから困惑があり、ぐだぐだとあいさつをする。そこで、改めて考えると不思議に感じることが出てきた。


「雪先生…今、よろしくって言いました?」


疑問をそのまま口に出す。けれども彼女はその私の問いかけに不思議そうに「ええ、そうよ」と答える。

私は目を少し見開く。まさか。人から私のことを聞いていたってことは、私の過去の話も聞いたはずだ。もしかして、博之達みたいにサンドバックとしてよろしくってこと?頭の中で疑念が渦巻く。


「えっと、大丈夫?保健室についたけど、」


考えすぎてぼーっとしてたんだろう。いつの間にか保健室についていたらしい。


「あ、ごめんなさい」

「謝る必要はないのよ?」


雪先生がそういいながら保健室の扉を開ける。目に入ったのは、真っ白い部屋だった。ベットや棚、家具もちらちらと見える。


「そこの椅子に座って、今から処置するから」


言われた通りに椅子に座ると、雪先生は手早く処置をしてくれた。そこで、雪先生は保健室の先生だったのかと理解する。だから授業中にも中庭なんかにいたんだ。


「ふう、はい、これでいいわよ」

「ありがとう、ございます」

「大したことはしてないわよ それより、今日はこのまま早退でいいわね 気をつけて帰りなさい」

「はい…って、え?」


早退?私はまたも先生の驚きの言葉で固まってしまった。


「だって、学校嫌なんでしょう?」

「そうですけど、いいんですか?っていうか何で知って…」


雪先生は、「いいのよ」と言う。知っているのは先生の勘というやつかもしれない。今はそれより、本当にいいのかという気持ちのほうが大きいからあまりきにしないこととする。


「本当に、いいのよ 貴方はよく頑張っているもの」


雪先生の言っていることはよくわからなかったけれど、そのまま校門まで送り届けてくれるというのだから、それに甘えさせてもらうことにした。

そのまま私は、先生に見届けられて学校(地獄…?)を出た。

なんだか、少し不思議な感じがした。もしかして、先生は他の奴らとは違うのかもしれない。信用、しても…。そこまで思ったところで、私はそんな馬鹿な考えを捨てた。そんなわけないだろう。どうせ裏切られる。たとえ、裏切られなかったとしても…。


()()()()()()()、なるに決まってる」


私は誰もいないその場所に、そう投げかけて、宛もない道を進む。

そこで、はっとして気がついた。優也、優也を呼ぼう。雪先生が来てすっかり忘れていたけれど、私は博之を消すと決めたのだ。その話を、優也にしなければ。

私は、スマホを取り出した。本来なら施設の子供になんか()()()()()もの。けれども私は確かにそれを()()()持っていた。遅い時間のほうが、より人に聞かれる心配がないと思いながら、文を打って優也にメッセージを送る。


『この後、19時に路地裏集合で』

なんだか今回めっちゃ欲張ってますね。結果、いつもより少し文字数が多いです。

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