この世で一番嫌いな人
最悪だ、最悪だ最悪だ!
左目の上のあたりがじんじんと痛み続け、生臭い液体が滴り続けるから左手で抑えていたが、その掌は既に真っ赤に染まっていた。
クスクスと聞こえる笑い声がやけにはっきり聞こえる。目の前にいた男子が笑った。
「どうした?バケモノ!」
なぜこうなったか、思い返す。
朝になり、嫌々学校へと歩みを進めていた。
学校が近くなったころ、行きたくない気持ちが膨れ上がり、もうさぼってしまおうかと思い、私は振り返った。
その時、その時だった。本当に運が悪かった。
私がこの世で一番嫌いな奴が…博之が立っていた。もちろん、取り巻きも連れて。
博之。偉そうな態度からわかると思うけど、傲慢な性格をした私と同じ年のガキ。
無論、博之と共通点を持っていることは認めたくない。
「バケモノじゃん!お前、まさかさぼろうとしてたのか?」
博之はそう私に声を投げかけた。博之の無駄に整った茶髪は、風になびいている。
見つかった、面倒だな、どう切り抜けるか…と考えこんでいると、いつの間にか博之の取り巻きが私の腕をつかんでいた。
「離して!」
直ぐに腕を振り払おうと思ったが、思いのほか力が強く振り払うことはできなかった。
「さぼる気だったんだろ、俺らが学校に連れてってやるよ!」
「うわ、博之優し~」
サーっと顔が青ざめていくのが分かった。私はそのまま強制的に学校へと連れていかれた。
そして、中庭で博之とその取り巻き達が「サンドバッグ」といってきて、殴ってきた。
今までに、何度かこんなことはあった。けれど今日はそれだけじゃ済まなかった。
「博之~!これ使わね?」
そう取り巻きの男子が言って取り出したのは、カッターナイフだった。抵抗はした。抵抗はしたけれど、結局傷を受けてしまった。
まだ液体が溢れて滴る感覚がして、思い返すのやめる。
博之とその取り巻きはさらにカッターを使って傷つけようとしていた。しかし、授業五分前のチャイムがなり、「やべっ」などといいながら、博之達は去っていった。
力が抜けて、ふっと倒れそうになる。踏みとどまったけれど、立ち続けるのは厳しそうなのでその場の座り込む。動けないなと思ったけれど、さぼるつもりだったからいいかと思う。
やっぱりこんな場所腐り切っている。博之だけじゃない。ここには同じような奴らがうじゃうじゃいる。
でもやっぱり今一番憎いのは、博之だった。そうだ、博之。
博之を一番最初に消してしまおう。
なんで私はこんな簡単なことに気づかなかったのだろう。博之こそ、本当に消したかった人。ずっとずーっと憎かった。そう気づいたら、そう思ったら、頭はそのことだけで埋め尽くされた。
なんだか不思議な感覚で、なんだか心地よかった気がした。
けれど、それは体感し続けることはできなかった。
「ちょっと貴方、どうしたの!?」
そんな女性の声が、耳に届いたからだ。




