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この世で一番憎い人

「そうだけど…どうしたの?大丈夫?」


 やっぱり心配そうに、優也はこちらを見ている。

 「っていうか、大御門っていうのは知らなかったんだ…」という小さなつぶやきと共に。


 けれど、私はそんなこと知ったこっちゃない。

 だって、そうだろう。


 博之をこの世で一番嫌いな人、といったなら、大御門はこの世で一番憎い人だ。


 下の名前をなんていうかとかなんて知らないし、実際に私に何かをしたというわけではない。

 ただ、“あの時”、大御門は……。


 そこまで考えていたところで、一気に現実に戻ってくる。

 今考えることじゃない、と思ったからだ。


「……別に大丈夫。有名な名前だったから、びっくりしただけ」


 大御門は、本当に最近よく聞く有名な一族だ。

 今の医療技術があるのは、大御門があったからだとまで言われるほどに、医療に貢献したから。

 ……どれだけの()()の上に立っているのか、世間は知らないみたいでムカつく。


 そうして、またこんなことを考えてしまったと気づき、慌てて考えを振り払う。


「確かにびっくりする話かもね。もし警察が証拠を掴んだらとんでもなく荒れるんじゃないかな」


 関わっているのが医療だから当然か。

 医療というのは、時に人の命がかかるようなものなのだから。


「この話本当なの?」

「本人がそう名乗っているからね。“自称”というのが正しいかな」


 自称、か……。

 それでも、お金持ちだという話を考えると本当でもおかしくないのかも、と思ってしまう。


「結構ショックだったりする?」

「まあ……?」


 ぶっちゃけ自分は一般の医療を頼ったことがないから、いうほどショックではないだろう。

 こっちは施設育ちで、病気やらなんやらとは無縁だったから。

 病院なんか、一歩も足を踏み入れたことがないといえる。

 ただ、世界で一番憎い大御門の存在を感じたということで言えば、私にとって大きなことではあった。


 優也は「なんで疑問形で返した…?」みたいなことを呟きながら何かを考えている。

 それにしても、優也は意外と冷静というかなんというか、平然としている。

 元から知っていたのだから、当然なのかもしれないけど、それでも少しだけ違和感を感じる。


 まあ、そういう人もいるか、という結論で違和感は振りほどく。


 とりあいず、今日はもう何も考える気分にならない。

 正確に言えば、何も考えたくない。

 もしいろいろと考え込んでしまえば、私にとって嫌な考えに辿り着いてしまう気がする。

 下手したら、取り返しのつかない大ごとをやってしまいそうな……。


 そこまでまた考えて、いやいやと振りほどく。

 結局、何も考えないように無心で道を歩いた。


 そうして、あの公園に戻ってこれた時には、もう太陽が覗いていた。

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