そうしてまた
どれくらい走っただろう。
周りに人はいないし、追いつかれることなんてないだろう。
でも、こんな手の状態で、無事に知っている場所まで戻れるだろうか。
「私っていつまでたっても変わらないなぁ……」
あれほど、人を信じないと言ったのに。
そう、どうしても、何度も、考えてしまう。
今こうなったことを恨んでいるから、そう思ってしまうのだろうけど。
それよりも、私にとって、これは大切な誓いだったから、そう思ってしまうのだ。
あの時のことは、ずっと忘れない、私にとっての呪いのようなもの。
だからこそ、その時誓ったことを、自分に言い聞かせ続けてきたことを、私は破っていた。
あの時のことをもう一度繰り返したくないからとそう言い聞かせてきたのに対し。
結局破って、今度は他人ではなく自分を崖っぷちに立たせていた。
「こんなんじゃ、ダメだな」
今回のことは、思ったより私にとってダメージのあることだったのだろう。
何をやってもダメな気しかしない。
元からそうなのだろうけど、余計に暗くなっている気がする。
これが私に、定められた運命なのかもしれない。
その時、ぽつりぽつりとアスファルトを濡らす何かが空から零れ落ちた。
最近は雨が多いらしい、今日も雨になってしまったようだ。
神とかいうヤツは、これから私が行く道はずっと雨続き、とでも言いたがっているのだろうか。
……そんなことはないか。
濡れている道をゆっくり歩きだす。
傷が染みてくる前に、どうにかしなくちゃ、と思ったとき。
丁度、その時。
「良かった、まだここにいた」
いつもの声と、いつもの感じ。
つい数時間前も話したこの人は、私がこういう困ったときに出てくる約束か何かなのだろうか。
「なんでここにいるの?優也」
そう、優也はまた私の目の前に現れたのだ。
「それは……って、何その怪我」
この後の展開はもうわかる。
私はすぐさま何でもない風に装って怪我を隠す。
「別になんでも、さっきちょっと切っただけだから。それより質問に答えてくれない?」
「……」
私が隠したことが不服なのか、黙ったまま拗ねたようにする。
そんなこと、無視するだけなのだけれど。
私がそのまま無視を続けていると、優也はしびれを切らして話し出す。
「僕の知り合いが、近くで何か揉め事やってるって言ってて……」
それで、特徴を聞いたら私っぽくて急いで探しに来たとでも言いたいの?
そんな気しかしないけど。
っていうか、そういう話なら……。
「だから何かしら怪我してるのはわかってた。でも、その怪我、ただの怪我じゃないよね?」
じっと睨むのかのようにこちらを見てくる。
ああ、やっぱりそうなるかと諦めののため息を半分零す。
また、優也と話す時間がやってきた。




