分からない
こうなったのは何故だろう、と考えるが、分からない。
記憶がぽっかり抜けてしまったみたいに、全く思い出せない。
最近こういうことが多かったけれど、今回は本当に分からない。
私が、全く知らない道を彷徨っている理由が。
「本当に、ここどこ……?」
口に出してみてもなにかが変わる訳もなく、暗い道で声が反響するだけ。
空はもうすっかり真っ暗で、人がいる感じは全くない。
本当にどうしてこうなってしまったのだろうか。
ただ、学校からいつもの公園に帰ろうとしただけ。
そしたら、ボーッとしてたせいか、知らない道に来ていたのだ。
そう離れてはいないはずだけど、本当にここが何処か分からない。
不可解極まりないような出来事にはもう慣れてきた、と思ったがこうにもなると話が違う。
帰れないのは困る、下手したら警察に見つかりそのまま施設行きだ。
ただでさえ施設に帰っていないというのに、施設に直接引渡されるのは嫌で仕方がない。
本当に、警察のお世話になるのだけは避けたいと言ったところか。
「どうすれば…」
途端、コツコツという足音が聞こえる。
驚いて後ろを振り向けば、1人の男性がたっていた。
これは滅多にない奇跡、この奇跡を逃すのだけはまずいと直感的に感じる。
普段はあんまり話したくないところだが、そんなことを言っている暇もないのだ。
自分の中のちっぽけな勇気とやらで1歩踏み出してみる。
少しづつ近づいてくる私に気づいたらしい男性は、不思議そうにこちらを見ていた。
「どうしました?」
すこしゆったりとしているけれど、聞き取りやすい言葉がはっきりと聞こえる。
明らかに何かがあると察してくれたようだ。
「実は……少し迷ってしまって、ここが何処か分かりますか?」
急に近づいて話しかけられているのだから、普通は驚くだろうけど、その人は言う。
「そうですか、それは災難でしたね…。どこら辺の道なら分かりますか?」
なんだか、最近はまともな人によく会う気がする。
そんなことをふと思った。
まあここら辺の人なら私のことについて知らないだろうから、当たり前なのかもしれない。
「〇〇道とかなら……」
私が公園の通りの道をあげると、男性は「それなら」と口に出す。
「この先をちょっと行ったらあるのですが、少しややこしい道をしているんですよね…」
うーん、と少し唸るようにした後、「もしよかったら」と話をさらに続ける。
「僕が途中まで案内しましょうか?」
「…えっ?」
思わず変な声を出してしまう。
流石に、案内してくれるとまで言われるとは思っていなかった。
「いいんですか…?」
「構いませんよ、そう遠くもありませんから」
そんなことを平然と言うものだから、ついついその言葉に甘えてしまった。
「それじゃあ、お願いします」
この時の私はなんて愚かなのだろう。




