今度は見過ごせなかったから
動揺。
それはきっと、カギのことだ。
聞かなくてもわかる、それ以外ないんだもの。
けれど、どうしてそこまで動揺しているのかはやっぱりわからない。
さっきの違和感みたいに、見過ごせばいいはずなのに。
なぜだか、今度は見過ごせなかった。
きっと、好奇心が勝ってしまったのだろう。
ああ、もう、だめだな。
好奇心が勝ってしまっては、もう止まれない。
私は、このカギについて、その動揺について。
知りたくて、大きく動くことを知らせるように、口を開き始める。
「いや、ほんとうにごめん、勝手に触ってる時点でおかしいよね」
さっき、慣れていなくて口にしずらかった言葉は、すらすらと言葉になった。
優也は、少し視線を逸らす。
「いいや、本当に大丈夫」
…さっきみたいな動揺は見えない。
「でも、もう使わないカギって言ったでしょ?なにかには使ってたんじゃん、申し訳ないよ」
さっき口にした言葉も、忘れたとは言わせない。
今度は、優也は目を伏せた。
少し、間を開けて。
「…本当に気にしなくていいから」
そう、言葉を紡いだ。
私にとって、その間は少し、いや大きな違和感だった。
そして、ものすごい親近感を覚える。
…これは、拒絶だ。
そこで優也が、もう一度口を開こうとした。
なんとなく理解する。
これをそのまま言わせてはいけないと。
その瞬間が私の負けだと。
…彼は、話をそらしたいのだと。
拒絶を感じたのは、それが理由だと。
「ところで、大丈夫?ちょっと顔色悪いよ?」
…こういう時の自分は口が実に達者だ。
優也は、明らかに、動揺した。
黙って、視線をそらして、開こうとした口は堅く閉ざされていた。
今日の私は勘がいいみたい。
この話はしたくないんだと、今の彼の様子が全力で訴えている。
優也は、静かに口を開いた。
「少し…疲れているのかもね」
「休む?」
迷いなくそう答える私に、優也はさらに動揺を重ねた気がした。
…話を逸らすことに、乗り気に見えたからかもしれない。
けれど、実際の私はそんなに優しくない。
だって、話を逸らしてあげてるのは、もう確信しているから。
優也本人から、真相を聞くことはできないと。
だから、私は自分で真相を探す。
「疲れたなら、休んでもいいんじゃない?」
自分なりにできていると思っている笑顔を浮かべながら、そんなことをいう。
多分、優也はわかっている。
このまま私を放っておけば、自分の知られたくないことを知られると。
だから、私はあえて聞くのだ。
自分で話すのか、私に自由に探させるのか、どちらがいいのかを。
少し俯いたの優也は、そっと息をする。
そして言葉を放つ。
「それじゃあ――」




