違和感は見過ごして
…。
…あったかい。
…あったかい…?
勢いよく体を起こす。
急に起きたから、頭がくらくらする。
そして、ぼやけていた視界が形を成してきたころ、見慣れない天井が姿を見せた。
と同時に、自分が眠ってしまった経緯を思い出すべく全力で頭を動かす。
が、記憶があやふやすぎて何も答えを見いだせない。
つまり、何かの会話の途中で寝落ちしてしまった可能性が高いとみている。
「何やってんの、私…」
今が何時かもわからなけらば、優也の姿も見当たらない。
今すぐにでも帰りたいが、何も言わずに出て行っていいのか、謎の不安が渦巻いているせいで動けない。
…それと、ここからの帰り方がわからない。
別に方向音痴なわけではなく、一回で道を覚えきれなかっただけ。
…うん、そうだから。
いや、そんなことよりとりあいずこの状況をどうにかしないと。
まずは、周りを見て…、ん…?
ちらりと視界の端に映った何かがきらっと光った気がした。
気になって、それに近づいてみる。
「…ガラス?」
見れば、それはガラスの破片だった。
なんでガラスの破片が落ちているのかはわからないが、さらに別の何かに目を奪われる。
そっとそれを拾い上げる。
それ…何かのカギは、今ではあまり見ないようなアンティーク風の形状をしていた。
しかも、ちゃんと作られたものではなく、おもちゃに近いものだった。
しばらくそれを見つめていると、ガタっと上から大きな物音がした。
「っあ!」
思いもよらない音に思わずカギから手を放してしまう。
そして、地に落ちたカギは、弾んで何処かへ逃げようとする。
慌ててつかもうとするも、カギはそのまま棚の下の暗闇に溶けていった。
完全にやってしまった…。
後で優也に言わなくては、っと思ったところで頭は急に冷静になる。
上から音がした…ということは、ここには二階があって二階に優也がいるのだろうか?
確証はないけれど、今の状況から考えてそれしかありえないと決断し、二階に続く階段を探そうとする。
と、その瞬間。
扉が開いて例の人物が顔を出す。
私は、これまた思いもよらない出来事に固まってしまう。
優也は、それを見てもさして気にしていなさそうに、
「起きたんだ、おはよう」
と笑顔で返す。
…私は今、この人の言動に意味が読めなくてとても怖い。
笑顔?はて、なんで?
未だに固まったままの私をよそに、優也は「あっ」っと声を漏らす。
「もしかして、さっきの音で起こした?」
違う、と否定しようとしたが、優也は絶対そうだと確信しているようで、「ごめん」と即座に謝る。
謝られると否定もしずらく、どうしようもなくなるので、「別に」と答えておく。
それでも謝るのやめない優也をみながら、私はふと思う。
…上から音がしてから、下に来るまでの時間ってあっただろうかと。
カギを落として、階段を探そうと思った時間。
その時間でここまで来ることはできるのかと。
頑張れば、いけるかもしれない、けれども。
…足音もしなかったような。
なんとなくそんあ“違和感”をどこかで感じる。
でもそれは、些細なことに過ぎなくて、私はまあいいかと思ってしまう。
…全く、どうしてしまったのだろうか、私は。




