著者:圭太「禁断症状」
あと何駅。2。いや、3駅。くそっ。別のとこに座ればよかった。目の前の子供の元気で無邪気で、恐れを知らず、俺の苦しみを知らず、よく喋り、呼吸するように笑顔を振り撒くその姿!俺の顔に唾を飛ばして面白がっているのか。口角を釣り上げる動作だけで愛される存在。ニカッ。ああ、ほら。泣いてしまった。どこかへ行ってしまった。まあこちらとしては都合がいい。幼い子供には席を譲らないといけないからね。ただ、できるならば泥遊びの途中の手しか持ち合わせていないとしても、ハグして欲しかった。愛されたい。ドラッグの禁断症状というのはこれ程に辛いのか。
あと2駅。生物とは、そこらに転がっている物質を電気信号で動かしたに過ぎない。だから今感じているそこかしこの痛みや倦怠感もそう感じさせられているだけであり、その実はアルプスの麓に立ち体を伸ばす俺とも変わらず、200メートル自由形でオリンピックを優勝する俺とも、ノーベル賞の受賞演説をする俺とも変わらないのである。それはつまり何にでもなれるということである!これこそノーベル賞級の発見だ。まだ、やり直せる。
あと1駅。落ち着いてきた。続いて眠気がやってきた。まぶたの裏に流星が見える。この場合願い事は叶う?1駅分程の心地よい眠りから覚めると、これまで感じていた鬱々しい感覚は過ぎ去っていた。こんなことならもっと早く眠っていればよかった。腰を上げてドアの前に立つ。あれ、目的地はもうひとつ先じゃないか!




