り道の灯り
放課後、簡単に荷物をまとめ、部室を出ようとした。伶がノートを抱えて小走りに追いかけてきた。
僕は足を止め、振り返ると伶が息を切らしながら追いかけてくる姿が見えた。
その時、ようやく思い出した。普段なら、少なくとも伶が期待しているように、僕は彼女と一緒に部室へ行き、部長たちと放課後の時間を過ごすはずだったのだ。
「伶」
僕は足を止め、目の前に来た伶を見つめ、声には申し訳なさとわずかな焦りが混じっていた。
「ごめん、今日は…妹たちを迎えに急がなきゃ。家に…ちょっと用事があって」
伶はすぐに理解した。彼女の目がぱちぱちと瞬き、何も尋ねず、ただ素早く開いたノートに書き始めた:
『大丈夫だよ!早く行って!(≧▽≦) 妹たちが大事だよ!気をつけてね!』
僕は力強くうなずいた。
「うん!ありがとう、伶!また明日!」
「また明日!」
伶は手話をしながら、同じく力強くうなずき、それから手を振った。
僕はこれ以上遅れるわけにはいかない。振り返り、再び足を踏み出した。夕陽の金色の光が通りに注ぎ、人影を長く引き伸ばしていた。僕の足取りはどんどん速くなり、背中のランドセルがリズミカルに揺れた。
結果、筋肉を痛めていることに気づき、朝ほど速く走れず、走っては立ち止まり、また走ることを繰り返すしかなかった。
幼稚園の近くまで急いで歩くと、美咲お姉さんが遠くに立っているのが見えた。彼女は僕を見つけると、すぐに優しい笑みを浮かべ、手を振った。
「小辰!こっちよ!」
美咲お姉さんの声には笑いが含まれていた。
「美咲お姉さん!陽葵たちは…」
「慌てないで」
美咲お姉さんは笑って僕を遮り、幼稚園のそばにある見慣れた路地を指さした。
「あの子たち、お姉ちゃんの家にいるよ!すごく楽しんでる!時間が早かったから、遊びに連れて行ったの」
僕は長く安堵の息を吐き、感謝の言葉を述べた。
「ありがとう、美咲お姉さん!本当に助かったよ!」
「そんなこと言わないで!」
美咲お姉さんはウインクした。
「早く行きなよ!あの子たち、ずっとお兄ちゃんのこと呼んでたから!そうそう、未久ちゃんたち三人もさっき自分で来たよ。早く終わったから一緒に来たって」
美咲お姉さんと一緒に、僕の数えきれないほどの幼い記憶を刻んだ路地へ向かった。路地は深くなく、両側は古びた一戸建てが並び、壁には蔦が絡まっていた。
美咲お姉さんの家は路地の奥、白い柵と小さな庭のある古い家だった。
「そういえば、小辰、久しぶりだね…」
美咲お姉さんは手を後ろで組み、前をゆっくり歩きながら言った。
「そうだね…」
前回来たのはいつだったか?もう覚えていない。
「みんな大きくなったね!小辰ももう子供じゃない…」
美咲お姉さんの声はとても小さくなった。
「でもね!お姉ちゃん、すごく嬉しいよ。だって小辰がまた戻ってきたんだから!」
彼女は振り返り、微笑みかけた。見慣れた、薄緑色に塗られた木のドアの前に立つと、奇妙な、馴染みと懐かしさが混ざった感覚が込み上げてきた。
中学生になってからは、単純に外出が面倒になり、美咲お姉さんも外で勉強していたので、ほとんど来なかった。
でもここは、僕の幼少期のほぼ全てだった。
「小辰、ちょっと待っててね、お姉ちゃん鍵開けるから」
美咲お姉さんは鍵を取り出し、ドアを開けた。
「お入り!小辰!」
玄関に足を踏み入れると、馴染み深い、古本と草花とほのかな焼き菓子の香りが混ざった匂いが鼻を突いた。
しかし、目の前の光景は記憶の中の静かで温かい絵とは全く異なっていた。
リビングは、まさに戦場の様相を呈していた。
陽葵は子犬のように、巨大なふわふわのテディベアを抱え、柔らかい絨毯の上を転がり回っていた。茶色の小さな巻き毛は乱れ、興奮した「ケラケラ」という笑い声を上げていた。そのテディベアは彼女の体の半分ほどもあり、引きずられてあちこち動いていた。
星奈は小さな木のテーブルに静かに座り、クレヨンを手に、広げた画用紙に集中して塗り絵をしていた。
彼女の小さな顔は真剣で、金色の長い髪は肩に柔らかく垂れ、そばには小さなウサギのぬいぐるみが置かれていた。画用紙にはたくさんの小さな花が描かれているようだった。
凛音はソファに座り、目の前には精巧なティーセットが置かれ、ティーポットを手に、慎重にカップにお茶を注いでいた。
静羽は凛音のそばに座り、静かに絵本を見ていた。
雪野と千紗は反対側のソファに座っていた。雪野は眉をひそめ、未久に何かを熱心に話していて、琥珀色の目がきらきら輝き、手も動かしていた。
千紗はそばに静かに座り、深い茶色の目に笑みを浮かべて彼女たちを見つめ、時折小さな声で口を挟んでいた。
未久はぬいぐるみを抱え、少し新鮮さとリラックスした表情で、真剣に雪野の話を聞いていた。
窓から差し込む日光が、空中に舞う小さな埃を照らし、子供たちの顔に浮かぶ純粋な笑顔と集中した表情を明るく映し出していた。
空気にはクレヨンの匂い、古本の匂い、焼き菓子の甘い香り、そして子供たち特有の清潔で温かい匂いが漂っていた。
この光景を見て、僕は玄関に立ち尽くし、一瞬ぼんやりした。
美咲お姉さんは、隣のお姉さんというより、僕の幼少期における重要な、優しい、灯台のような存在だった。
彼女はいつも辛抱強く僕の話を聞き、一緒に遊び、悲しい時には抱きしめてくれ、いたずらをした時には呆れながらも優しく許してくれた。
「ぼーっとしてどうしたの?」
美咲お姉さんの笑い声が耳元に響き、彼女はそっと僕を押した。
「入ってきなよ!あの子たち、お兄ちゃんを見たらきっと喜ぶわよ!」
僕は我に返り、深く息を吸い込み、心の波を抑え、笑顔を作ってリビングに入った。
「お兄ちゃん!」
最初に気づいたのは陽葵だった。彼女はすぐに巨大なテディベアを放り出し(可哀想なテディベアは絨毯にうつ伏せに倒れた)、僕の胸に飛び込み、小さな頭を力いっぱい擦りつけた。
「お兄ちゃん!陽葵を迎えに来てくれたの!美咲お姉ちゃんの家にはおもちゃがたくさん!それに大きなクマも!」
「お兄ちゃん…」
星奈もクレヨンを置き、おずおずと走り寄り、小さな手で僕の裾をつかみ、大きな目をきらきらさせて僕を見つめ、小さな声で言った。
「星奈…絵を描いた…お兄ちゃんに見せたい…」
彼女はテーブルの上の画用紙を指さした。
凛音は僕を見て、すぐにぎこちない動作を止め、小さな顔を赤らめた。
「ふん!凛音…凛音は遊んでなんかない!これは…これは芸術鑑賞なの!」
静羽も絵本を置き、湖水のように青い目で僕を見つめ、静かにうなずいた。
「お兄ちゃん、こんにちは」
彼女の小さな手はまだ絵本の表紙をそっと撫でていた。
「お兄ちゃん」
未久は僕を見ると、すぐにソファから飛び降り、ウサギのぬいぐるみを抱えて駆け寄ってきた。
「やっと来たね!美咲お姉ちゃんのクッキー、すごく美味しかったよ!」
「北辰お兄ちゃん!」
雪野も笑顔で挨拶し、琥珀色の目を細めた。
「美咲お姉ちゃん、すごく優しい!家もすごく楽しい!」
「北…北辰お兄ちゃん…」
千紗も小さな声で続け、顔には浅い笑みが浮かんでいた。
僕は星奈を抱き、陽葵の手を握り、目の前の賑やかで温かい光景——妹たちが周りにいて、美咲お姉さんがそばに立ち、笑顔が温かい。空気には甘い香り、クレヨンの匂い、古本の匂い、そして日光の匂いが漂っている。
この瞬間、幼い頃の記憶と現実の美しさが重なり合い、奇妙で、心を安らげる温かさを生み出した。
「うん」
僕は笑顔でうなずいた。
「来たよ」
彼女たちと遊び、美咲お姉ちゃんのお菓子を食べ、ここ数年のことを話す…
人は時々、時間の感覚を失うことがある。夕食が近づき、そろそろ帰らなければならない。
「美咲お姉ちゃん…陽葵、まだ遊びたい…」
陽葵が僕の脚に抱きつき、小さな顔を上げて言った。
「また今度遊ぼうね!」
美咲お姉ちゃんはしゃがみ込み、陽葵の小さな頬をつまんだ。
「お兄ちゃんがお家に連れて帰ってご飯食べなきゃ!今度お姉ちゃんがイチゴのケーキ作ってあげる!」
「わあ!イチゴケーキ!」
陽葵はすぐに気を取られた。
凛音も目を輝かせた。
「凛音…凛音も食べる…」
星奈は小さな声で言った。
「ありがとう…美咲お姉ちゃん…」
静羽もうなずいた。
「よし、みんな、お姉ちゃんにさようならしよう」
美咲お姉ちゃんは立ち上がった。
「美咲お姉ちゃん、さようなら!」
陽葵が大声で言った。
「さようなら…」
凛音は拗ねたように言った。
「美咲お姉ちゃん…さようなら…」
星奈は小さな声で言った。
静羽も手を振った。
「さようなら!かわい子ちゃんたち!お兄ちゃんの言うこと聞くんだよ!」
美咲お姉ちゃんは笑いながら手を振った。
僕はしゃがみ込み、四人の小さな子たちに上着を着せ、帽子をかぶせ始めた。動作はまだ少しぎこちないが、朝よりは少し慣れていた。
美咲お姉ちゃんがそばで手伝ってくれ、動作は優しくて手際が良かった。彼女は星奈に丁寧に上着を着せ、凛音の帽子で乱れた髪を整えた。
「北辰」
美咲お姉ちゃんは静羽の整えながら、静かに言った。声にはかすかな感慨が込められていた。
「あなたは大きくなった…本当に大きくなった。小さい頃、いつも無口で無表情だった小辰が、今では…こんなにたくさんの妹の面倒を見られる頼もしいお兄ちゃんになった」
彼女は顔を上げ、僕を見つめた。
「お姉ちゃん…誇りに思うよ」
僕の手の動きが一瞬止まった。
「ありがとう…美咲お姉ちゃん」
僕は小声で言った。声は少しかすれていた。自分はまだ十分ではない、もっと変わらなければならないと分かっていた。
「じゃあ…お姉ちゃんにハグして!」
美咲お姉ちゃんは笑いながら両手を広げた。僕は両手に向かって歩み寄り、彼女を抱きしめた。美咲お姉ちゃんは目を閉じ、僕をぎゅっと抱きしめ、深く息を吸い込んだ。
「これから何か手伝いが必要なら、お姉ちゃんのところに来てね、わかった?小辰!」
「うん」
彼女は手を離し、目を開けた。
「妹たちをケーキ食べに連れてくるの忘れないでね!」
「うん」
僕はうなずいた。
ようやく四人の小さな子たちは身支度を整え、幼児用ハーネスを装着した。陽葵は相変わらず興奮して跳ね回り、凛音は小さな顔を赤らめ、星奈は僕の手をぎゅっと握っていた。静羽はそばに静かに立っていた。
「じゃあ…行くよ」
僕は言った。
「気をつけてね!」
美咲お姉ちゃんは玄関に立っていた。
「北辰、頑張って!あなたは最高のお兄ちゃんよ!」
七人の妹たち(千紗と雪野も陽葵と凛音を手伝ってくれた)を連れて、私たちは一行で美咲お姉ちゃんの小さな庭を出た。
木のドアが後ろで静かに閉まり、家の中の温かい明かりと笑い声を遮った。
僕は左手で星奈(彼女の小さな手は冷たかった)を、右手で静羽(彼女の手はとても落ち着いていた)を握った。陽葵は千紗に連れられ、興奮してイチゴケーキの話をしていた。凛音は雪野に連れられ、小さな顔は相変わらずこわばっていたが、目は柔らかくなっていた。
未久は黙って僕のそばを歩き、ランドセルを抱え、うつむいて何を考えているのかわからなかった。
振り返って、夕闇の中に温かい明かりを灯す古い家を見た。美咲お姉ちゃんの姿がまだ玄関に立ち、私たちに手を振っていた。
僕は星奈と静羽の手を握りしめ、彼女たちの小さくて確かな温もりを感じた。
「帰ろう」
「うん!お家に帰る!」
陽葵が大声で応えた。
凛音は軽く鼻を鳴らしたが、足取りは軽やかだった。
星奈は小さな声で言った。
「お家に…帰る…」
静羽はうなずいた。
千紗と雪野は顔を見合わせて笑った。
未久も顔を上げ、僕を一瞥し、複雑な感情が薄らいだようで、軽く「うん」と応えた。
夕暮れの中、私たちは「家」という名の場所を目指して、ゆっくりと進んでいく。




