表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/54

第3話 少女は告白に行きたい

昨日は雨憶伶あめなみだ れいさんに部活加入を承諾してしまったものの、まさか今日の放課後から活動が始まるとは思ってもみなかった。放課後、彼女に連れられるまま、部室へと向かった。


「部長、行きます。」


「どうぞ~」


雨憶伶さんがドアを開け、俺はその後ろから中へ入った。ソファの上に、夏服姿の少女がだらりと寝そべっていた。ポニーテールに丸メガネをかけた彼女は、我々が入ってくるのを見て起き上がった。


「ついに来たか!」


「はい、部長。こちらが新入部員です。」


素風北辰そふう ほくしんです。」


「ははは!ようやく新入りが入った!俺は夜滝よだき 優凛ゆりんだ!よろしくな!」


部長を名乗る夜滝 優凛は大声で笑いながら言った。


「部長、笑ってないで。彼に部活の説明を。」


「うん!了解。では私が詳細にご説明いたしましょう!」


彼女は喉を軽く鳴らし、表情を引き締め、両手を腿の上で組み、背を少し丸めた。レンズが一瞬キラリと光る。


「我々の部活動は、実に重大なのだ。」


彼女はメガネを押し上げ、再び両手を組んだ。


「人々に希望を与え、生きる情熱を再び燃え上がらせること。」


「絶望から救い出し、新たな目標を見つけさせること。」


「それで…えーと、その先が出てこない。とにかく重要極まりない!」


「だから…結局何をするんですか?」


部長は重大な秘密を発表するかのように、わざと間を置いて言った。


「それはね…応援だよ。人を助けること。」


「困ったことがあったら、いつでもおいで!見返りは求めない。登録用紙に記入してもらうだけでいいんだ。」


そう言うと、彼女は背筋をピンと伸ばし、腰に手を当て、やや顎を上げ、嬉しそうな眼差しで俺を見つめた。


どうして誰も入らないのか、だいたい分かった。しかし入部した以上、文句を言っても始まらない。


「部長、この部活の名前は?」


「『応援部』さ!なかなか素敵な部名でしょ?」


「えっと…部長、これまで来た人はいましたか?」


俺の言葉を聞いた瞬間、部長はまるで石化したように固まった。しばらくして、ロボットのように動き出し、


「ま、まあ…そのうち来るさ、きっと。」


そう言われても、これ以上詮索はできなかった。俺はソファに背をもたせかけ、天井を見上げた。本当に漫画みたいな変な部活が存在するんだな。マジで助けを求める人が来るものなのか?


「…以上が部活動の概要です。」


部長の説明が終わり、部室に静寂が戻った。誰も口を開かなかった。


「依頼者が来るまでは、部室で自由に過ごしてもいいんだぜ!」


そう言って、部長は漫画を読み始め、雨憶伶さんも本を開いた。俺は依然としてぼんやりと天井を見つめていた。頭の中を空っぽにして、ただリラックスしているうちに、また眠気が襲ってきた。目を閉じた。


トントン「すみません、いらっしゃいますか?」


ノックの音で目を開けた。部長と雨憶伶さんも手にしていた本を置いた。


「どうぞ~!」


ドアが開き、女子生徒が一人入ってきた。


「あの…ここが応援部ですか?お願いしたいことがあるんですけど…」


へえ、マジで来る人がいるんだな!


「こんにちは!ひなた夏橘ひなた なつみです。」


「はじめまして、夜滝優凛です。」


「雨憶伶。」


「素風北辰。」


自己紹介をした少女は黒いショートヘアで、肌は小麦色、半袖シャツにショートパンツを履いていた。


「どんなお悩みでしょう?」


「実は…私、好きな人ができてしまって。」


「彼はとてもイケメンで、高校に入学した時、一目で好きになりました。」


「遠くからそっと見つめています。」


「すれ違う時、つい視線を追ってしまいます。」


「声を優しく、可愛らしく響かせています。」


「耳元の髪を整えたり、所作に気をつけたり。化粧も始めて、スカートもはくようになりました。」


「私を見てほしい…」


「でも、彼は一度も私を見てくれません。」


彼女は自嘲気味の笑みを浮かべた。部室は静まり返った。


「私はスポーツが好きだし、肌も白くないし、ショートヘアにショートパンツ。友達には男っぽいって言われます。彼の目には、きっと女らしく映ってないんでしょうね。」


「分かってます。彼の周りには可愛い子がたくさんいて、私みたいな者にチャンスはないって。」


「でも…告白したいんです。」


「失敗するのは分かってます。でも、後悔はしたくない。」


「もう遠くから見ているだけなんて嫌なんです。」


部長と雨憶伶は黙っていた。俺は首をかしげた。つまり、彼女の依頼内容って具体的に何なんだ?


「あの…お願いがあるんですが…」


「言ってくれ、ひなたさん!全面バックアップするよ!」


部長はひなたさんの手をギュッと握りしめ、目に涙を光らせている。雨憶伶さんもこくんと頷いた。


俺は何も言わず、ただ三人を見ていた。


「北辰さんに…告白の練習に付き合ってもらいたいです。その後に…本番で彼に告白します。」


「は?俺が?」


「北辰…」


「部長、言わなくていい。分かってるよ。」


はあ、入部した以上、文句を言っても仕方ない。俺はため息をつき、承諾した。


「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」


「いえいえ。」


部長は手を振り、気にしなくていいと合図した。


「じゃあ、明日の放課後、屋上でお願いします!」


「ああ。」


「本当にありがとうございます、北辰さん。じゃあ、明日!」


彼女は再び礼を言い、手を振って去って行った。部長が俺の肩をポンポンと叩いた。


「頑張れよ、北辰!これが我が応援部の第一号仕事だぞ!」


俺はただ頷くのみだった。ソファにもたれながら窓の外を見やる。空には一片の雲もなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ