さて、他のみんなを探しに行こうか。
「さすが怜、勇気あるわ!夏橘!咲幽!次は頼んだ!」
彼女は腰に手を当て、疑いの余地なき鋭い視線を、既にやる気満々でありながらも躊躇っていた夏橘に投げかけた。
夏橘はその場で小さくジャンプしながら、手足のウォーミングアップをしていた。
「北辰くん!」
夏橘が振り返ると、いつもより丸く、活気に満ちた彼女の目が僕を見つめていた。
「僕の番だ!」
彼女の声は、わざとらしく張り上げたような高揚感に溢れ、その中には「怜があれだけやったんだから僕も負けられない」という子供っぽい負けん気さえ混ざっていた。
彼女は自分の、蛍光オレンジの水着に映えてより一層力強く見える、平らでピンと張ったお腹を、バン!と叩いた。水着のバイパーの紐が危なげに揺れた。
水滴がまだ彼女の小麦色の健康的な肌を伝わり、太ももの筋肉のラインに沿って流れ落ちていたが、彼女は全く気にしていない。
「見てよ!あそこの!ダブルスライダー!まだ誰も試してないだろ?来る?…あ、違う!僕と一緒にどう?!」
彼女は素早く、薄暗い光の中で、冷たい青い光が不気味にきらめく金属製の滑り台のチューブの入り口を指さした。
銀色のパイプはほぼ完全に密閉されており、奇妙に揺らめく青い光が内部から漏れる、わずか数個の小さな透明な観察孔があるだけだった。ここから聞こえる水流の音は、遠く鈍く鳴る雷のようだった。
隣でユリンが眼鏡を押し上げた。レンズに銀色のパイプの冷たい光が反射している。彼女が「気をつけてね」と言おうとしたその瞬間、夏橘は話す機会すら与えず、決然とした決意と速度で、僕の手首を掴んだ!
彼女の力は強く、手のひらは汗ばんで熱く、逃げられないという意思が宿っており、僕の手首をしっかりと締めつけて離さなかった。
「行くぞ!すぐに!今!」
否応なしの力が伝わってきて、僕は彼女に引っ張られるように一歩前に出た。
手首に感じるあの灼熱の触感と拒絶を許さない力が鮮明だった。怜は呆然とし、ユリンは止めようと差し出した手が途中で固まり、咲幽は静かにこちらを見つめ、夏橘が僕を必死に捕まえている、力むために関節が白くなった手に視線を落としていた。
夏橘は仲間たちの反応など全く気にかけず、僕を入口の方へ引っ張っていった。濡れて滑りやすい滑り止めマットの上を、足が「パタパタ」と慌ただしく音を立て、オレンジの人影は疾走する光のように駆けていた。
彼女の息は荒く、横顔は硬く引き締まり、口元は誰かとけんかをしているような頑固なへそ曲がりのように上がっていた。
行列は青い滑り台よりずっと少なかった。冷たい合金のパイプは森厳とした冷気を放ち、温泉パーク全体の温かい雰囲気とは全くそぐわなかった。
青白い光がわずか数個の丸い観察孔から漏れ、水蒸気の中で長く光の帯を引き、夏橘のぎゅっと結ばれた口元と緊張した顎のラインに映っていた。それは彼女の瞳の奥にある、強がりで覆い隠された緊張を映し出していた。
チューブから小型の二人乗り用ボートが係員によって降ろされた。よりコンパクトで、バッファーとなる空間はほとんどなかった。
冷たい金属の床板を水流が流れ、シューッという耳障りな音を立てていた。
「どうぞ…」
僕はまず夏橘を座らせようと席を開け、言いかけたが、
「前!」
夏橘が叫んだ。息は荒く、目には疑いの余地ない頑固さと…無理をしている負けん気があった。
「僕…僕が前に!進路を見る!僕…僕が守る!」
彼女の声は大きく、まるで自分自身を説得しているかのようであり、また見えないルールへの宣戦布告のようでもあった。頬は燃えるように真っ赤になっていた。
彼女は一気にボートのフロントシートに潜り込んだ。座り込みの際の勢い余りの動作で、冷たく滑る艇の側面にちょっとよろめいたが、すぐに力強い腕で体を支え、姿勢を安定させた。
彼女は背筋をぴんと伸ばして前に座っていた。蛍光オレンジ色の水着のトップが、彼女の小麦色の背中にぴったりとフィットし、つややかで張りのある背中と締まった腕のラインが眼前に広がり、水着の下で肩甲骨の形がはっきりと浮かび上がり、彼女の荒い息遣いでわずかに波打っていた。
僕は彼女の後ろの席に腰を下ろした。座るときに足が動くのは避けられず、彼女の体とごく一瞬の摩擦が生じた。
夏橘の体は瞬間的に硬直し、息さえ一瞬止まった。背中がピンと張った。
しかし、この硬直はほんの一瞬で終わった。彼女はまるで何かに導かれたかのように、すぐさまぐるっと振り向いた!緊張と興奮で紅潮した顔には、無理やり「僕、全然慌ててないもん!」という意味を込めたかのように、大きな丸い目が注意事項(むしろ自分への激励のように)を強調していた。
「…そ、そうだ!北辰くん!後で…すごく速くなったら…怖がらないで!しっかり抱きついて…僕が絶対に支えるから!」
そう言いながら、彼女は自分の決して太くはないが均整の取れた流れるようなラインの腕をひと振りした。
「前をしっかり持て。」
僕は、興奮と緊張で輝く彼女の目を見つめ、彼女の哀れな無理強いは無視して、同時に両手を艇の両脇のハンドルに置いた。
夏橘の瞳の奥にかすかに、ほとんど気づかれないほどの挫折感か失望がよぎった? しかし、それはすぐにより強い闘志に覆われた。
「うん!君も持ってろよ!」
彼女は力強くうなずき、ぴんと張った弓のように、ぐいっと前を向き直し、両手を艇の前にある小さな握り部分に強く押しつけた。
「……あの……北辰くん……」
彼女は背を向けたまま、声はこもって聞こえ、普段の軽快で明るいトーンからはかけ離れ、奇妙にモジモジとした感じがしていた。
「さっき……急にすごく速くなったら……あんた……ちゃんと支えてくれよ…ね?」
声は緊張感に満ちていた。
「うん。」
短い返答。
「ほ、本当にな!絶対に……さっき怜を支えたみたいに……あ、違う!って言いたいのは!バカにするなよ!」
彼女は勢いよく振り返り、オレンジ色の髪がその動きでそよ風に数回揺れ、飛び散った水滴が何滴か僕の腕に落ちた。
係員が出発準備の合図を出した。
「うわーー!!来たぞ!!」
夏橘の警告は完全に無駄だった。滑り台の激しい急勾配は彼女の想像をはるかに超えていた。
ボートはまるで見えない巨大な手で奈落の底に叩き込まれたかのようだった。完全に閉ざされたチューブは音を吸い込むブラックホールのように、外界のすべての喧噪を完璧に遮断していた。
空気が引き裂かれる風の音がヒューヒューと鳴り、狭い金属パイプの中で鋭く耳をつんざくような号泣を形成し、無数の怨霊が鼓膜をかすめていくように聞こえた。
周囲を渦巻く青白い光の影が歪み、伸び、砕け、奇妙に絡み合った渦を形成し、網膜を狂ったように掃いていった。水流の推力は乱暴でカオスティックで、ボートは思い切り放り投げられ、叩きつけられ、ねじられ、完全に制御を失っていた。
「うぎゃあああああああーーーーーーーー!!!!!」
天井をも貫くかと思われるほどの悲鳴が、予告もなく爆発した。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬーーーーーーー!!!」
夏橘の叫び声は完全に裏返り、泣き声と激しい恐怖に満ちていた。
さらに激しい右旋回コーナーで、ボートは思い切りパイプの右壁に叩きつけられた。
「うわあーっ!?」
夏橘は体ごと左側へと投げ出されそうになった。僕は素早く手を伸ばして彼女をしっかりと抱え込み、彼女をボート上にしっかりと固定した。
「ぐっ…」
押し殺した、抑えきれないような泣き声が、彼女の食いしばった歯の間から漏れた。
「ハンドルをしっかり持て。」
僕は低い声で言った。彼女のこれまでの威勢のいい言葉は、絶対的な力の前には脆くも崩れ去った。
しかし、その力強い手は瞬間的にフロントのハンドルを放し、まるで溺れた人のように本能的に、必死に暗闇の中をかき回し、すがりつけるものなら何でも掴もうとしていた。
はあ? ウォータースライダーでハンドルを離すなんて、飛び出したいのか?
熱くて、汗ばんだ手が、恐怖の極みの力で、乱暴に僕のふくらはぎをつかんだ。彼女は強く握り、爪が肉に食い込みそうなほどだった。
「ハンドルを持て、夏橘。飛び出したいのか?」
その次の瞬間、ボートは予告もない直角コーナーで思い切り放り投げられ、艇体の側面は冷たい金属の壁に激しくぶつかり、ドンッ!という鈍い音を立てた。
夏橘の体が勢いよく僕の方に放り投げられた。温かく、巨大な衝撃力を伴った肉体が暗闇と混乱の中で僕の胸に激しく飛び込んできた。背中が胸にしっかりと押し付けられ、ぬるっとした冷たい感触が一瞬にして伝わってきた。
彼女の滑らかで力強い左足も衝撃で完全にバランスを失い、勢いよく跳ね上がり、膝を曲げ、その膝が惰性で僕の太ももの内側にドシリと激しくぶつかった。
ドッカーン!
彼女の全身の体重と滑り台の恐ろしい加速度を伴ったその衝撃は、鈍く、重く、しっかりとしたものだった。
太もも内側の敏感な筋肉が瞬間的に麻痺し、痺れるような鋭い痛みが脊椎に電流のように一直線に走った。
「うぐぅ…」
苦しみと恐怖に満ちた短く詰まった嗚咽が、僕の鼓膜のすぐそばで、風に切り刻まれながらも迸るかのように爆発した。それは彼女の熱く、焼けつくような吐息と混ざっていた。
彼女は完全に正気を失い、後頭部を僕の首の付け根付近にぎゅっと押し付けた。すると、さっきまでふくらはぎをつかんでいた手が離れ、もう片方の手ももがう慌ててつかんでいた手も完全に抵抗を放棄した。
両手がまるで蔦のように、必死に後ろ上方へと伸びていき、僕の首を死に物狂いの力で締めつけて抱きかかえた。
同時に、彼女の体は必死に後ろに丸まり、僕の体で作られた防壁に最大限に縮こまろうとした。
足も完全に丸まり、暗闇の中で全身が絶対的な依存の、完全に守りを放棄した丸まった格好となった。
首にその熱い両腕がぐいぐいと押し付けられ、首筋に彼女の髪と後頭部が密着し、額の冷たいぬるぬるした感触さえも感じられた。
温かく、汗と涙の塩辛さが混ざった息が、猛烈に、乱れたまま、僕の顎や首筋の肌に噴きかけられた。一息ごとに激しい震えと死を覚悟した恐怖が伴っていた。
胸と胸が密着している部分では、薄く、とっくにびしょ濡れになった水着の布越しに、彼女の心臓の荒々しくも絶望的な、暴走したモーターのような鼓動がはっきりと感じられ、僕の胸を激しく揺さぶっていた。
「夏橘、ハンドルぐらい持てんのか!」 僕は彼女に言った。夏橘は意味のない細かい嗚咽を意識せずに漏らすだけであった。
「…ひ、ひどい…」
最後の垂直落下では、巨大な水しぶきが重爆弾のようにプールの底で炸裂し、冷たいプールの水が一瞬にして光と音を飲み込んだ。感覚に残るのは、重い衝撃、骨まで凍るような冷たさ、そして窒息するような水圧だけだった。
ゴゴゴゴオーンッ!!!
バシャッーーーンッ!!!
大波が頭上から押し寄せた。ボートが排水プールに叩きつける音は耳をつんざくほどに大きく、巨大な水しぶきは真っ暗なパイプの突き当たりで爆発した。
夏橘が僕の首を死に物狂いで締めつけていた腕は、水没時の巨大な衝撃によってついにほんの少し緩んだ。
「げほっ…おえっ…ごほごほっ…!」
夏橘の咳は心臓が引き裂かれるほど激しく、彼女はまるで気絶したかのようにボートの上に崩れ落ちた。息は荒く震えていた。
彼女の頭は無力に後ろに倒れ、ほとんど僕の腕の上に枕をしているかのようだった。びしょ濡れのオレンジ色の髪は真っ赤になった頬に絡みつき、目は固く閉じられ、涙がプールの水と混ざり合いながら止めどなく流れ出ていた。
激しい咳が彼女の体を絶え間なく震わせ、喉の奥から苦しそうな吐き気をもよおす声が漏れた。
彼女の両手はまだ無意識に僕の首の周りにあったが、力は抜けて、腕は伸びきったゴムのように微かに震えていた。
さっき僕の太ももの内側に激突した膝もまだ痙攣しているようで、わずかに丸まり、僕の足の側面にぴったりとくっついていた。
僕は、激しいむせ込みと荒い息遣いで波打つ彼女の背中をそっとさすった――その部分は温かく滑らかで、びしょ濡れの水着に包まれており、皮膚ははっきりとその下にある肋骨の激しい震えを感じ取っていた。
その動作が、少しでも彼女の苦しみを和らげる助けになればと。
「…手…」
夏橘ははっと体を震わせ、長くびしょ濡れのまつげが数回震えた。辛そうに目を開け、普段はキラキラと輝き活力に満ちていた彼女の瞳は、今や薄ぼんやりとした水のベールに包まれ、脆く虚ろに見えた。頭上からのライトの下、彼女はうつむいている僕の視線をまっすぐに捉えた。
自分が僕にほぼ半分抱かれているようなみっともない格好で、しかも両手をまだ人の首にしがみつけていることに気づいた瞬間―
「きゃああっ!!」
泣き声と極度の恥ずかしさと恐怖が混ざった金切り声が、プール内で異様に響いた。
彼女は飛びのき、身体に最後の力を振り絞り、手足をバタバタさせてボートから抜け出そうと立ち上がろうとした。
動作は怜の時よりも大きく、より慌てていた! 滑りやすい艇壁の上で、足に踏ん張る場所はなく、踏み切ろうとする代わりに、裸で力強い足の裏が、ぬめりと水気を帯びたまま思い出せないほどの爆発力を帯びて、恐ろしいほどの正確さで―一発、僕のさっき膝で突かれ、まだ鈍痛の残る太ももの内側に容赦なく蹴りつけた。
「ぶッ…」
夏橘は今や完全に混乱していた。自分がどこを蹴ったか全く気づいておらず、よじ登ろうともがく途中で、肘が力のコントロールを失ったせいで、うっかりとまともに僕の顎を叩いてしまった。
ガッ!
下顎骨に衝撃が走り、瞬間的な鈍い痛みと痺れるような感覚が一瞬で視界を真っ暗にした。
彼女はようやく、無様にごろごろと転がりながらボートから落ち、腰までつかる冷たい水の中に重く着水し、再び巨大な冷たい水しぶきを巻き上げた。
びしょ濡れのオレンジ色の人影は水中で二度ほどよろめき、なんとか立ち上がった。体を折り曲げ、両手を膝について激しく息を切らせ、髪の毛から滴り落ちる水が彼女の真っ赤になった頬を隠していた。
「…ほ、ほっ…北辰くん…あ、大丈夫か…?」
彼女はあえぎながら、声にはひどい鼻声と恐怖の余韻が乗り、途切れ途切れに尋ねてきた。
僕は叩かれて痺れを感じている顎をゆっくりと動かし、水に落ちて無様な彼女の姿を一瞥し、それから彼女の僕の急所の太ももを強烈に殴って蹴っ飛ばした、今なお水玉を纏った膝とふくらはぎに視線を走らせ、最後に泣きそうになった彼女の顔に落とした。
「…設計…改善の余地があるな。」
彼女の肩が激しく震え、猛り立って頭を上げた。びしょ濡れの顔は血のように真っ赤で、目にはプールの水か恥辱の涙が溜まっており、声は突然甲高くなって、泣き声と共に訴えかけてきた。
「な…何のデザインだよ!ひどすぎる。」
彼女は滑り台を指さし、九死に一生を得た怒りと、さっきの完璧な失態や依存行動に対する徹底的な八つ当たりでいっぱいだった。怒りで押し流されそうなあの恥ずかしさを隠そうとしていた。
「最低だ!クレーム入れなきゃね。」
彼女は意味不明な言葉で大声に苦情を述べながら、発散するように水面を力強く叩き、冷たい水しぶきを上げた。まるで逆立った小さなライオンのように、腹を立てていて不憫そうに見えた。
彼女は僕を見ることなど全くできず、自分の無様な姿も見られず、恥ずかしさと怒りの炎でほとんどその場で爆発しそうだった。
突然、夏橘は全身がぴたりと止まった。彼女はその場で動かず、水に落ちた彫像のようだった。体はまだ微かに震えており、荒くて速い呼吸をしていた。
「どうした?」
「わあーーおわわわわわわわーーーー!!!」
何の前触れもなく、夏橘は巨大な屈辱や恥、恐怖、そしてやり場のない悔しさが混ざった悲痛な泣き声を発した。
涙が決壊した洪水のように、プールの水や汗と混ざり合いながら次々と流れ落ちた。
彼女は泣くことなどお構いなしだった。まるで完全に崩壊して暴れ回る子供のようだった。
手で顔をぐちゃぐちゃに拭きながら、喉からは割れたような号泣を絞り出し、肩は激しく震え、今まで溜まった全てのストレスや驚きを涙で徹底的に洗い流そうとしているように見えた。
「うっ…ひ、びっくりした……ひどすぎる………死ぬかと思ったもん………」
彼女はあちこち話が飛んだような言葉で愚痴をこぼしながら、無意識に右手を上げ、強く僕の体に叩きつけた。殴打ではなく、むしろ感情を発散する駄々っ子のように。
「あんたのせいだ!選んだあのクソ滑り台が悪いんだよぉ…!あんなに速くて…水まで冷たすぎるし…わあわあっ…」
「はあ? 君がやりたいって言ったんじゃないのか? それにさっきまでちゃんと元気だったじゃないか?」
「関係ない…責任とれよ!」
「は?」
拳がびしょ濡れの水着に当たったが、重さはなく、むしろ霰が体に当たるかのように、ほんの少し冷たい感触が広がった。彼女の泣き声には子供じみた混乱と、ある種の依存感に満ちた訴えが満ちていた。
発散的な叩き方は数回で続かなかった。夏橘は自分の行動に呆然としたのか、あるいは単純に泣き疲れてしまったのか、腕の動きは次第に遅く弱くなった。
最後には肩だけがまだ激しく震えており、嗚咽も次第に弱くなっていき、途切れ途切れのすすり泣きだけが残った。
彼女はうつむき、オレンジの…いつもキラキラ輝いていた目は泣きはらして赤く腫れ、目の端は哀れを誘う薄紅色に染まっていた。涙は無音のまま流れ続け、プールの水と混ざり合って、水中に落ちると小さな波紋を広げた。
長いまつげは涙で濡れて絡みつき、下まぶたにぴったりと張り付き、休むことなく震えていた。
あの巨大な屈辱と驚きは、涙と共に少し流れ出したように見えた。
僕は発散し終わった、力尽きて呆けているようにも見える、びしょ濡れで哀れな彼女の様子を見て、そっとため息をついた。
「もう泣くなよ、今は無事じゃないか?」
「…そ、そうだよな…」
彼女は泣いて腫れた目を上げて僕を見た。その目つきは訴えるものではなく、水蒸気に覆われたようなぼんやりした困惑へと変わった。声は泣きと疲労でかすれて弱々しかった。
彼女はうつむき、びしょ濡れの自分の腕を見た。
「…どうやら…まだ…まあまあだな?」
次の瞬間、彼女は再び強く熱いほほを手で覆い、赤みが再びほほに浮かび、首筋にまで広がった。
彼女は強く振り返った。肩はまだ微かに震えている。
「…とにかく…次は…絶対にちゃんと乗ってみせるもん!」
声は指の間から漏れ、泣き声の残る自尊心とまったく隠せない気まずさが込められていた。
彼女はほぼ同手同足で、慌ててプールの底の滑り止めタイルを踏みしめながら、大きくまたぎ、まるで逃げ出すかのように岸に向かうはしごの方向に突進した。
しかしその背中は、完全に同じ手と足で動くほどのこわばりを帯び、一つ一つの歩みが水しぶきを上げていた。
水滴が小麦色の引き締まったウエストラインと丸く高いヒップラインを伝って落ちていく。彼女がはしごの手すりを掴んだ時、滑らかな背中の筋肉のラインが力を入れてわずかに張り、肩甲骨は小さな翼のようにそっと震えていた。
夏橘は振り返らなかった。
さて、他のみんなを探しに行こうか。




