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温泉作戦

窓の外はとっくに真っ暗で、都会の喧騒も厚いガラス窓に遮られ、部屋に残ったのはエアコンの低いうなる音だけだった。


机の上、スタンドライトの灯は琥珀のように温もる光の輪となって、広げられたライトノベルとそのページの上に置かれた銀杏の葉のしおりを包み込んでいた。


突然、スマートフォンの画面がパッと白く光り、薄暗い部屋に小さく鋭い明るさを投げかけた。「応援部!突撃!」というグループチャットの通知音が短く鳴り、すぐにまた沈黙に戻った。


私は本を置いて、スマートフォンを手に取った。画面がロック解除され、その眩しい光に思わず目を細めた。グループの画面では、メッセージが次々と流れていく。


優凛部長(ネコミミ少女アイコン):


「週末作戦計画!コードネーム:秋日暖陽シュウジツダンヨウ大作戦!」


「場所:新しくオープンした温泉テーマパーク!屋内温泉あり!滑り台あり!休憩ホールあり!それに美味しいものも超――多し!」


「時間:土曜日午前10時!校門前集合!」


「目的:寒さを払いのけ!心身ともにリラックス」


「玲!咲幽!夏柑!いますぐ返事ちょうだい!」


夏柑バスケットボールアイコン:


「了承!温泉!サイコー!泳いでもいいの?」


「部長部長!ウォータースライダーある?」


優凛部長:


「……夏柑!大事なのは遊ぶことじゃない!リラックス!楽しむこと!」


「でも……たしかウォーターパークエリアもあるかも?……確かじゃないけど……」


ブランクアイコン:


「玲、了承」


「温泉、きっとあたたかいよね」


咲幽(鉛筆アイコン):


(沈黙)


「温泉の湯気、秋らしくて……」


「きっと美しいと思う」


優凛部長:


「よしっ!全員了承!じゃあ……」


彼女のメッセージは少し間をおいた。


「さあ!いよいよ最重要項目!」


「今回の作戦!超重役ゲスト特別参加!我らの戦略的リソース!北辰くん!」


「@灰色人影 北辰くん!週末!温泉!一緒に来てよ!」


「今回は絶対静か!快適!人は少ない!騒がないって保証する!」


「玲!咲幽!夏柑!早く!一緒にお願い!この気持ちで感動させよう!」


夏柑:


「@灰色人影 北辰くん!一緒に行こうよ!温泉すごく気持ちいいんだから!リラックス!ストレス解消!」


「今回はうるさくしないって保証する!ほんと!誓ってもいい!」


玲:


「@灰色人影 北辰くん……温泉……とても暖かいよ玲……だから……君も好きだと思う……」


「……一緒に……きてくれないか……?」


咲幽:


「@灰色人影 静かだよ」


「一緒に」


四つのメッセージがほぼ同時に画面に現れた。それぞれ違った口調と期待を込めた、四本の伸ばされた、それでいて慎重な手のように、沈黙したグループチャットの空間で、声なき返事を待っていた。


私は画面を見つめ、指先を冷たいガラスの上にかけたまま。


数秒の沈黙の後、指先が落ちて、入力欄に一文字叩き込んだ。


「うん」


送信。


画面の光が私の目に映り込む。あのグレーの、無機質なアイコンの隣に、シンプルな「うん」という一文字が添えられた。


グループチャットは瞬間、死の静けさに包まれた。


新しいメッセージは現れない。


まるで時間が凍りついたかのようだった。


私はスマートフォンを置いた。画面は自然に消え、部屋はまたスタンドライトの温もる琥珀色の光の中に戻った。本のページの上に置かれた銀杏の葉のしおりは、そこに静かにあった。



玲の部屋:


玲は机の前にうずくまり、デスクライトの柔らかな光が目の前のノートに落ちていた。


ちょうど今日の日記を書き終えたところで、ペン先はまだ紙の上にあった。スマートフォンの画面が光り、グループのメッセージが次々と現れる。優凛部長の「@灰色人影」を見た瞬間、心臓が何かに軽く掴まれたように、キュッと縮こまった。


息を殺し、指が微かに震えた。画面にそのお願いの言葉「……一緒に……きてくれないか……?」と打ち込んだ。


送信した後、まるで何かに焼かれたかのように、即座にスマートフォンを裏返して机の上に伏せ、両手でしっかりと頬を覆った。掌には皮膚の下を流れる血液の熱さが伝わってきた。


胸の中の心臓が狂ったように鼓動し、ドクドクドクと耳の奥を打つ音が麻痺しそうだった。


スマートフォンを見るのが怖かった。ただ、スケッチブックの上に描かれた、ぼやけた横顔の輪郭を必死に見つめるだけ。


彼は承諾してくれるだろうか? 前の銀杏並木の時のように断る? それとも……あのマフラーをくれた時のように、予想もしなかった返事をくれる?


この声なき待ち時間に窒息しそうになった時、机の上を通して、スマートフォンの画面がごくかすかに震えた。一度。たったの一度だけ。


玲の身体がピンと硬直した。まるでスローモーションで動くように、極めてゆっくりと、ほんの少しずつ、頬を覆っていた手をずらした。指先は冷たく、かすかに震えていた。


全身の力を使い果たすかと思われるほど深く息を吸い込んでから、ようやく手を伸ばし、恐る恐る裏返しになっていたスマートフォンを反転させた。


画面は光った。


グループの画面。


あのグレーのアイコンの隣に、たった一文字。


「うん」


玲の瞳が一気に見開かれた。呼吸が一瞬止まった。彼女はその文字を凝視した。


一遍、二遍……あのシンプルな「うん」という文字は、まるで稲妻のように、彼女の抱える全ての緊張や不安を切り裂き、目眩がするほどの、巨大な衝撃をもたらした。


承諾した?


彼が……承諾した?


一筋の熱い奔流が心臓から一気に噴き上がり、瞬く間に全身を駆け巡り、頭頂めがけて一直線に突き上がった。頬は炭火に投げ入れられたかのように、驚くほど熱かった。


耳の根元や首筋までもが火照っているのを感じられた。巨大な、言葉にならない喜びと恥ずかしさが津波のように襲いかかり、彼女を完全に飲み込んだ。


彼女は慌ててうつむき、額が「ドンッ」という鈍い音を立てて冷たい木の机に打ちつかった。しかし、この痛みは心の内の大嵐に完全にかき消されていた。


もうスマートフォンを見る勇気もなければ、顔を上げる勇気もなかった。ただ、熱い頬をひたすら冷たい机の面に押し付けることで、理性すら焼き尽くさんばかりの猛烈な羞恥心を冷まそうとしていた。


両手は強く握り締められ、爪が深々と手のひらに食い込み、かすかな痛みを生じさせたが、それでも心の内の大荒波を鎮めることはできなかった。


彼は承諾した……私たちと一緒に温泉に行ってくれる……週末……一緒に……温泉に?


この考えはまるで沸騰した油の中に落ちた水の雫のようで、彼女の脳裏でパチパチとはじけ、無数の混乱し恥ずかしい想像図を散らした。湯気が立ち込める温泉……かすかな水蒸気……水着を着て……彼と……同じ空間で……


「あっ……」


きりりと噛み締めた唇の隙間から、泣き声を帯びたか細い声が漏れた。


彼女は慌てて背筋を伸ばし、驚いた小鹿のように慌てて辺りを見回した。まるで誰かに今の気まずい姿を見られないかと恐れているようだった。


そして、まるで飛び込むように自分のシングルベッドに向かい、柔らかい布団に頭から突っ込むと、厚い羽毛布団で頭のてっぺんから足の先までぎゅうぎゅうに包み込み、まるで密閉されたまゆのようになった。


闇の中に聞こえるのは、自分の乱れ狂った心臓の音と息切れ音だけだった。


布団の微かに冷たい生地に頬を押し付けていたが、その熱は微細に減ることもなく、むしろ布団に包まれていることで一層強烈になっていた。


彼女はぎゅっと目を閉じ、長いまつ毛は激しく震えていた。頭の中で繰り返しあのシンプルな「うん」という文字が再生され、それに続いて押し寄せてきた、天まで届きそうな恥ずかしさと言葉にならない、巨大な、彼女をすっかり溶かしてしまいそうな幸福感が彼女を包み込んだ。


彼女は自分をさらに布団に深く埋め込んだ。この熱い秘密を永遠に閉じ込めたいかのように。



咲幽の部屋:


咲幽は窓辺のローテーブルに座り、目の前にはスケッチブックが広げられていた。窓の外には都市の灯りが点々と見え、その光が彼女の落ち着いた瞳に映っていた。


スマートフォンは隣に置いてあり、画面は点灯していた。彼女はグループからの招待を見た。画面に指をしばらく置いてから、そっと打ち込んだ。「……一緒に……?」


送信した後、スマートフォンを置いてペンを手に取り、スケッチブックの空白のページに意味もなく走った線を塗りつぶした。まるでこの方法であの心臓のどことなく感じる焦りを抑えようとしているかのようだった。


ペン先のざらざらとした音が時間の経過を告げている。彼女は目の前の線に集中するよう自分に言い聞かせていたが、目の端はどうしても黙ったままのスマートフォンの画面に向いてしまう。


突然、画面がほのかに光り、新しいメッセージが通知された。


咲幽のペンがパッと止まった。紙の上に不自然なインクの点を落とした。彼女はゆっくりとペンを置き、指がかすかにこわばりながらスマートフォンを手に取った。


画面を開錠。


あのグレーのアイコン。


「うん」という一文字。


咲幽の呼吸が一瞬止まった。彼女はその文字を眺め、窓の外の街灯が彼女の瞳の中で薄くぼんやりとした光の輪になってしまうほど長く見詰めた。


あのシンプルな文字はまるで深く澄んだ水たまりに投げ入れられた石のようで、彼女の静かな心の中に音もなく、しかも巨大な波紋を生み出した。承諾した? 彼が……本当に承諾した?


言いようのない熱さがそっと彼女の頬と耳の付け根に忍び寄り、まるで春一番の太陽のように、雪を溶かしているかのようだった。


彼女は奇妙な、大きな喜びと強烈な恥ずかしさが入り混じった感情が胸の中に広がり、少しもどかしい気持ちを覚えた。彼女は無意識に手を上げ、冷たい指の先でほんのりと熱くなった自分の頬にそっと触れた。


温泉……彼と一緒に……漂う湯気の中で……光と影……それはどんな姿だろう? 彼は部室で過ごす時のように静かに待っているだろうか? それとも……湯気に包まれてリラックスしているだろうか? この考えが彼女の心臓を突然速くさせ、まるで胸の中に無数の小鹿が暴れているようだった。


彼女は慌てて立ち上がり、動きは落ち着きを失い、背後にある椅子を倒し、軽い「ガチャン」という音を立てた。


だが、それどころではなかった。彼女は速足でベッドに向かうと、その上にある巨大なふわふわした抱き枕――普段絵を描き終えた後に寄りかかっていたもの――を手に取った。


彼女はその抱き枕を胸いっぱいにぎゅっと抱きしめると、顔を深々と、力いっぱいに抱き枕の柔らかい生地に埋め込んだ。


抱き枕には彼女自身の、絵の具と紙の入り混じったようなほのかな匂いがついていた。頬が沈み込んだ瞬間、柔らかい布が彼女の熱くなった肌を包み、かすかな安らぎをもたらした。


しかし、その熱はまるで心の底から湧き出てくるようで、耳の付け根は真っ赤になるほど焼けついていた。


彼女はしっかりと目を閉じた。長いまつ毛は抱き枕に触れ、体は少し丸くなった。頭の中を「うん」という文字が繰り返し流れ、それに続く、ぼんやりとして気も動転しそうな温泉の光景がよみがえった。


抱き枕を抱えている彼女の指はさらに強く握られ、指の関節が力いっぱいたるんで白くなっていた。その巨大な、音もない羞恥心と喜びはまるで温かい網のように、彼女をしっかりと包み込み、ただこの柔らかな暗闇の中で、このあまりにも激しい感情を一人で消化したいという思いにさせた。



夏柑の部屋:


夏柑はあぐらをかいて床に座り、壁に向かってドリブルの練習をしていた。バスケットボールが彼女の指先で素早く回転し、跳ね返り、規則的な「ポンポン」という音を立てていた。


スマートフォンは隣のベッドに投げ出され、画面は点灯していた。彼女はボールをドリブルしながら、目を盗んでグループのメッセージを眺めていた。


優凛部長が北辰くんをメンションしているのを見ると、すぐに動きを止め、スマートフォンを手に取って素早く打った:「@灰色人影 北辰くん!一緒にいこうよ!……」 送信した後、スマートフォンをベッドに投げ出し、またボールを手に取り、練習を続けながら、何のメロディともわからない歌をハミングしていた。しかし、その動きは明らかに上の空で、ボールが何度か手から落ちそうになった。


「承諾してくれるだろうか?」


この考えが彼女の心の中で渦巻いていた。前の銀杏並木の時は彼は来なかったが、あんなにかっこいいマフラーをくれたから……今回の温泉には……関心を持つはずだよね?


何しろすごく暖かいから!自分を納得させようとしたが、それでも心の中は少し不安でいっぱいだった。


突然、スマートフォンが「ピロリン」と鳴り、静かな部屋の中でその通知音は特にはっきり聞こえた。


夏柑のドリブルが急に止まった。バスケットボールが制御を失い、「ドンッ」と床に落ち、数回跳ねると部屋の隅へと転がっていった。


彼女はボールを拾いに行くことも忘れて、一気にベッドに駆け寄ると、スマートフォンを掴んだ。


画面を開錠。


あのグレーのアイコン。


「うん」という一文字。


夏柑の目が一気に大きく見開かれた。口は半開きで、まるで誰かに一時停止を押されたかのように固まってしまった。一秒、二秒……そして、巨大な、言い表せない狂喜が電流のように一気に全身を駆け巡った!


「彼が承諾した!北辰くんが承諾した!」


この考えが彼女の頭の中で爆発し、まるで一番華やかな花火に火がついたかのようだった。しかし、次の瞬間、今までに経験したことがない、非常に激しい恥ずかしさが津波のように押し寄せ、一瞬にして彼女を飲み込んだ。


承諾した? 温泉? 一緒? 水着で? 一つの湯船で? 熱いお湯……肌……距離……


「どっかーん!」と、夏柑は自分の頬がまさに火炉に投げ入れられたかのように、驚くほど熱いと感じた。


熱い蒸気が一気に頭に上り、耳までがジンジンした!心臓は胸の中で狂ったように鼓動し、まるで逃げ出そうとしているかのようだった!彼女は慌てて火照った頬を押さえつけた。指には皮膚の下を流れる血の熱さを感じ取れた。


「ふっ――ッ!」彼女は短く、音のない悲鳴(隣室に聞かれないように)をあげると、驚いた野ウサギのように急いで回れ右をし、自分のベッドに突進した!彼女は整然と畳まれた布団に頭から飛び込み、顔を深々と柔らかい布団の表面に押し付けながら、両手で布団の端を固くつかみ、強く、乱暴に自分の髪の毛を揉みしだいた。まるであの恥ずかしい考えを揉み消そうとしているかのように。


「やばいやばいやばい!本当に承諾した!どうしようどうしよう!」


彼女は布団の中で声に出さずに泣き叫んだ。極度の恥ずかしさと興奮で体がかすかに震えた。頭の中では制御できずに様々なぼんやりとしたイメージが浮かんだ:温泉の湯気、ぼやけた人のかげり、それに……彼の? この考えが彼女をいっそう気まずく当惑させ、頬をさらに布団に深く埋めようと、息が詰まるほどに。


普段はおおらかな活力は跡形もなく消え去り、恥ずかしさと狂喜に押し流された、丸まって布団の中にいる、熱い小さな姿だけが残った。彼女はしっかりと目を閉じ、顔を焼くような温度と胸を叩く雷鳴のような心臓の音を感じ、ただこの柔らかな闇の中に自分を完全に隠したいと思っていた。



優凛部長の部屋:


優凛部長はベッドに胡座あぐらをかき、巨大な猫のぬいぐるみを抱いていた。目の前には少女漫画が広げられていた。スマートフォンは漫画の本の上に置いてあり、画面は点灯していた。彼女は漫画を心ここにあらずでめくりながら、グループの動きを注意深く見守っていた。


玲、咲幽、夏柑全員が誘いの言葉を送ったのを見ると、満足げにうなずいた。メガネを押し上げながら、指が画面の上を舞った:「@灰色人影 北辰くん!温泉!一緒に来てよ!……」


送信すると、スマートフォンを置き、猫のぬいぐるみを手に取り、その爪を弄びながら小さな声でつぶやいた。


「ねこちゃん、北辰くん、今回は承諾してくれると思う?前回の銀杏並木はダメだったけど、今回は本部长がわざわざ選んだんだから!静かで!快適で!断る理由なんてないでしょ?ね?」


彼女はぬいぐるみを抱きしめながら、あごをそのふわふわした頭の上に乗せていたが、目はときどきスマートフォンの画面に滑っていき、気づかれない程度の緊張と期待を漂わせていた。


突然、スマートフォンの画面がほのかに光り、通知音が鳴った。


優凛部長は急に背筋を伸ばし、スマートフォンをひったくるように手に取った。


画面を開錠。


あのグレーのアイコン。


「うん」という一文字。


優凛部長は瞬間的に石化した。スマートフォンを握りしめた姿勢を保ったまま、目は画面を凝視し、瞳孔がわずかに広がり、口は半開き、まるで不動の呪いをかけられたようだった。数秒後、巨大な、信じられないほどの狂喜が心の底から火山が噴火するように噴き出した!


「成功した!彼が承諾した!本部长の作戦が成功した!温泉作戦!大成功!」


彼女は心の中で声をあげて叫んだ。感動のあまり飛び上がりそうだった。しかし、次の瞬間、激しい、大きな達成感と……恥ずかしさが入り混じった感情が一気にこみ上げてきた。


承諾した、温泉、北辰くん、そして私たち四人の女子と一緒。


水着で、湯気が熱く立ち込める中で、彼が普段とても静かだけれど温泉の中ではどんな姿を見せるのだろう?


気まずくならない?本部长はどんな水着を着よう?可愛い系?それとも大人っぽい?


ああ!何考えてるの!


「うわっ!」


彼女は短く、かすかな叫び声をあげると、急いでスマートフォンをベッドに投げ捨て、まるで尻尾を踏まれた猫のように、勢いよくベッドに突っ伏した。そして、巨大な猫のぬいぐるみをぐいっとつかみ取ると、顔を強く、深々とぬいぐるみの柔らかくて分厚い毛皮の中に押し付けた!


「あああ―――っ!承諾した!本当に承諾した!」


彼女はぬいぐるみの毛の中で声なくさけんでいた。頬は柔らかな生地に押し付けられた。少しでも冷たさを求めようとしていたが、その熱さはまるで心の奥深くから尽きることなくあふれ出ているようで、体中を熱く燃えさせた。


彼女はしっかりとぬいぐるみを抱きしめていた。足は無意識にベッドの上で数回蹴った。


少女特有の、巨大な喜びと強烈な恥ずかしさが入り混じった感情が、彼女にただこのもふもふした、ぬいぐるみ特有の匂いがする闇の中に身を隠し、このあまりにも刺激的な「勝利」の果実を一人で消化させた。


彼女は耳の先まで熱くなっているのを感じ取ることができ、ぬいぐるみに埋まった頬はさらに驚くほど熱くなった。


部長としての威厳や「情を動かし理を分からせる」という豪語も、この瞬間に完全に打ち砕かれ、恥ずかしさに押し流された、ぬいぐるみを抱えてベッドで泣き声もなく転げ回っている少女だけが残った。

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