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第21話乙女たちのホッと一息

金曜日の部室。夕日の金色の光がブラインドを通り抜け、床に温かな光の帯を刻んでいた。


古い紙の匂いと、かすかに張り詰めた空気が漂っている。


伶は窓際に静かに座り、細い指でスケッチブックに銀杏の葉の輪郭を描いていた。柔らかな光が彼女のなだらかな髪のてっぺんと、うつむいた横顔を優しく照らす。時折、彼女は長い睫毛を上げ、澄んだ瞳を一瞬だけ――隅の古い椅子で目を閉じて休む人影(僕)へと、そっと滑らせる。そしてすぐにまた俯き、頬を淡く赤らめ、鉛筆の先が紙の上で微かに震えた。


夏橘は伶の近くの床に胡坐をかき、バスケットボール雑誌をめくっていた。琥珀色の瞳はキラキラと輝いているのに、その視線はどこか……泳いでいる? 彼女は何度もこっそりと僕の方を見ては、慌てて視線をそらす。頬を赤らめながら、無意識に雑誌のページの端をくるくると丸めている。


ユウリン部長は机に突っ伏していた。メガネの奥の目を見開き、スマートフォンの画面を死死と見つめている。指が机の上で無意識に軽く「トントン」とリズムを刻む。頬には疑わしいほどの赤みが差し、鼻の頭に細かい汗が滲んでいる。彼女は何かを……決意しているのか?


咲ユウは隅にイーゼルを立て、画布に向けた静かな視線を落としている。パレットから絵の具を筆に取る動作は流れるような集中力に満ちている。しかし彼女の呼吸はいつもより軽く、そして遅い。静かな瞳の奥に、かすかに捕え難い波紋が走った。まるで静かな湖面に小さな石が投げ入れられたかのように。


部室には不思議な沈黙が流れている。伶の鉛筆の「サラサラ」という音、夏橘の本をめくるかすかな音、ユウリン部長の指が机を叩く「トントン」という音――そして……窓の外からかすかに聞こえる風の音だけが響いていた。


(僕の心の声)今日はどうして喋らないんだ? 変だな、皆こっちを見てるけど…?


「コホン!」


ユウリン部長が突然咳払いをすると、背筋をピンと伸ばし、メガネを押し上げた。レンズの奥の目が鋭く光る。


「あの……戦略備蓄!」


彼女の声は部室の静寂を破り、隅で目を閉じて休む僕を鋭く捉えた。


「本部長……重大な戦略的質問があるぞ!」


「……」


僕はゆっくりと目を開け、落ち着いた視線をユウリン部長の顔に向けた。


「先週!……あの……遊園地の入り口で!……君と……すごく……親密にしてた……あの女の子!……誰なの?!」


ユウリン部長は腰に手を当て、必死に「部長」としての威厳を保とうとするが、頬は制御できないほど真っ赤に染まっていく! 声は震えていた。


メガネの奥の目は僕を死死と見据え、「尋問」のような確固たる意志と、かすかに感じ取れるパニックが込められている?!


伶の鉛筆が空中でピタリと止まった。澄んだ瞳が大きく見開かれる。彼女の小さな顔は一瞬で青ざめ、夏橘も顔を上げ、琥珀色の目を見開いた。信じられないという眼差しで、手に持った雑誌が床に落ちた。


咲ユウが筆を持つ指がかすかに震えた。


部室は一瞬にして水を打ったような静寂に包まれた。空気さえも凍りついたようだ。部員全員の視線が一点に集中していた――僕へ。


大きな緊張、期待、不安、そしてかすかな恐怖をまとったまなざしだった。


僕は黙ってユウリン部長を見つめた。


「ああ! あれは――」


まだ言い終わらないうちに、部長が叫んだ。


「そ、それは! 君の彼女なんだろ?!」


絶望と苦痛に満ちた声だった。


「まさか! ホクシン君が捕まったなんて! 野良猫に狙われたなんて!」


「いや……どうして、ホクシン君!」


「えっ、そうじゃなくて…」


「本当なの?」


「ホクシン君が私たちを裏切るの?」


「え? いつ約束したんだ?」


「ホクシン君、悪い人!」


「そうだそうだ! 最近早く帰るのは、彼女と会うためなんだろ?」


「いや、あれは…」


…………


この一言の影響力は間違いなく絶大だった。他の少女たちも次々とパニックになり、矢継ぎ早に質問を浴びせてくる。伶も慌てて手話で早口に尋ねてくる。


さっきまでそれぞれ自分のことをしていたのに、どうしてこうなるんだ? まあいい、話し終わるまで待って説明しよう。


長い時間が経って、ようやく彼女たちは黙った。


「あの…妹だよ。」


低い声で言った。かすれ声ながらも、静寂の中をくっきりと貫く。僕は彼女たちに詳しく状況を話した。


「……」


ユウリン部長の目が大きく見開かれた。メガネの奥の瞳が一瞬で爆発的な驚きと、そしてホッとした安堵の色に染まった。


「め……妹?!」


声は大きく震え、鼻を詰まらせながら叫んだ。頬は一瞬で熟れたトマトのように真っ赤になり、首筋まで紅潮した。


「ほ……本当?!…戦…戦略備蓄!…ウ、嘘じゃないよな?! 本部長を騙してないよな?!」


「ああ。」


「やったーーー!!! あ…良かった!」


ユウリン部長は椅子から飛び上がり、両手を拳にして興奮して振り回した。その動作は大げさで、メガネが落ちそうになった。


「本部長は知ってたぞ! 戦略備蓄…ええと…ホクシンくんは! 世…世界一頼りになる! ははははっ!」


得意げに大笑いした。笑い声には大きな喜びと困惑が混ざり、耳の先まで真っ赤に染まった。


伶はたちまち安堵の息を吐き、澄んだ瞳に一瞬、安らぎと巨大な照れが走った。ほんのり赤らんだ顔を再び俯け、急いでスケッチを再開した。しかし鉛筆の先の震えはより明らかになった。


夏橘も大きく胸を叩き(かなりの力で)、琥珀色の瞳に巨大な喜びの輝きが走った。口元が抑えきれずにほころび、咲ユウはほんのわずかにうつむいた。静かな瞳の奥に一瞬、雪解けのような柔らかな光が走った。


部室の緊張した雰囲気は一瞬で消え去った。伶の鉛筆の音は以前より軽快に聞こえ、夏橘の雑誌をめくる動作も活力を取り戻した。ユウリン部長は興奮して部室を歩き回りながら、ブツブツと呟いている。


「……戦略備蓄…さすが…忠実!…本部長…ご褒美を…ご褒美をあげる!…」


咲ユウは静かに絵を描き続けた。僕は再び目を閉じた。


(僕の心の声)ああ…どうしてこうなったんだ?



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