番外編 ノア・カロラインの日常
こちらのシリーズでは、投稿お久しぶりです。
約一ヶ月ぶりですね。
今回は番外編です。
楽しんでいただければ幸いです。
「おーい、ティナー。出ておいでー」
大きな声を上げながら、茂みの中をのぞき込む。
薄い窓を一枚隔てた廊下では、執事やメイドたちが、先ほどから途切れることなく忙しそうに行き来していた。
最初の頃は、俺がティナ、こと飼いヘビのクリスティーナを探すこの声にびっくりしていた人も多かった。
だが、そんなの今では慣れた様子で、歯牙にもかけずにそれぞれの仕事に没頭している。
もっとも、何も構われないのはいつものことだ。
皆食事の準備も、部屋の掃除も、仕事は全て完璧にやる。
ただ、俺と関わらないだけ。
あの廊下の皆と俺は、別に面白みも何ともない、ただの賃金で結ばれただけの関係だ。
召使たちは皆、ティナにも近づこうとしない。
それどころか、視界に入れようとすらしない。
ただ単にヘビが怖いのか、それとも___。
俺は首を振って陰鬱な考えをとっぱらった。
いつの間にか止めていた手をまた動かす。
と、背後でカサッという音がした。
「ティナッ!?」
俺はガッと後ろを向く。
と、そこには予想通り、白い体を優雅にうねらせる俺の愛しいペット(兼、家族)がいた。
「探したんだぞー」
こいつには、特に毒はない。
だから、俺のペットたちはケージはあるものの基本は放し飼いなのだ。
そのせいか、頻繁に誰かが脱走するのだが。
その中でも、ティナが脱走する回数は群を抜いている。
「やっぱちゃんとケージとか使った方がいいのか……?」
それでも、ずっと一緒にいてくれた存在を縛りたくは、ない。
「お前くらいだよ、ずっと変わらないのは」
返答があるはずもないのに、言葉をかけてしまう。
もともと、それとなく遠巻きにはされていたし、そんな空気を薄々感じてもいた。
だけど、「あの事件」のあと、それが顕著になった。
「専任」であるはずの召使は、ほとんど普通の召使に混じって俺の近くにはいない。
許婚の娘ですら、俺と婚約を結びたくないみたいだ。
俺もその許婚を恋愛的な意味で好いてはいないから、別にいいのだけど。
結婚するなら、あの許婚のようにツンとすました人じゃなく、明るい人がいいと思う。
少し変わっていて、でも底抜けに明るくてよく笑う人。
そう、例えばあんな。
つい最近知り合った町娘の顔を思い浮かべ、俺はため息をついた。
「ノア様」
俺が物思いにふけっていると、後ろから声をかけられた。
振り向くと、そこにはよく見知った顔。
「ケイ」
親しみを込めて、その名を呼ぶ。
そうか、こいつも一緒にいてくれた存在だった。
相変わらずつれないし、ティナの魅力は理解してくれないけれど。
そんな俺を完璧にスルーし、ケイは淡々と言った。
「旦那様がお呼びですよ」
「あぁ、今行く」
俺は返事をして、立ち上がった。
ティナをするりと服の中に隠す。
パン、と両手で頬をたたいて、気合を入れた。
俺はケイの後に続いて歩き出す。
しっかりしなければ。
俺は、カロラインの中では「ヒトゴロシ」なのだから。
閲覧ありがとうございました。




