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9/9

番外編 ノア・カロラインの日常

こちらのシリーズでは、投稿お久しぶりです。

約一ヶ月ぶりですね。

今回は番外編です。

楽しんでいただければ幸いです。

「おーい、ティナー。出ておいでー」

 大きな声を上げながら、茂みの中をのぞき込む。

 薄い窓を一枚隔てた廊下では、執事やメイドたちが、先ほどから途切れることなく忙しそうに行き来していた。

 最初の頃は、俺がティナ、こと飼いヘビのクリスティーナを探すこの声にびっくりしていた人も多かった。

 だが、そんなの今では慣れた様子で、歯牙にもかけずにそれぞれの仕事に没頭している。

 

 もっとも、何も構われないのはいつものことだ。

 皆食事の準備も、部屋の掃除も、仕事は全て完璧にやる。

 ただ、俺と関わらないだけ。

 あの廊下の皆と俺は、別に面白みも何ともない、ただの賃金で結ばれただけの関係だ。

 召使たちは皆、ティナにも近づこうとしない。

 それどころか、視界に入れようとすらしない。

 ただ単にヘビが怖いのか、それとも___。


 俺は首を振って陰鬱な考えをとっぱらった。

 いつの間にか止めていた手をまた動かす。

 と、背後でカサッという音がした。

「ティナッ!?」

 俺はガッと後ろを向く。

 と、そこには予想通り、白い体を優雅にうねらせる俺の愛しいペット(兼、家族)がいた。

「探したんだぞー」

 こいつには、特に毒はない。

 だから、俺のペットたちはケージはあるものの基本は放し飼いなのだ。

 そのせいか、頻繁に誰かが脱走するのだが。

 その中でも、ティナが脱走する回数は群を抜いている。


「やっぱちゃんとケージとか使った方がいいのか……?」

 それでも、ずっと一緒にいてくれた存在を縛りたくは、ない。

「お前くらいだよ、ずっと変わらないのは」

 返答があるはずもないのに、言葉をかけてしまう。

 もともと、それとなく遠巻きにはされていたし、そんな空気を薄々感じてもいた。

 だけど、「あの事件」のあと、それが顕著になった。 


 「専任」であるはずの召使は、ほとんど普通の召使に混じって俺の近くにはいない。

 許婚の娘ですら、俺と婚約を結びたくないみたいだ。

 俺もその許婚を恋愛的な意味で好いてはいないから、別にいいのだけど。

 結婚するなら、あの許婚のようにツンとすました人じゃなく、明るい人がいいと思う。

 少し変わっていて、でも底抜けに明るくてよく笑う人。

 そう、例えばあんな。

 つい最近知り合った町娘の顔を思い浮かべ、俺はため息をついた。 


「ノア様」

 俺が物思いにふけっていると、後ろから声をかけられた。

 振り向くと、そこにはよく見知った顔。

「ケイ」

 親しみを込めて、その名を呼ぶ。

 そうか、こいつも一緒にいてくれた存在だった。

 相変わらずつれないし、ティナの魅力は理解してくれないけれど。

 そんな俺を完璧にスルーし、ケイは淡々と言った。

「旦那様がお呼びですよ」

「あぁ、今行く」

 俺は返事をして、立ち上がった。

 ティナをするりと服の中に隠す。

 パン、と両手で頬をたたいて、気合を入れた。

 俺はケイの後に続いて歩き出す。

 しっかりしなければ。


 俺は、カロラインの中では「ヒトゴロシ」なのだから。

閲覧ありがとうございました。

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