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プロローグ「ごめん、好き」

最初に、この物語の主人公は、男だ。

郁斗と言う。読みはいくと。


そして、ヒロインは麻衣。

読みは、いらないと思うけど、まい。


恋愛系の話を書こうと思いましてね。


まぁそんな事はいいや。

では、本編をどうぞ。


ーー


中学校の卒業式が終わった。

それは、3月10日のことだった。


他の卒業生が集団での撮影や会話に明け暮れ、玄関前に屯っているのを知ったこっちゃないと、俺は誰もいない道路沿いを歩いていた。

いや、隣に一人いた。


その女が不意に自分に話しかける。


「卒業式、終わったねー」

「だね」


特に意味のない、他愛もない会話。

その女は麻衣という。俺の友達。


友達といっても、一般的な友達よりも、明らかに仲がいい。

こいつとは小学校からの友人だから、ある意味親友と言ってもいいんかね。


幼馴染とまではいかないけど、小5から中3までの付き合い。意外と長い。


中学校在学中の頃は、部活の終わる時間がよく同じだったから中学生になってもよく一緒に帰った。


親同士も仲がいいようで、うちのお母さんも春休み中は飲みに行くと意気揚々だった。


ん?春休み?


「…春休みって、どんくらいあるっけ」

「え、急に話題変えるね。…んー、1ヶ月ちょいじゃない?」

「なるほど」


あーそうだ思い出した。

高校の入学式は4月の15日。


そういやそんな事、担任が言ってたな。


まぁ、公立はそんなところだろう。

公立は。


不意に、麻衣の顔を見る。


そこには、麻衣が俺の顔を見つめながら、嫌な笑いをしていた。


「ま、郁斗は10日だったよね」

「だね、俺も公立行きゃあよかった」

「今更今更」


麻衣が宥めるような声色で俺に語りかける。

わしゃ子供か。

公共機関だって大人認定してくれてるのに。


話を戻そう。

俺は4月の10日に入学式がある。


何故なら俺は私立の、しかも県外の学校に行くからだ。


そこで寮暮らしをしながら勉強して生きていくのだ。

その学校の口コミを見たらほぼ社畜と書いてあった。幸先が不安である。


そして最大の壁、それはその学校に女子が少ないのである。

少ないというか、男女比が9:1って感じ。

これは大問題だ。


高校生の間に熱い青春を送らずに社会へ旅立つ可能性も見えてきた。


自分の口から知らぬ間にため息が漏れる。


「どうした県外野郎」

「…誰それ」

「もちろん、郁斗のこと」

「野郎ってなんだよ野郎って」


少しの間の後、誰もいない道路の中で思った事をそのまま口に出す。


「いや、俺の進学先、女子が少ないなと思って」

「それは、まぁ悲しいね。ごめんだけど私毎日県外に行けないよ」


麻衣のこの顔は、真面目な顔である。

こいつ本気で県外に毎日来るとこを考えてる。

慌てて言い直す。


「それは俺も勘弁だよ。通話だけでもいいからたまに連絡していい?」

「もちろん」

「おぉ、ありがと」


ドヤ顔をする麻衣。

その顔を無言でじーっと見つめる俺。


なんとなく、和む。


今更だが、俺は麻衣が好き。


なんか、ここ一年とんでもなく可愛い。

なんと例えればいいのかわかんないけど、めっちゃ可愛い。

全部可愛い。


この、サラサラの茶色がかった黒の髪も、変なとこ真面目なところも、なんだかんだ優しいところも、ちょっと下ネタが好きなところも、いや、最後のは怪しいが本当に全部好き。


三年の時同じクラスで、最後の席替えの時に席が隣になってめっちゃ嬉しかったし、その日の夜は一人でニヤニヤしてた。


でも、少し悲しかった。


もうこれ以上麻衣と関係を深められないからだ。


だって、俺は4月で県外に行くんだから。


県外に行くから、一緒に遊びに行けないし、一緒に他校の文化祭回ってみたり、麻衣が昔から好きだった水族館も、行けない。


そのことを考えるたび、ため息が出る。

本当に、本当に悔しい。


好きになるってこんなに難しい事なんだと初めて知った。


今も、この帰り道を歩く一歩一歩、麻衣と話す一言一言が辛い。


麻衣がそんな会話の途中で少し悲しそうな声で言う。


「…入学まで、残り短いからね」

「うん、本当にそうだね」


相槌をしてもう一回、静かにため息をしようとまた口を開く。


「…麻衣って、好きな人いる?」

「え」


不意に、その言葉は口から転げ落ちた。

自分の動きが固まる。


そして、その後すぐに自分の言った事を理解した。


まずい、そんなこと言うつもりなかったのに。

なんで1番言っちゃいけない言葉が出たんだ?


顔を見ると麻衣も、顔が固まっている。


弁解を、しなくちゃ。

嫌われたら後味が悪い。


「いぁ、いやそういう意味じゃなくて…」

「んー、いないかな。うん」


その声は、いつものトーンから少し外れていた。

これは、調子が悪い時の声だ。


嫌だ、最後に険悪な空気で別れたくない。

手を振り合いながら、笑顔でバイバイしたい。


「うん本当に」


もう一度、麻衣はそう言った。

そう言いながら麻衣は顔を方向転換し、自分に向き合う。


二人の動きが止まる。

なんだ、絶交でもすると言い出すのか?


もしそうされたら、全然引きこもれる。


「…本当に」


もう一回、さっきよりかなり小さい声でそう呟く麻衣。

顔を下に向けて俯けてる。


もう、麻衣が何をしたいのかがわかんなかった。


麻衣は、その頭を前に傾ける。

それが自分にこつんとぶつかった。


つむじの先が自分の首元あたりに当たる。

黒い髪が自分の制服のシャツに沿って流れる。


「ごめん、好き」


麻衣は震える声でそう呟く。

少しの間の後、郁斗は麻衣がなんでごめんと言ったか、なんとなくわかる。


「俺も」


同じく、そう呟く。

たった今ここに、消費期限残り一ヶ月の恋が生まれた。

作者が恋愛に耐性がないせいで話の進行が遅いという意味のわからない物語。

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