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3,軟禁王子1ー1

 

 初めての誕生日から時が経ち、6歳になった。私にはイーゼ含む3人の他にも最上位精霊がついた。しかも全属性。エイ兄さまもカイトともう1人最上位精霊を手に入れた。

 

 そうなると王家から狙われる。そして同じ年頃の王族はまだ1人残っている。

 エイ兄さまの友人で、病気がちだそうだがそれでも王家の人間であることに変わりはない。上4人の兄には全員婚約者がついているから変えようがない。

 そこで病気がちなせいで婚約者がいない第五王子だ。どうせ役に立たないなら私を王家に縛りつけろとかそういうのでしよ。あーやだやだ。



 実際、呼ばれてしまった。中身はもう20手前なのだがショタコンとか言われたら辛い。


 ついに来た。初の王族との対面。辺境からは遠いが王宮と辺境伯邸には転移陣がついているので一瞬。



「お初にお目にかかります。ガーナメント辺境伯長女のエリーゼ・ガーナメントと申します」

「エルシー・ウォルフランです」


 ほんとに敬語って難しい。この国の貴族はみんなこんな挨拶できるのか。凄くない?6歳って小1よ?尊敬しかない。


「エルシー殿下、体調の方問題ないのですか?」

 私が純粋に体を心配して声をかけると場の空気がピシリと凍った。あれ?もしかして禁句だった?そんなのわからないよ。ていうか心配の言葉が禁句てどういうことよ。



「ええ、今日は少し調子が良いんです。だから運動がてら、出てきたんですが迷惑でした?」

「いえ。迷惑だなんて思っていません。ありがとうございます」


 一国の王子に出迎えられるなんて日本で人生歩んでたらなかっただろうから。

「良かった。では、お手をどうぞ」

「は、はい」


 私は緊張からガチガチよ。なにこの子。本当にエイ兄さまの同い年?いやエイ兄さまも規格外だけどエルシー殿下も別の意味でスペック高くない?



 手を取ったとき、ピリッとした気がした。一応調べるか。帰ったら報告しよう。静電気とかではない。少しだが嫌な予感がする。


「こっち。ここに座って待っててください。今お茶でも淹れますので」

「あ、ありがとうございます」

 王子ってお茶淹れるもんなの?うちでも使用人が淹れるけど。



「お待たせしました。あまり甘くないの淹れたからお好みで砂糖追加して調整してください。あとこっちはお茶請けだから好きに食べてどうぞ」


 え、めっちゃいい子じゃん。私あまり甘いの好きじゃない。フルーツジュースとかチーズケーキくらいしか無理。初の誕生日で食べたやつは甘さ控えめだったけどその次の年からは甘いものをやんわりとお断りしていた。



「ありがとうございます」

 砂糖は入れずにまだ温かいお茶に手をつけた。柔らかい。そして優しい味がする。お茶請けに用意されたしょっぱい系のクッキーに手をつける。

「美味しい…」

「良かった。これ、僕が作ったんです」


 衝撃の事実。食べていたクッキーを喉に詰まらせそうになった。表情には出さなかったが。


「そうなのですね。私はあまり料理が得意でないのでこういうことできる方尊敬します」

 普通の令嬢料理しないし。前世も12歳までで一度も料理作ったことなかったし。一度料理した結果、キッチン立ち入り禁止だし。毎日駄々こねたらいけそうだけど。料理の勉強もっとしないと。


「双子の兄は婚約したて。上の3人は4歳以上離れているから12歳で入学する王立学園に通ってます。16で卒業なので長男は今年卒業しますが第一王子は忙しいですから。

 僕は体があまり強くなくて王位継承権を破棄させられているから暇ですることがなかなかないんですよ。3食分はなぜか使用人が作るって譲らなかったですがこういうことは黙認されてるんです」



 病弱、か。

「それにしても、貴女も災難でしたね。こんな役立たずな王子が婚約者だなんて。貴族の女の子はみんな王妃になりたいのでしょう?」


「いいえ全く。むしろやりたくないです。私には荷が重いです。実家にいたいので王妃になると縛られてしまうし放置される精霊も可哀想です。王家は自分勝手だとは思いますがエルシー殿下個人に恨みなどありませんので」


 バッサリ言い切るとエルシー殿下は苦笑した。

「凄いストレートに言いますね。まあ、事実だから仕方ないか。エリに面白い子だとは聞いていたけれど本当でした」



 面白い、か。兄よ。王子になんてことを言うのだ。頭を抱えたくなった。

「1歳で最上位精霊を呼び出したんだって聞きました。んで、今は全属性分。王宮でも話題になっていますよ」

 王宮で話題の6歳児とは。それにしてもどんな話題なのだろう。


「私も暇でしたので。遊びついでに友達になってもらいました」

「見たい」

 必殺、王子のおねだり。こういう人なんだな。かわよ。萌え。


「イーゼ、おいで」

『リーゼ、朝ぶりだね。あ、この子?忌々しい王家の婚約者って』

「そこまでは言ってない。無駄にギラギラしてる王宮に行きたくないって言っただけ」

 王子の前で忌々しいとか言わないでほしい。無駄にギラギラしてるも割と失礼だけど。


『どうも初めまして。風の最上位精霊のイーゼです』

 え、イーゼにしてはめっちゃ丁寧に挨拶するじゃん。遠回しだけど私の敵じゃないって言ったから?

「初めまして、イーゼ様。第五王子のエルシー・ウォルフランと申します」


 王子が様付けする相手って精霊にもなの?やば。まだまだいっぱいいるんだけど。

『エルシーね。それじゃ、ばいばーい』

 それだけ言うとイーゼは帰っていった。それをポカンとして見送るエルシー殿下。


「本当に友人なのですね。彼らを呼ぶには想像もできないくらいの魔力が必要だと思います。僕も欲しいけど今のこの状態なら無理そう。1人呼べたところで力尽きる未来が見えます」

 ありそう。この人なら倒れてもおかしくない。今は。



「潜在魔力量は少なくないので体調さえ良くなれば呼べないことはないですよ。病弱体質が治るまでは何もできませんけど」

「そう。やっぱり何をするにも病弱になったっていうのはついてくるんだね」


 悔しそうに唇を噛んで拳を握りしめるエルシー殿下。ん?待て。病弱になった?病弱体質って生まれつきじゃないのか。これは調査必須かもしれませんね。



 まずは父さまに婚約OKの返事を頼んで各領の経済状況、王位につけたい人間、各家庭の相関図を頭に叩き込む。

 1時間ほど話し、私は帰路についた。敬語やめてってついでに言っておいた。


今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(6歳)

・エルシー・ウォルフラン(9歳)

・イーゼ


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