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14,学園祭準備


 聖女誕生騒ぎも一部を除けば大体収束し、再び学園祭の準備が始まった。

 私がお団子お姉さんから聞いた案をそのまま出したらエイ兄さまが「面白いね」と言ってくれて、魔法実習棟での出し物は1日限定の執事喫茶となった。



 観賞用イケメン代表のリスト殿下も参加するそうだ。女子組は調理場担当なので私はマリー様含む女性生徒だけで打ち合わせをしていた。


 基本的には紅茶を出すのでその種類やお茶請けのバリエーション、それと話し合いが終わったら暇なので教室の装飾について全員で話し合った。

 机の配置とシフト割りなども決める。私の場合はこれにプラスして午後にピアノの披露もするのでシフトは前半に入れて後半は外してもらっている。




「じゃあ、今回の打ち合わせはここまで。はい、下校時間まで残り10分〜」


 イリア様がパンパンと手を叩いて話し合いの終わりを告げた。それに呼応するように魔法実習棟メンバーが声を掛け合って爆速で片付けを始める。


 この棟には平民も下位貴族もいるが、実力主義のこの空間では皆対等といった扱いになり、前世の高校の部活動に似た関係が構築されていく。

 違う点といえば、敬称が先輩でないこと。私達には様付け、リスト殿下やレイ様には殿下、と。その程度だ。



 こちら側も普通に会話するし、彼方からも話しかけてくれる。この学園で一番平和なのは魔法実習棟なのではないかと思うこともあったり。

 魔法が暴走して大爆発、なんてことも稀だし。もしそうなったとしても、対処する側もそれなりの知識があるので問題ない。




 大体決まったところである壁にぶつかった。衣装問題だ。

 貴族の令嬢令息は服を作る時、相当な下準備をして挑むが今回は全くのノープラン。


「マリー」

「はい、レイ様」


 ある日の帰り道、私、レイ様、マリー様、エルシー、エイ兄さまの5人で歩いている時、レイ様が徐に口を開いた。因みにイリア様はいつもイナ様と一緒だ。リスト殿下は護衛と共に王宮へ。 


「俺は王族だ」

「はい、存じておりますよ」

「一度しか着ない服や一度も着ていない服など腐るほどある。エルシーと2人でリメイクできるか」

「その手がありました!リメイクならお任せください!」



 マリー様の瞳は生き生きとしていた。趣味は裁縫と聞いていたがリメイクまでするとは。サイズ変更など難しいところも多いだろうに。

 エルシーは昔は刺繍ばかりだったらしいが私が和室に合わせてお団子お姉さん経由でゲットした和服を見て和裁を始めた。

 これもお団子お姉さん経由で。そこから洋裁に手を出し、人間が着る服の他にも人形に着せる服なども自作するようになっていった。



 洋裁上手な2人なら魔法実習棟の男子分くらいは楽にリメイクするだろう。一から作る訳でもないしレイ様は相当縦に長いのでそれを小さくするだけで良い。


 本番までには間に合うそうだ。いや、間に合わせるそうだ。

 私は裁縫に感しては昔エルシーに送ったハンドメイドの薔薇以外一切作ったことがないので戦力外として突っ立っていることにした。

 同じく戦力外となったエイ兄さまと共に。




 翌日からは授業が無くなり、学園祭の準備に充てられる時間が増えた。学園祭まで残り3週間。私は屋敷でピアノの練習をしつつ、魔法実習棟で出す料理について担当になった子達と一緒に試作を重ねた。



 定番のクッキーやケーキの他に、マドレーヌやチョコレートなどの物までたくさん作った。

 クッキーは甘いものとしょっぱいもの、ケーキはクリームの有無、マドレーヌとチョコレートは色や形で差を付けた。


〈ということで、試作品が全て完成しましたので、味見お願いします〉


 魔法実習棟の全員が集まっている時間を見計らって休憩時に出してみた。激甘な物からしょっぱいものまで多種多様な色とりどりのお菓子が細かい装飾の施されたテーブルに鎮座している。


「お〜やっぱり料理上手な子はお菓子も上手なんだね〜」



 イリア様が私達に言う。抹茶味のマドレーヌを頬張りながら。因みに抹茶もお団子お姉さん経由で。


 料理班は私以外に2人いるが、どちらも子爵以下の身分で、家で料理をすることも多かったらしい。


 1人は子爵家、もう1人は平民で実家はパン屋だそう。パンの他にもお菓子やケーキを売っているようで、デザインセンスはありまくりである。私のチートレシピにはノーマルデザインのものしか装備されていないので大いに助けられた。



 休みの日に一度ご馳走させてもらったが、数あるバリエーションの中で特にサクサクフワフワのクロワッサンが一番好きだった。しかも平民向けに展開している店舗なので値段もそこまで高くない。


 貴族が何を、と思うかもしれないが私は元日本人だ。金銭感覚はそのまま受け継がれている。


  全ての班で大体のことが決まり、私達は紅茶の飲み比べやお茶請けの合わせ方なども試しておすすめのメニューなんかも決めた。前世のお洒落なカフェ風のメニュー表も作った。


 これで料理班の発表は終わり。

 次は服飾班。



 レイ様やエイ兄さまが一瞬着ただけの服をマリー様とエルシーが仕立て直し、とても執事とは思えないような装飾が施された衣装が登場した。


 人によってワンポイント装飾が異なり、その辺りも2人のセンスが光っている。しかもそこで着た衣装は着た人の私物として持ち帰り可となったらしく、貰う側の人達は目をキラキラさせていた。


 魔法実習棟の生徒は例外を除けばほぼ全員が魔術師団に所属する。

 この国では最低でも1年、騎士団に所属すると実家の立場関係なく個人に騎士爵という特別な爵位を賜る。

 

 それと同じように魔術師団に1年所属すると魔術師爵という特別な爵位を貰え、どちらも領地を持たない爵位だがその2つの爵位を持つ中で団長などの幹部職に就いている人に関しては貴族パーティーに出席することも出てくる。



 恐らく今回のことは一種のモチベーションに繋がったのだろう。


 そして最後、配給班。

 執事服を着る人達。配給班の中にイリア様やレイ様、エイ兄さまなどの高位貴族が多くいる。


 そのため立ち方、言葉遣いについて練習していたそうだ。そのお陰か、どこかぎこちなかった彼らの動きはスムーズになり、上位貴族お墨付きのウエイターへと変貌を遂げた。始めは服に着られていた感じだったが今ではバッチリ着こなしている。



 学園祭まで残り1週間。大体のことは完璧に決まった。後は教室の装飾だけだ。とはいえ、ここは貴族も通う学園。基本内装以外に手は付けられない。最早豪華すぎて付ける気にならない。テーブルクロスに皆でちまちま刺繍を入れたり発注しておいた食器を磨いたり、などなど残りは雑用だ。



 そして今回、騎士科は私、イナ様、レイ様、リスト殿下が魔法実習棟に在籍しているため出し物はしないそうだ。

 まあ、美形代表の男3人がいなければ来ないだろうということで。ハリス様は魔法は得意だが魔法実習棟には在籍せず、騎士団に魔法騎士見習いとして入ったそうだ。


 因みに魔法騎士とはパトリック様やイヴァン様のように剣と魔法を組み合わせて戦う騎士のことだ。主に第二騎士団に多い。魔物と臨戦状態だった時には格部隊に第二騎士団から派遣されていたとのこと。


 ので、ハリス様は今回ずっと回る側。魔法実習棟にもお土産を持ってきてくれるそうだ。王都の人気店から出店も出るらしいのでそれのことだと思う。


 自分の手料理と、豪快な包丁捌きが素晴らしい辺境伯の料理人のものばかり食べていたので王都の物も少し楽しみにしている。


 ただ、エルシーだけは嫌そうな顔をしていた。未だ私以外の料理=毒入りといった恐怖は拭えていないそうで。今回のことも料理班に私がいなければ即刻却下していただろう。



 料理班に立候補したのはエルシーの執事服を見るためと言ってもいい。そんな過去の私にグッドマーク。


「リーゼ、余ったら僕の分も残しておいてね」 





 にっこり笑って言ったエルシーに萌えを感じながら学園祭準備最終日を迎えた。

今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(12歳)

・エリオット・ガーナメント(15歳)

・エルシー・ウォルフラン(15歳)

・レイ・ウォルフラン(15歳)

・マリー・エバネン(15歳)

・イナ・ガイアス(12歳)

・イリア・アルスフィールド(16歳)

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