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2,生まれて初めての誕生日パーティーです1


 あれから両親もこの部屋に来るようになった。兄と同じ美形だ。ということは私も美形なのでは?だって家族が美形だよ?一度美少女になってみたかったんだよね。生まれてから一度も鏡を見たことはないから未だに自分の顔だけは知らないがね。



 今日の夜は私の1歳の誕生日パーティーだ。ちなみに今は朝4時。


 もう離乳食も食べているが相変わらず食感に慣れない。前世で普段離乳食を食べていないからかもしれない。でも1人で歩くことができるようになったので大きな進歩だ。このままのペースで離乳食からも脱却しよう。




 さて、この世界においての紙は貴重品だ。21世紀の日本では普通に使っていたが、それでも昔は貴重とされていた。布か木に書いていたような気がする。勉強できなさすぎて歴史などほぼ覚えていないがこの辺ならまあ。ぐるりと部屋を見渡す。書けそうなものは近くにない。ベビーベッドの柵はがっちり固定されているし。さてどうしたものか。


 あ、あるじゃん布。可愛らしいピンク色の毛布だがどうしても好奇心に勝てなかった。あとはペンとかがあればと思ったところでハッとなる。魔法を使えば良い。

 風かな。指に傷を入れて血を出した。インクの代わりにしよう。丸を書いてその中に適当に魔法陣の中身を書く。これは単純に私が納得するかで選ぶ。間違えているかもしれないがものは試しだ。まずやろう。


 できた。血で書いたせいで禍々しいが邪竜とか出てこないよね?やめてよ。邪竜とか。ベッド壊れちゃうから。


 暫くすると毛布が淡く光り出した。金色の光だ。そして出てきたのは。




「キュイッ」

 真っ白な馬だった。羽が生えているしペガサスだろう。ぬいぐるみサイズにしては大きい。私1人なら乗れそうな大きさだ。とりあえずベッドから降りたい。あ、こういうのって名前つけるんだっけ。なんとなく私の名前を入れたい。


「あなたのなまえはイーゼ」

 どうしよう。リが言えない。

「キュイッ」


 返事しちゃったよ。もう名前イーゼでいいか。大して変な名前でもないし。可愛く返事をしたイーゼは私をベッドから降ろしてくれた。


 優しい子。乗せてくれたので私の今の体格なら乗れるようだ。無駄に広い部屋の中で灯りを点ける。パカパカと小さな音を立てて小さいイーゼは私を乗せて部屋をゆっくりと歩き回る。温もりが。やばい。めちゃくちゃ気持ちいい。鬣を優しく撫でるとくすぐったそうにキュッと鳴いた。この世界に来て初めての私の友達だ。




「失礼致します。おはようございます。お嬢さ、ま…?えっと…その馬?は何でしょうか」


 突然入ってきたメイドにそう問われる。不審物を見るような目だ。時計を見るともう6時半。この世界、みんな早起きだな。


 やばい。子供っぽい言葉?喋り方?がわからない。子供で死んだとはいえ、小学校卒業目前の12歳だ。1歳どうやって喋っていたかなど覚えていない。まず喋れていたのかすら覚えていない。



「イーゼです!」

 こうなったらもうゴリ押しだ。やってやんよ。

 イーゼをモフりながら主張する。この子は悪い子じゃないってね。


「し、しかしお嬢様…」

「イーゼはおともだちなの!」

 秘技、駄々こね。大声でイーゼはお友達だと主張する。扉は開いている。恐らく外には丸聞こえだ。


「どうしたんだ?」

 赤ちゃんのキンキン声が聞こえたのだろう。父さまがひょっこりと顔を出した。腕には母さまを抱えている。お姫様抱っこというものだろうな。4歳の兄さまもてちてちとこちらに来た。



「エリーゼ、どうしたんだい?その子。名前はある?いつ召喚したの?」

 この子、恐ろしい。1歳の赤ちゃんに向かって質問攻めだ。そして召喚したこともバレている。


「イーゼです!わたしのおともだちです!」

「イーゼ?ああ、リーゼって付けたかったんだね。あ、そうだ。ねえ、俺がリーゼって呼んでもいい?」

 どうぞどうぞお好きなように。


「あい!エイにいさま!」

 エイじゃない!エリだ!あいじゃない!はいだ!と思っても無理です。1歳児の滑舌舐めてたかも。あ行しか言えないの?ってくらい壊滅的だ。


「エイ、ね。リーゼ、可愛い」

 破壊的に可愛い。小6女子を魅了する4歳児とは。何者だ。


 そのままエイ兄さまは(エイ兄さまは公認になりました)ベビーベッドまで歩くと絶句した。



「リーゼ、毛布に付いてるこれ、血だよね。この魔法陣も、一部の人しか知らない精霊召喚の図だ。こんなの、どこで知ったの?」

 適当です!とは言えない雰囲気。両親もメイドも不思議そうにこちらを見ている。

「じぶんでかんがえました」

「へぇ」


 エイ兄さまはニヤリと笑い、両親とメイドは硬直。


「ねえねえ、イーゼ、君さ、風の最上位精霊だよね。それなら喋ることも人型になるのも簡単だよね」

 我が兄よ。精霊を煽るな。でも最上位精霊とか聞いてない。


『全く、こうすればいいんでしょ。4歳児のくせに知識量ありすぎじゃない?なんで魔法陣の用途まで覚えてるのさ。妹が妹なら兄も兄だな』


「本で読んだ。あの魔法陣は下位の精霊も呼び出せる。なぜ最上位精霊が呼びかけに応じたのだ。しかも紙や石の代わりに使ったのは布団だ。条件的にも厳しそうだが」


 おー。めっちゃ喧嘩腰。

『リーゼのことが気に入ったからね。精霊王に気に入った子に加護を与えるといいよって言われたしこの子面白くて気に入ったから加護あげた』



 面白い。私とは無縁そうな単語だが。そしてイーゼはめちゃくちゃ美少年。バカデカぬいぐるみサイズだったこともあり、エイ兄さまと背丈はそう変わらない。


「そう。さすが俺の妹だね。でも、1つ言いたいことがあるんだけど」

 エイ兄さまの笑顔が黒くなる。

「この部屋には紙がないね。だから布団で代用した。インクもないね。何でインク待てなかった?言ってくれたら持ってくるのに」


 怖!?美形って恐ろしい…!

『オレはリーゼから血いっぱい貰ったけど特に問題ないみたいだから魔法で治したんだね』



 ちょっとそれフォローになってないんだけど!言葉を失っていた人達がドン引きしてる気がする。そりゃそう。普通の1歳児は自分の血で精霊の召喚なんてしない。


「リーゼ、精霊の召喚に必要な血の量は一滴でいいんだよ。魔法陣全部血で書いたらそりゃあ出てくる精霊もこうなるよ」


 う…だってインクないんだもん。それにインク持ってきてくれるなんて知らなかったんだもん。そんなこと言うなら今紙とインクを下さいな。しかも注意するところそこなの?



「エリオット、注意すべきは1歳の子供が自分の血を使って1人で精霊を召喚したところよ。消費する魔力も多いから具合悪くなることもあるのだし誰か一緒でないといけないのよ」


 え。そうなの。初めて聞いたんだけど。ていうか具合悪くなるとか先に言って欲しいんだけど。


「誰か一緒にいたら俺も召喚できますか」

『魔力量による。リーゼは生まれてすぐにそのご婦人を助けるために最大火力で魔力を使ったから魔力量が多い。5歳までに数回、最大火力で魔力を使えば魔力量はすぐ増えるよ』







「あ…」

今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(1歳)

・エリオット・ガーナメント(4歳)

・両親

・イーゼ(風の上位精霊)

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