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11,夏休みに入りました1


 学園は前世の学校と同じように、定期テストがある。座学と、魔法だ。その合計点が個人の点数になる。が、学力と違い、魔力量を増やすのは難しい。


 それこそ、私達のように上位魔法を昔から使ってたとか元々の力量がないと無理だろう。そこでテスト内容は魔力の高さ毎に難易度が変わっている。

 1番厳しいのは言わずもがな、魔法実習棟に在籍している生徒だ。正確性や持続性が求められてくる。



 それを全員が余裕でクリアしてくる辺り魔法実習棟って凄いんだなぁと関心する。そこに私も入るのか。


 もっともっと頑張らなきゃ。座学はあんまし得意じゃないけどつまらないわけじゃない。

 確かに領民達の生活が全て自分の肩にのしかかってくるという重圧はある。ありすぎるくらいある。が、私はそれを嫌とは思わない。父さまは元Sランク冒険者で爵位を引き継ぐ際に冒険者を辞めている。



 私に爵位を継承したら父さまはまた冒険者として生きるつもりらしい。そして私が成人してすぐくらいにはもう譲りたい、と。つまり18歳。日本だとバチバチの高校生だね。あと8年。気合い入れ直さないと。



 それはさておき、エイ兄さま達は今日から夏休みに入った。


 王位継承権のないエルシーは夏休み中よくここに来てくれる。そしてエイ兄さまは王都貴族を前侯爵に代わり、ガーナメント男爵として継ぐことがほぼ確定しているので王都にいる。

 一応降爵済みではあるので後は今後の功績次第だ。多忙ではあるが夏祭りは一緒に回れるそうだ。



 そして私は今エルシーと一緒に春祭りに行ったときに見つけた和菓子屋と定期契約をして卸してもらった三色団子を上機嫌で食べている。エルシーも気に入ったようだ。ただ1つの問題点を挙げるなら、西洋装飾に団子が合わないことだろうか。



「お嬢様」

 団子片手に緑茶を啜っているとアリアがやって来た。


「ん?」

「王太子殿下から手紙を預かっています」

「手紙?うん。ありがとう」

 内容をザックリ説明するとこうだ。



『予定ギチギチに詰め込んで何とか1日だけ休みをもぎ取ったから皆で一緒に回ろう。弟達にはもう伝えてあるから』


「シルス兄さん…」

「仮に変装してたとしても美形が合わせて何人よ。シルス様、パトリック様、アクア様、アンナ様、マリー様、レイ様、エイ兄さま、エルシー。少なくとも8人はいるじゃない」


「自分も美形ということを十分に理解して欲しいものだよ」


 そしたら9人。増えてんじゃん。

「いっそのこと全員がひょっとこのお面でも着けたら少しは目立たないのでは…?」



「そのひょっとこってのがよくわからないんだけど多分トンチキ集団になって逆に目立つよ。レイとかパトリック兄さんみたいに飛び抜けて背が高い人もいるし余計に」

「だよね〜」



 これは重大な案件だ。日本で言えば世界的に知られている芸能人が集団でその辺を歩いているようなものなんだから。しかも芸能人であれば知らない人もいるが王太子の顔を知らない者がいるわけない。


 精々赤子と他国の庶民だろう。下位貴族ならともかく上位貴族と王族は他国の有名所は抑えているからね。私も叩き込んだよ。めっちゃ大変だった。各国の上位貴族は日本の歴代総理より多いんだからそりゃ大変だわ。



「イヴァン様も来るのかなぁ」

 パトリック様が来るなら一緒に来るんかな。仕事とか忙しそうだけど。


「イヴァンってパトリック兄さんと同じ副団長やってる人だよね。特に言われてないけど本当にあの人がパトリック兄さんの片想い相手なの?僕にはわからなかったんだけど」


「ああうん。パトリック様の目が全然違って見えるからね。私の父さまも母さまによくああいった目をするからわかるんだ」


「そうだったんだね。僕はほとんど親に会わないからなぁ」

 そう言ったエルシーの瞳には何も映っていなかった。苦しいも、寂しいも、何も。ただ淡々と事実だけを述べた。



「リーゼは…リーゼは辺境伯夫妻のような家庭を築きたいと思ってる?」

「当然。折角家族なんだから幸せにならないとつまらないでしょ?1人でいる時間より家族でいる時間の方が長いんだから。それに父さまが冒険者に戻れば母さまも父さまも別館に住むみたいだしそういうのも含めて仲が良いに越したことはないよ」


「僕と兄組みたいな関係ってこと?」

「んー恋愛感情があるかないかでも変わると思うよ。兄弟同士だったら知らなかった感情まで知ることになるし良いことばかりでもないかも」



 私も最近汚れた感情を向けるようになっちゃったからなぁ。平民落ちしても楽しそうとか思ってたあの時から好きだったんだろうな。嫉妬に憎悪、独占欲。知らない方が幸せだったかもしれない。

「どうしたの?」



「いや、今日もエルシーが好きだなぁと思っただけ…………あ」



 誤魔化そうと思ったのがいけなかったのか、自ら墓穴を掘った。

 思えば私は一度もエルシーに好きだと言っていない。エルシーからも言われていない。可愛いとはよく言われるけど。これドン引きされてたらどうすんのよ!そんなことされたら絶対2ヶ月は引きずる。


「あ…ありがとう……じゃなくて!僕も好き」

 私の顔は沸騰してしまうのではないかと思うほど熱くなり、好きだとつげたエルシーの顔もよく熟れた林檎のように赤かった。


 気付いたらアリアは居なくなっていた。下がるように言った訳ではなかったが下がってくれて良かった。


 まあ気まずくなってそそくさと退散したという可能性も否めないが。




今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(10歳)

・エルシー・ウォルフラン(13歳)

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