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8,兄と王子達は体育祭で活躍したようです(午後の部)



 昼食を食べて午後2時半頃、午後の部が開始。

 午後の部1発目は学年種目。走るらしい。


 貴族のご令嬢は走り回るなんてはしたないと、ほぼ全員辞退。女性で出るのはマリー様のみのようだ。

 彼女意外とアクティブ系なのか。それともレイ様の影響か。前者かな。アクティブ婚約者がいても自分も混ざろうと思う令嬢など例外を除けばいないだろう。



 そして辞退者続出の体育祭をするってそれ意味あるのかと思ったりもするが人気令息が出るということもあり開催だけは毎年されているのだとか。


 エルシーはエイ兄さまとぶつかり、エイ兄さまの次はレイ様。そしてマリー様。エルシーの後は子爵家、男爵家と続き他はほとんど平民だ。体力としては貴族より平民の方があるだろう。だが相手が悪すぎた。


 エルシーとエイ兄さまはほぼ互角。が、僅かにエイ兄さまの方が早い。その差が完全に開いたのはレイ様にバトンが渡ってからだった。早い。早すぎる。そしてマリー様も早かった。勝てるわけがない。


 でも、負けはしたがエルシーのチームはさして悔しがることもなく身分のわりに良い経験ができたと喜んでいた。

 そして勝ったエイ兄さま達に惜しみない声援を送る令嬢は侮蔑の視線をエルシーに向ける。


「ねえ…私、もう我慢できない」


 ガタンと音を鳴らして椅子から立つがそれは両隣りにいたアクア様とパトリック様に止められてしまった。両側から痛いくらいに腕を掴まれる。


「人を傷付けるためにその力を使うな」

「怒る気持ちもわかるが座れ」

「そうそう、一度深呼吸して冷静になって」


 王族3人に抑え込まれたらもう何もできない。

「もう平気?」

 いつもの戯けた口調ではない、真剣なシルス様。

 私がそれに黙って頷くとその場の緊張がフッと解けた。


「ここは兄として動いてあげなきゃね」

「シルスが王位に就く頃には上位貴族はほとんどいないかもしれないな」

「それどころか貴族の数自体減ることもあり得る」

「王族を怒らせたらどうなるか、教えてあげないと、優越感に浸っている馬鹿貴族が可哀想だもん。当然だね」


「私もお手伝いさせてください」

 ああ、そういうことか。私が物理的に消すより自分達がバカにしていた相手の身分かそれより下に落とすってことか。それで社会的に殺すってか。



「目に入れても痛くないほど可愛がっている弟を貶されたのだ。それは俺達を貶めているのと同じだ。それ相応の対応はしよう」


「悪いのが本人だけでその家族は何も悪くなかったらとんだとばっちりですが」



 王子の怒りが凄すぎて逆に冷静になれた。そうだ。幼い弟や妹など何の関係もない兄弟まで路頭に迷わせることになる可能性もある。


「馬鹿貴族を平民か下位貴族に落とした後領地を分ける。その領土を受け取った者が子供を引き取れば良い。養子にせずとも引き取る方法はいくらでもあるだろ。それが俺達ができる唯一の情けだ。それか修道院行きか」


「何かしらの才能があるかもしれないし若くて無実の子供だけは一応取っておこうか」


 私達は喧嘩を売られたら買う質だと悪人顔でニヤリと笑った。アンナ様を除き。



 作戦会議をしていた私達は2種目目以降を見ることができなかったがこれからの予定を立てる上で大切なことなんだ。致し方ない。


 見たのは結果発表だけだ。実力主義の学園では身分で上下はつけられない。が、上位貴族が優勝するのが通例だ。出場するのは男子が多い上にいいとこの令息は優秀な教師を付けているから当然。


 今回もだった。そのせいなのか、結果発表の時のシルス様は見たことないくらいつまらなそうだった。



「結果発表ほどつまらないものはないな」

 帰ろ。王宮の転移陣まで行かないと帰れないんだ。さっさと出よ。

「エリーゼちゃん帰るの?」

「はい。結果発表とか言ってもどうせ結果なんて決まりきっていますから」


「そっか。じゃあアクア、送ってあげて。僕は最後までいるから」

 自分が送ると言い出さないあたり、アンナ様に対して誠実な人だと思う。そして好きな人がいるパトリック様に言わないのも。



「ああ。エリーゼ、行くぞ」

「はい、ありがとうございます」

 とりあえずアクア様の姿隠しの魔道具で乗り切り、王宮からの派遣馬車に乗った。派遣馬車は転移陣行きで前世で言うバスだ。


「それじゃあ、気をつけて」

「はい、今日はありがとうございました」


 転移陣の近くには青い巨大ビー玉のようなものが設置されている。そこに手を翳して行き先を告げると各家の地下に設置されている転移陣に行ける。



「ガーナメント辺境伯当主屋敷まで」


 ブォンという音と共に、屋敷の地下に移動した。

 エルシーもエイ兄さまも、私の大切な人だ。傷付けたりする奴は容赦しない。絶対に。



今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(10歳)

・エリオット・ガーナメント(13歳)

・エルシー・ウォルフラン(13歳)

・レイ・ウォルフラン(13歳)

・パトリック・ウォルフラン(18歳)

・アクア・ウォルフラン(17歳)

・シルス・ウォルフラン(20歳)

・アンナ・ガイアス(20歳)

・マリー・エバネン(13歳)

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