勝敗は?
5億4000万年前、生物は海の中で目覚ましい変化をとげていた。
生物が育つ条件としてオゾン層が作られ、太陽から降り注ぐ紫外線を防ぎ、徐々に新たな種が生まれ爆発的な進化を遂げていった
原始人は少しずつ、より便利にしていくことで道具を考えた。それにつれて、脳の発達や身体の変化や周りをとりまく環境も変わっていった。
狩猟生活から定住生活へと変わり。村ができやがて町になり国が生まれていった。
100以上の国が強力な武器や有能な軍師がいる国に、日々淘汰され片手ぐらいの数に減った時、各々の国の王が1番になるのを意識しつつ、誰につくのが得策なのかしのぎを削って戦いぬいた末、数が減り2つの国が残った。
べレムという、何億光年も離れた星でも同じことがおこっていた。
べレムでは、戦いの末キラとアサという国がまさに一騎打ちというところにきていた。
外見は、まるで人間とはかけ離れている。
キラの民は、成人でも身長1mたらずで全体的に緑色である。見た目は人間型で光沢がある。対するアサの民も、身長1mたらずでほぼ外見は似ている。異にするとしたら身体全体が赤色で光沢がある。
戦闘準備に入ろうとしたとき、アサの頭の中にキラの王である緑色の顔が浮かび声が同時に聞こえてくる。べレムでは、上級になるにつれてテレパシーが強くなる。その力で、脳を破壊することもできるのだ。そのことを警戒してテレパシーの壁を、上級近衛兵数人で結界を張ったはず。
「馬鹿な」とっさに、アサの王に緊張がはしる。(警戒しなくてもよい。結論だけ言おう。
このまま、戦を続けて無駄な血を流し1つの国に統合してなんの得がある?我は1つにならずとも2つの国で、友好的にいられることをずっと考えてきた。今まで通りの領地で互いに足らぬものは、補い合えばよかろう。)(えっ、このタイミングでいうことか?)
(ずっと今まで、我こそがこの星の大陸の王と願ってはいた。が、しかしそれでいいのか?どっちが、負けても敗北を引きずって新しい王に従うことになる。もう、辞めないか? 私は疲れた。)
(この言葉に、突き動かされないことはなかった。いや、しかし奴らの企みだとしたら。)(今、テレパシーの結界を解いておる。一切の企みなどない。)
それから、しばらく両国の王たちの頭の中で30分もの会話と映像が飛び交った。
それが、終わったのちアサとキラの同盟が結ばれた。
アサ国は、はじめは警戒をしつつ暮らしていたが、それは杞憂だとさとる。
アサの領土は山々に囲まれていた。キラの領土は、地球の湖に似た領土の近くだった。そして、その土地で取れる産物を交換して交流は深まり、ますます互いの絆は結ばれた。
40年間-アサとキラは、とても良い王であり親友でもあった。ほぼ時を同じくして天国に召された。
その王の後を継ぐ子の世代になった時、それは、ほんの些細なきっかけから始まった。アサとキラの民が、どちらが勝っているのか優秀かという自慢話から。
「お前たち緑の王は、その昔結界払いをし白旗を上げたそうじゃないか。我らが王は、それを同盟国としてあつかい共にすごしてきたんだ。わが王の寛大さに感謝しろ」
「なんだと」微力のテレパシーだったが、少しの傷口から赤い液体がにじみ出た。小さな喧嘩は大きな戦いを生み出した。
この40年の戦いのない歴史が嘘のように憎しみの渦がぶつかり合った。その渦は、周りのものを巻き込み蹴散らした。
アサ国とキラ国が、再び戦うことになったのも時間の問題だった。そして、何万といた民が次々と減っていった。気がつくと、周りの民はいなくなっていた。アサとキラの血をひくミシラ王とゴイ王の二人。二人のすざまじいテレパシーによって民は滅びた。それでも、お互いは相手を滅ぼすことにしか目を向けていなかった
ある日空が、稲光のように鋭い光の矢が放たれたように裂かれた。と、同時に天を真っ二つに裂くようなすごい爆音と、青や赤の濃い色を増した光の放電現象。人間の目には、ここまでが限度だった。
やっと、ここまで来た。
数々の恒星をワープして、何億光年も離れたこの星にきた。空中では二基の円盤が、死闘を繰り返していた。一基には、ミシラが乗っていた。もう一基には、ゴイが乗っていた。二基の円盤のどちらも一部分破損し、最後の燃料でこの地球にたどり着いた。いや。正確には二基がぶつかりあって落下していく。そして、それがミシラとゴイの最後でもあった。
◇◇◇〇〇〇
「きゃあ、怖い。稲妻よ。信二カーテンを閉めて。きゃあ」稲妻の爆音にもおとらないような、つんざくような鏡花の声に立ち上がってカーテンを閉める。その時緑と赤のボロボロの人の形をした煙? のようなものを見たような気がした。でもそのことを新妻の鏡花には言わないことにした。怖がりだからだ。
しばらくして、外の様子が落ち着いた頃。
「きゃあ-」と鏡花の声に振り返ると、口をパクパクさせながら
指を指した方向を見る。
最近飼った、二匹の文鳥のつがいに指は向けられていた。
アサとキラが、どうしたというのか。
(ああっ)
真っ白の鳥のはずが、真っ赤と緑の色にそれぞれ変わっていた。
その日を境に、仲のよかった2匹がいつもつつきあったり羽で攻撃をしたりと
性格がまるで変わってしまったようだ。