第67回 AIの発展を肌で感じていることについて、悶々とした思いを呟いてみた。
まえがきは割愛させていただきます。
本編が短いので、本編のみでお楽しみ下さい。
●’26/6/28(日)
本業が相変わらず忙しいが、実は今勤めている会社は労働時間に関して結構ホワイトなので、それなりに私生活も充実している。
ちょっと前に海外でも”閃光のハサウェイ”が上映となり、これも見たので、また機会があれば、それにも触れたいと思う。
ところで、今回のアップ、実はかなり久しぶりである。
最近、この”かってきままに”をアップしていないのにはちょっとした訳がある。
題名にも書いているが、AIの発展である。
というのも、かなり急速なAI発展に、こんなコラムに需要があるのかなと思ったりすることが多々あるからである。
聞きたいこと、知りたいことがあれば、今やGoogle先生よりもChatGPTに聞く人が多いのではないかと思う。
私が今まで書いた内容もChatGPTやClaudeに聞けばある程度出てくるしなと思ったりするのだ。(AIを使った際はファクトチェックはお忘れなく!)
まあ、ただ、これをサボりたいからそう思っているのか?とも思うところもある。(笑)
何度か書いているので、ご存じかもしれないが、私は海外でエンジニアとして働いている。
プログラマとして仕事をしているのだが、実際AIにはかなり助けられている。
AI使用と言っても、まだまだ実際に全プロジェクトに一気で活用するには無理がある。
プロンプトをかなり明確に書かないとうまく整合が取れないためである。
何度か同じ関数に変更をお願いする際、変数が突然違う名前になっていたり、以前作らせたものに変更を加えるとある機能が先祖がえりを起こしていたり、という具合である。
しかも自分で組んだプログラムと違ってデバッグが大変であったりもする。
そのため、今は細々とした関数制作に活用するのみではあるが、それでも従来よりはるかに効率的にプログラムが作れるようになってきている。
また、6月中旬にロサンゼルスに行ってきたが、米国の大都市では下の写真のようなWaymoという自律運転車がタクシーとして街中をブイブイと走っている。
街で少し探すだけですぐに発見できるほど台数も多い。(推定ではロサンゼルスだけで700台と言われているが、正確な台数は公表されていない。もっといそうな気がした。)
決済はもちろん自動、呼び出し前に価格も決定するため、ボラれることもない。
しかも、乗車すると分かるが非常に安全である。
プログラマとしてはどのように処理されているのかを見ていたが、かなり洗練されていて驚いた。
周囲の物体センシングもかなり優秀で、人は当然、小さいペットや後述する配達用自動運転車もきっちり認識できている。
当たり前かもだが、歩行者などが車に隠れた後の予測もしているようだった。
このようなセンシングの結果は車内のディスプレイに表示されていて、周囲とそれを見比べるだけでも楽しかった。
また、それほど広くない通りで中央線もなく、両脇に路上駐車している車があり、対向車が来て、さらに路上駐車の隙間から歩行者が突然飛び出してくるという状況にも遭遇した。
だが、その状況でも運転に馴れた人間が落ち着いて対応するように運転していた。
これって人間に比べて事故率はどのくらいなんだろうか?という当然の疑問が浮かぶ。
調べてみるとWaymo自身のホームページWaymo.comに人間の運転する自動車との事故比率が表示されており、以下の画像で示された数字である。
重大事故、エアバッグ作動事故、軽傷事故ともに80~95%ほど減少している。対人事故も同様に軒並み人間対比で減少している。
ここには載せていないが、Waymoにおける一定走行距離における事故件数は以下の通りである。
重大事故 = 0.00件/100万マイル
エアバッグ作動事故 = 0.27件/100万マイル
軽傷事故 = 0.91件/100万マイル
Waymo.comで表示されている事故件数に関しては、実際の米国National Highway Traffic Safety Administrationへ報告された事故統計をもとに算出されているため、確度は高いと考える。
反対に人間は事故時に報告しないことも考えられることから減少率の数字はこれよりも大きい可能性がある、つまり人間よりももっと事故率が低い可能性があると考える。(特に軽傷事故。)
しかも、ロサンゼルスでは前述した宅配ロボット(箱形のAutomated Guided Vehicle(AGV))が歩道をかなり通っている。
段差を回避したり、歩行者を回避したりと、実はこちらの方が車道よりも難しそうであるが、これも毎日相当数稼働しているのを見かけた。
いたずらされて止まっていることもあるが、これも大都市ではすでに実用段階に来ているようである。
先日も米国テキサス州において、自動運転トラックが230マイル(約370km)の走行に成功したというニュースが流れていた。
もう数年後にはタクシー運転手やトラック運転手は間違いなく職を奪われるのではないだろうかと感じた。
だが、考えてみると数年前にはこれほどまでには普及されていなかった。そのことを踏まえるとこの数年で一気に進歩したと感じる。
その点はChatGPTを代表とする大規模言語モデル(LLM)AIを通して皆さんも感じていることではないだろうか。
この発展を見て題名にも書いている悶々とした思いが沸き上がる。
その思いとは、急に職を追われるような状況になったりしないだろうか。という点だ。
たぶんこれはみんなが不安に思っていることではないだろうか。
現在のところ、当初の予想に反して、ブルーワーカーよりもホワイトワーカーが先に職を奪われるという予想がある。
開発部門や企画部門などに良くいる”パワーポイント職人”は、会社自体が時代に取り残されているか、あるいは上司がダメすぎて全くAIを使わない者でない限り、真っ先に淘汰されるであろう。
OpenAIがChatGPTを発表する前、OpenAIのCEOサム・アルトマンは以下のように予想していた。
AIが完成すれば肉体労働はAIに取って替わられ、頭脳労働だけが残るだろう。と。
だが、最近サム・アルトマンはその予想が間違っていたとインタビューに答えている。そして、そのインタビューでは以前の予想とは逆のことを言っている。
頭脳労働がAIに取って替わられ、肉体労働が残るだろう。と。
しかし、最近のフィジカルAI、つまりロボット+AIの発展を目にすると、私はやはり頭脳労働が残ると考えている。
その思いは上記のタクシーを見てより強いものとなった。
私がなぜ頭脳労働が残ると考えているか。
それは最近のAIの発展の中で1つ変わらない点があることを感じるからだ。
その点とは、”AIにはまだ問題提議する機能がない”ことである。
AIはこちらから問題を提示すれば、それに対する答えを出す。
その精度や知識レベルにおいて、かなりの発展を見せている。
だが、データを渡しても問題提議することはない。
事務作業を処理することは可能だが、その業務を何のためにやるか意味は理解してない。
この点は以前このコラムにて、私がAIとAGIの違いと書いたところである。
ここには大きな隔たりがあり、そこにはまだ5~10年くらいかかるのではないかと思っているし、そこを解決したAIが生まれた時は人はなにもしなくても良くなる日が来るはずである。
これらのことから、AIをどんな目的に使うかという意志を明確に持つ頭脳労働者が残ると私は考える。
パワーポイント職人ではなく、本当の意味で、どんな商品が必要となるか、どんな開発が必要となるかを見いだせる企画者、開発者が必要となるのだろう。
これは極端な例えだが、以前のガラケーが一世風靡していた時代であれば、AIは性能の良いガラケーは産み出せただろうが、スマホは産み出せなかっただろう。
水が100℃を越えれば沸騰することは分かっていても蒸気機関は発明できなかっただろう。
開発業務をされている方であれば、体験したことがあると思うが、開発の中にはスマホや蒸気機関、ソニーの半導体ラジオや本田のバイクのような新たなパラダイムシフトを作るほどの開発ではないが、その分野として明確に新しい分岐点となるアイテムが産み出される事が意外とある。
それらがAIで産み出せるかと言うと、現在使用している感覚からは”No”と考える。
それを産み出せる人がまだ必要だと考えている。
これは私がそう思い込みたいだけかもしれないが。(笑)
また、悶々としている点の1つに、こういうAIの潮流に全然日本が乗れていない気がしていて、この点も非常に気になる点である。
日本は半導体設備、材料でシェアが高いとは言いつつも、徐々にジリ貧状態。出荷数、出荷量で言うと昨年は一昨年の1割減となっている。
これほど生産が盛んな状態においてもだ。
海外では代替技術が少しずつ作られているためとの分析も出てきている。
投資額としても今フィーバー中のキオクシアは3年で1.4兆円。ラピダスは数1000億円/年。
それに比べて、TSMCは今年だけで約8兆円投資。
韓国サムスン、SKハイニクスは昨年だけで2社合わせて約9兆円の投資。
海外の会社はそれだけ儲けているからと思うかもしれないが、日本の大企業の預貯金額は去年だけで20兆円増加しており、上場企業だけで預金額が約110兆円ある。
余力はあるはずだが、足りていないのは日本企業経営陣の本気度だと感じるのは私だけであろうか。
政治家もAI、半導体と言葉は並べるものの本気で考えているのだろうか。
この辺りには本当に強く悶々とした思いを抱いてしまう。
熱くなってしまいそうなので、ひとまずこの辺りで抑えておこうと思う。(笑)
AI普及が促された社会、これからどうなっていくのか皆さんの考えも教えていただけると幸いである。
<あとがき>
今回のコラムの中に書いた”パワーポイント職人”について、少々説明を付け加えさせていただきます。
開発部署において、他人が行った開発を何食わぬ顔をして自分の成果資料に加え、上司が気に入るような見映えだけ良い資料をガンガン作る課員のことを私の周囲の人はそう呼んでいます。恐ろしいことに仕事を全く理解していない上司によってはその人に高い評価を付けることもしばしば。
それとはまた別に”手配師”と呼ばれる人もいます。こちらは要求仕様だけをA4用紙1枚くらいに簡単にまとめて、開発方向性や方法論は何も書かず、全てを業者にやらせる人。
AI導入の際には、ちゃんとこういう人たちを淘汰して、本当の技術者に高い給与を払うべきですね。




