第61回 レモン彗星地球最接近記念に途方もない宇宙の大きさについて考えると、なんだかいろんなことがどうでも良い感じもするけど、明日も頑張ろうと思えたりするから面白い!を書いてみた。
まえがきは割愛させていただきます。
本編のみでお楽しみください。
●’25/10/28(火)
10月22日、レモン彗星が地球に最接近した。
レモン彗星とは、2025年1月に発見された彗星であり、軌道計算によると太陽を周回する公転周期は1000年以上と判明している彗星である。
名前はレモンの形だから、ではなく、アメリカのレモン天文台で発見された彗星であるためである。
夕方の空、10月の後半では西側に、11月の上旬には南西、約20°の低い位置に見えるはずなのだが、私の住む町は明るすぎて全然見ることができそうにない。
休みに郊外に出て見ようとしたが、生憎の曇り空。
どうやら次の1100年後まで生きておくしかなさそうである。(笑)
レモン彗星の速度は約66km/s。
現在人類が作った最速の機体はヴォイジャー1号で、それでも約17km/s。
他の彗星であっても約30km/sなので、いかにレモン彗星が速いか分かると思う。
その彗星の速度で1000年以上かけて周回する。
逆に言うと、それほどまでに遠い距離まで太陽の引力が影響しているということだ。
そんな広い太陽系。
ところが、その太陽ですら、辺境の地であると分かってる天の川銀河。
そして、それ以上に遥かに広い空間。宇宙。
宇宙の年齢は138億年と言われているが、人類が観測可能な宇宙の範囲は約930億光年と言われている。
えっ?138億歳なんだから138億光年じゃないの?と思われた方。是非これを最後まで読んでみてほしい。(笑)
ところで人はどこまで遠くに到達しているのか?
それはヴォイジャーが2025年の現在まで48年かけて移動した距離であり、約1光日。光で1日かかる距離。
それを考えるといかに宇宙が計り知れないほどデカイか。
感じられるのではないだろうか。
で、不思議なのが、先ほども述べたが、なぜ138億歳の宇宙で観測可能な範囲が約930億光年なの?である。
(ご存じかもしれないが、)実は宇宙は光の速度よりも速く拡がっている。
拡がるといっても、端に空間が継ぎ足されているわけではない。今ある空間が拡張されているのだ。
それで私が毎年少しずつ横に伸びているのかと思ったが、そうではないらしい。(笑)
では、なぜ宇宙が引き伸ばされていることが分かるのか?
実はそれは天文学者が宇宙に浮かぶ銀河の距離を図っている時に発見されたのである。
比較的近い位置の銀河の距離は地球が太陽の周囲を回ることを利用して、三角測量で測定を行っている。
その結果、天文学者は、地球に近い位置の銀河は青色に光っており、多い位置の銀河は赤色に光っていることを発見した。
話を少し変えるが、銀河から発せられる最も明るい光は何であろうか?
それは白色矮星による超新星爆発の光である。
白色矮星には上限質量があり、その質量を超えた時、爆発する。
そのため、どの銀河であっても白色矮星の爆発エネルギーはほぼ等しいと分かっている。
爆発エネルギーから発生される光がどういう波長か?
それはエネルギーE=hνという式から計算可能であり、hはプランク定数という一定値。
νは光の振動数。
エネルギーがほぼ等しく、hが一定ということは、νはほぼ一定ということになる。
速度=波長×振動数であり、アインシュタイン先生の理論から光の速度は一定、そして、振動数νが一定なので、波長も一定となるわけである。
波長が一定ということは、要は色が同じはずである。
しかし、地球に届く色は同じではない。
先ほども書いたが、地球から遠い銀河ほど赤い方に波長がシフトしているのだ。
物理学者、数学者がいろいろ考えた結果、この波長の変化は宇宙の膨張に因るものであると行き着いた。
この現象を赤方偏移と言う。
これは読んでいる方もきっと体験したことがあるドップラー効果と同じである。
近づいてくる救急車から聞こえる音は高い音、つまり波長が短い音となり、逆に遠ざかる救急車からは低い音、つまり波長が長い音となる”あれ”である。
これが宇宙でも起こっていて、宇宙が光を圧倒的に超えるほどの速度で膨張しているため、空間が広げられ、遠くのある銀河内で発生した白色矮星の爆発の光は空間を伝わって地球に届く間に空間が広げられ、波長が伸び、赤外光になっていくわけである。
これを加味することで、銀河がどのくらい離れているかが算出できるのである。
これをハップル・ルメートルの法則と呼ぶ。
ハップルと言う名を聞くとピンと来る方もおられるかと思う。
そう。ハップル宇宙望遠鏡である。
この望遠鏡は宇宙に浮かび、非常に遠くの銀河から届く光を測定していた。
この宇宙に浮かぶ望遠鏡が測定したものとしては、例えばシャプレー超銀河団。
これは6億5000万光年と距離が算出されている。
赤方偏移の値は0.048、光速の約1/20で地球から遠ざかっている。
赤方偏移の計算方法は波長変化量Δλ / 静止波長λ0で求められる。
そして、ハップル宇宙望遠鏡が観測した最遠銀河がUDFj-39546284という銀河。
この銀河の赤方偏移は10.3。
この値から算出される銀河の年齢は133億6900万年となり、銀河までの距離は317億光年である。
ではもっと遠くの銀河があるのか?が気になるところである。
しかし、実はハップル宇宙望遠鏡はこれ以上遠くの銀河を見ることができない。
何故ならばハップル宇宙望遠鏡はIRの領域までしか見ることができないためであり、これ以上遠い銀河は、放つ光が膨張する宇宙に引き伸ばされまくり、可視領域はもちろんIRの領域まで超えてしまっているからである。
そこで出てきたのが、(ご存じかもしれないが、)ジェームズウェップ宇宙望遠鏡である。
この望遠鏡はハップルよりも遥か長い波長の信号を測定可能である。
ジェームズウェップ宇宙望遠鏡のアンテナには金メッキがなされており、黄色よりも短い光を吸収している。
さらには機器自身が放つ赤外線までがノイズとなるため、機器の温度を50Kまで下げて運用している。
そのようにして精密な測定をしているとのこと。
そうやってこの望遠鏡が見つけた最遠方の銀河が135億年前の銀河JADES-GS-z14-0。
この銀河の赤方偏移は約14.32。
135億年。つまり、宇宙誕生からたった3億年後に誕生した銀河である。
そして、その中で超新星爆発が起こるほど、重い元素(酸素)ができているという謎を生んでいる。
ご存じかもしれないが、これによってビッグバンは嘘だという話まで出ているほどで、今なお議論がされている銀河である。
さらに、ジェームズウェップ宇宙望遠鏡が測定した最古の信号がある。
その信号は赤方偏移1090という値。
宇宙の膨張の引き金と言われているビッグバンの発生は138億年前。
その数字から推定される赤方偏移は約14。
1090と数字はそれを遥かに超えている。
では、これを発生させたものは何か?
それは宇宙マイクロ波背景放射と考えられている。
これはビッグバンの前の宇宙インフレーションの際に凝縮されていたエネルギーのいわゆる残り香であり、文字通りエネルギーから生まれた光がマイクロ波まで引き伸ばされて、現在の我々に届いているのだ。
これの距離を計算すると460億光年となる。
だが、インフレーションのエネルギー水準を考えると発生から約35万年後にようやく素粒子である光子が発生できる程度にエネルギーレベルが下がり、光が生まれることから、460億光年よりも数億光年遠くから届いているとされている。
これが我々が観測できる最遠方となる。
半径460+α億光年、つまり約930億光年となるわけである。
我々が行き着いた距離が1光日なので、約0.0000000000003%。
宇宙、ハンパないサイズである。
そして、例えば、ある映画の最初の言葉ではないが、遥かかなたの遠い銀河の星から見ても、やはり約930億光年の幅を持っているのだろうか?
こういう話を聞いたり、考えたりしていると、いろんなことで悩んでいることがバカらしく感じる。
もう想像すらも追い付かない。
と同時に、もっと前に進まないとなと思ったりもする。
あまりにも我々は知らないことが多すぎる。
このコラムにも何度か書いているが、いまだに世界の95%は未知の物質、エネルギーなのだ。残りの5%すらも理解がままならない。
あまりにも分からなさすぎて、本当に世界は素晴らしいなと思う。
ただこれは、私なりの現実逃避の方法で、心を落ち着けているだけなのかもしれないが。(笑)
さて、明日も頑張ってプログラム作るかな。(笑)
あとがきは割愛させていただきます。
読んでいただき、ありがとうございました。




