第39回 日本の春闘満額回答への違和感について、海外在住エンジニアとしての意見を書いてみた。
まえがきは割愛させていただきます。
本編が短いので、本編のみでお楽しみくださいませ。
● ’24/5/19(日)
本業が僅かながら落ち着いたので、ちょっと記事を読みつつ、ネタを探してみた。
そこで見つけたのが、春闘、大手軒並み満額回答。平均賃金5.17%上昇という記事だ。
円安の影響を受け、輸出企業は数年に渡り、最高益を叩き出している中、今までそれほど賃金には反映されてきていなかった。そして、賃上げしないと物価上昇に全く追い付いていないという世論を受け、ようやく今年2024年の春闘では大手において軒並み満額回答が出てきているとのこと。ようやくデフレ脱却の糸口がチラッと見えてきたような気もする。
ただ、私としてはこの満額回答に大きな違和感を感じている。
以前からこのエッセイを読んでいただいている方はご存じだと思うが、私は海外でエンジニアとして働いている。日本で働いていた時期もあったが、ちょっといろいろ思うところがあり、海外に出た次第である。
こちらに来て驚いたのは、基本的な行動指針が全てお金基準であること。以前のエッセイにも書いているが、社員といえども競合他社の賃金が高ければ、バンバン会社を移る。そのため、会社は有能な社員を残すために良い労働条件を作るしかない。つまり、賃金を上げるしかないのである。
日本でも一応それなりに名の通っている会社に勤めていたが、経営専門職に上がって、残業代は出ない、正味な話、サービス残業も結構あった。だが、賃金はというと、ほぼ横ばい状態であった。
だが、こちらは全く異なる。残業代は出るし、サービス残業はない。(できないと言った方が合っている。)そして、毎年、驚くほど賃金が上がるのである。その理由は先の通りで、競合他社に負けないようにするためである。
ただし、それでも日本で言うところの労使協議(会社と労働組合との協議)において、満額回答というのは見たことがない。当たり前だが、労働組合の要求の方が遥かに高いのである。
その環境に慣れてしまったためか、日本の大手満額回答に違和感を感じたのである。そこには労働組合関係者のデフレマインドが潜んでいるのではないかと思う。どこかで会社へ忖度し、このくらいなら上げてくれるのではないかという思い。その思いによって労働組合側がもっと貰えるかもしれない可能性を自ら放棄しているように思えるのである。
企業側がもっと答えられる証拠として、日本製鉄では要求を上回る回答が出ている。もちろんそうではない企業もあるだろう。だが、それが交渉というものではないか。まずは忖度なしにお互いの要求を言い合う。会社側はこんなに経営が苦しいのだと主張する。組合側は労働者の生活は苦しいのだと主張する。その上で妥協点を見つけ出す。そうあるべきだと思う。
その点で満額回答というのは本来あってはならないのだと考える。
今回の春闘の結果を受けて、労働組合連合の会長は会見で、一定の成果と捉え、賃上げの流れを来年につなげていきたいと言っている。それを見て、私としては、おいおい、それで満足してちゃあかんだろ!?と。デフレマインドのせいで弱腰が染み付いているように思えてしかたない。
もちろんそういった相手の立場を考えた行動、相手を思いやる心こそが日本の素晴らしいところだということも理解してはいる。だが、企業はその心をうまく利用しているのも現実である。そこはある程度割りきってしまわないと、今のデフレからの脱却は難しいのではないかと考える。
と、まあ、真面目な話はこのあたりにして、インフレ、デフレで言うと、普通インフレになると相対的に貨幣価値が下がるはず。だが、アメリカという国、というかドルという貨幣はその逆を行っている。しかも、それが市場では当たり前のように振る舞われている。少し前にアメリカでは10%のインフレをしていても、なおドルという貨幣はどんどん高くなっていた。もちろんそれは原油がドルで売り買いされており、必然的にドルに変換する必要が出るためではあるが、これはものすごく異常なこと、不公平なことだと思う。
これを覆すのはやはり核融合なのだろう。原油など必要ない時代にはやく転換すべきなのだと思う。日本は、不幸中の幸いか、あの災害もあって、核融合に必要なトリチウムを収集する高い技術を有している。もちろん核融合本体の技術も必要だが、このあたりの技術でも優位性を作り、エネルギー問題が解決されることを真に望む。
そうすれば、今みたいに徹夜して、いろいろ大変な思いをしなくても済むのかもしれない。(笑)いや、まあ、進歩を肌で感じられるので、新しい技術を創るのは楽しいんですけどね。ただ、この年で徹夜は本当に堪えるので。(笑)
核融合研究者の方々には本当に頑張っていただきたい。
と、賃上げとは全く関係ない話で終わってしまうエッセイでした。
あとがきは割愛させていただきます。
読んでいただき、誠にありがとうございました。