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かってきままに  作者: 友枝 哲
25/60

第25回 年末に ”シリコン生命は存在するのか?” について少し真剣に考えてみた。

まえがきは割愛させていただきます。

本編が短いので、本編のみでお楽しみください。


●’23/12/31(日)

 とうとう2023年も大晦日。

 今年、はじめてこのサイトに小説 ”ガロワのソラの下で” をアップし、このコラムも8月からほぼ1回/週でアップしてきた。何か充実した年になったなと個人的には思っている。

 今日は、以前”水ってすごいよね”を書きながら、実は書きたいなと思っていた内容があったのでそれを書こうと思ったのだ。

 皆さんは題名の内容 ”シリコン生命は存在するのか?” について、どう思っているだろうか?

 私もこの点について、かなり以前(20年くらい前?)に考えたことがあった。それはトランスフォーマーを観たときだった。

 これってあり得るのか?と。当時はARMSという金属生命が出てくる漫画も流行っており、金属生命体というものがあってもおかしくはないのかなと漠然と思っていた。

 だが、いろいろ調べてみて、今では自分的には、自然発生的なシリコン生命はちょっとあり得ないかなと思っている。

 この考えに至ったのは実はつい最近で、私が本サイトに小説を投稿しはじめた後である。

 そのため、私の小説は宇宙系SFであるが、実は自然発生的なシリコン生命は登場しない。

 シリコン生命とは、文字通り、シリコンを基本とする生命のことである。

 シリコン、つまりはケイ素である。

 最初に断っておくが、地球上にも珪藻という外郭がシリコンベースの生命は存在する。ただし、内部の化合物は我々炭素生命ベース、炭素化合物を使っている。これはシリコン生命とは言えない。

 上記の通り、ほとんどの方がご存じだと思われるが、我々は炭素を基本とする生命体である。

 炭素は最外郭に電子を4個持ち、それぞれで共有結合を行える。

 そのため、非常に複雑な形状をとることができ、複雑な化合物を構成させることができる。

 それらの化合物はその複雑さゆえに、ありとあらゆる性質を持つことができる。

 化学的にはこれらは有機物と言われている。

 もう少しだけ詳細に言うと、我々の惑星に住む生命体を司る有機物の構成は炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、リンがほとんどである。

 炭素、水素、酸素、窒素、硫黄で作られているのが、タンパク質。硫黄の代わりにリンが入ったのがDNAと言われているものだ。もちろんもっと細かくは色々あるが、ざっというと、こういう構成である。

 実は、というかご存じの方も多いかもしれないが、シリコンも炭素のように最外郭に4つの電子を持ち、それぞれで共有結合を行える元素である。

 宇宙空間にはシリコンはどちらかというと多い方である。炭素の10分の1ほどであるが、地球地殻内(空気中は除く)だけ見ると約28%がシリコン、炭素は0.03%しかない。地球上だけで見ると非常にありふれた元素である。

 しかもシリコンも同じように多種多様な有機化合物を持つ。

 では、なぜ私がシリコン生命の存在に対して否定的であるのか?

 それは以下の理由からである。


1.シリコン化合物を溶かすためのフッ酸が希少である

 この項目、結論的にはフッ素が宇宙に乏しいため、シリコン化合物の分解などが難しいと考えている。

 炭素有機物は水に容易に溶けるものが多い。そこで炭素有機物を分解し、別の化合物にしたり、電荷を運んだり、エネルギー(発熱)を作り出したりしている。水はご存じの通り、H2Oで、Hは宇宙にもっとも多い元素、Oは3番目に多い元素である。つまり水は宇宙において存在しやすいと言える。ちなみに2番目はHeヘリウムである。

 それに比べると、地殻内でシリコンが存在する時は通常SiO2として存在する。Siは化合物を作りやすく、気体であるO2と容易に反応するためである。

 だが、SiO2は水には溶けない。水に溶けないどころか、皆さんも聞いたことがあると思うが、酸性の高い塩酸や硫酸という酸性溶液にも溶けないのである。

 SiO2を溶かすにはフッ酸という超強力な酸性液体が必要である。

 ただ、このフッ酸を作るためにはフッ素が必要となるが、フッ素は酸素の約10000分の1しか存在しない。惑星内にフッ酸の海を作るのは容易ではないのである。

 フッ酸がなければ、シリコン化合物を使った他の化合物の合成は何とかなっても、電荷を運んだりすることが難しい。


2. フッ酸の海があるとしてもフッ酸に溶けない細胞膜、隔壁を作ることが難しい

 仮にフッ酸の海ができた場合、フッ酸の海に溶けない細胞膜、隔壁を作る必要がある。生命が自らの形を作る膜である。

 炭素生命において、最初、脂肪酸がその役割を果たした。脂肪酸は水に溶けず、水をはじく性質を持つ。これによって細胞膜を作り、水を内包し、その中で化学反応を起こすことができた。

 ではシリコン化合物はどうか。フッ酸に溶けないシリコン化合物が必要となる。これには窒化シリコンがある。だが、窒化シリコンは固い。固いということは細胞同士が接近できない。擦れると壊れるからである。つまり多細胞に不向きだ。

 さらに窒化シリコンを生成するのが容易ではない。シリコンに窒素ラジカルを当てたりする必要がある。これはかなりの高エネルギー場が必要である。まあ、生成が難しいという点では、もちろん炭素で脂質を作ることも難しいのは難しいが。(笑)


3. シリコン化合物を溶かすためのフッ酸の沸点が低い

 炭素生命は水の蒸発、凝縮とその時の酸化還元作用が重要であったと言われている。

 フッ酸の沸点は約66℃である。つまり、この温度あたりで蒸発、凝縮を経て酸化還元作用を受ける必要がある。

 だが、このフッ酸の沸点に適合する惑星が存在するエリアには当然水が潤沢にある環境であることが容易に想像できる。宇宙の元素分布から考えて圧倒的に水が多いはずである。

 そして、フッ酸は水溶性である。つまりフッ酸が水に溶け込んで薄まる可能性が非常に高い。

 つまり純粋な蒸発、凝縮を体験しづらいのである。これは大きなデメリットで複雑系が発生する確率を著しく下げるのではないかと考える。


 これら3つの項目が、私にシリコン生命の存在を否定的に考えさせる要因である。

 また、2.と3.は何となく相反する条件にもなっている。仮に窒化シリコンが発生するような環境であれば、かなりの高エネルギー環境であることが予想され、フッ酸の沸点付近の環境ではないと考えられる。逆もまた言えるのである。

 そして、まずもって、1.に書いている通り、フッ酸の海が作りにくい。これが一番否定的に思う理由である。

 ということで、我々、炭素生命は非常に希少価値、非常に尊い存在なのだ、ということを肝に命じて生きていければと思う。


 しかし、シリコン生命には夢がある。いろんなSFに出てくる。想像を掻き立てられる。

 私としてもいてほしいと願っている。

 そして、実は私はシリコン生命はいると思っている。

 なんだ!?お前、矛盾してるやん!!と思ったあなた!!(笑)

 私が最初に”自然発生的には”と書いたのはそのためなのだ!!

 たぶんきっと宇宙には超絶文明が進んだ炭素生命がいて、すでにかなり高度なAIが生まれ、アンドロイドが普通に生きているのだと思う。そして、そのアンドロイドはすでに知的生命と考えても問題ないほど、自我を持っているのだと思う。

 長寿命なアンドロイドが主役となって宇宙を冒険しているかもしれない。

 私が思うに、彼らこそシリコン生命ではないかと考える。

 たぶん多くの人が想像した結末?ではないだろうか。(笑)

 いやー、SFには夢があるなー。と、こんな話で2023年の最後の投稿にしたいと思う。

 こんな実になるんだか、ならないんだが、よく分からない話を2024年も上げていきながら、新作SFも投稿していきたいと思います。

 もしよろしければ、これからも読んでいただければ嬉しい限りです。

 2024年もよろしくお願いいたします。


あとがきは割愛させていただきます。

本編が短いので、本編のみでお楽しみください。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  興味深いエッセイをありがとうございます。  ケイ素生命体。確かに炭素と兄弟なのであり得そうだけど、なかなかいませんね。  でも私は、個人的にはそれほど絶望的でも無いかなーとか思っても居…
感想一覧
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