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かってきままに  作者: 友枝 哲
22/60

第22回 海外在住エンジニアが”君たちはどう生きるか”の感想を書いてみた。[ネタバレ注意]

まえがきは割愛させていただきます。

本編が短いので、本編のみでお楽しみください。


●’23/12/3(日)

 とうとうこちらでも見れるようになった”君たちはどう生きるのか”。

 今日それを見て来た。

 もちろん字幕だ。なので、そのまま日本の声優さんの声で見ることができた。

 ネットでは賛否両論だと言うことだけ見ており、どんな内容かは全く見ずに拝見させていただいた。

 で、感想ですが。。。


 めちゃくちゃ面白い!!面白いというか、まさに”君たちはどう生きるか”というメッセージそのままの映画!!

 もう映像からそれを伝えようとする想いが溢れていた。

 というか、なぜこれで否が出てくるのか、そっちの方が謎だった。(笑)


(以下、ネタバレを含みます。まだ見てない方はご注意ください。)


 物語は日本が第二次世界大戦に突入しようかという時代。

 主人公の眞人マヒトの母親が病院に入院していて、その病院が火事で燃え、眞人が母親を失うところから始まる。

 その数年後、日本が戦争に突入し、父親と眞人は、眞人の母親の実家に避難することとなった。そこには新しく母親となる人がいた。その人のお腹には赤子がおり、眞人の弟となる子だと知らされる。つまり、その人が新しい母親となるのだ。

 その人の容姿は眞人の本当の母親と似ていた。その人は本当の母親の妹だったのだ。

 眞人は映画の中で母親が死んだ後のシーンから、この新しい家に来て、自分の部屋に入るシーンまで、一言も話さない。つまり眞人は、新しい母親を受け入れられないのだった。

 それでも、新しい母親は一生懸命眞人と接しようとしていた。

 新しく来た家は大きな屋敷であった。明らかに金持ちで、その屋敷の裏山には不思議なことが起こるとその屋敷内で噂される塔が建っていた。

 そして、眞人にだけ人の言葉を話す青いさぎがいた。

 青い鷺が話す。

「あの塔にはお前の母親がいる!」

 そんな不思議なことを体験しつつ、眞人はその避難先の学校に転校し、初めて登校した。

 父親はどうやら自分の力を他の者に見せつけたいタイプのようで、この頃では珍しい自動車で眞人を学校に送った。

 だが、周囲の生徒はそれを良く思わない。放課後、当然何かとイチャモンをつけられ、喧嘩となった。

 眞人は服がボロボロになった状態で帰るが、帰路の途中で自分から石を頭に叩きつけ、血だらけに状態で家に着いた。この行為は学校の生徒への恨みもあるだろうが、父親や母親に迷惑をかけてやろうとしてやったものと思われる。

 家ではお屋敷の世話人たちが大騒ぎ、父親も仕事から慌てて帰ってきて、学校に文句を言いに行った。

 母親はつわりがひどく、寝込んでいて、眞人のところには来ることができなかった。

 怪我の手当てを受け、眞人は世話人から、「(新しい)母親が会いたがっている。母親のところに見舞いに行ってあげて欲しい」ことを聞く。

 眞人は顔を見せに行くが、ただそっけ無く「早く良くなってください。」とだけ伝える。その時、新しい母親は涙ながらに眞人の傷を覆う絆創膏を軽く触れて、「手当てしてあげられなくてごめんね。」と言った。新しい母親は自分のことよりも眞人を気遣う様子を見せていた。

 次の日、眞人はまた青い鷺に話しかけられ、鷺を射つための弓矢を作り始めた。弓の試し撃ちをしているその時、新しい母親が不思議なことが起こる塔のある森の方に一人で歩いていくのを発見する。だが、眞人は気に止めなかった。

 そして、夕方、世話人たちが騒いでいた。(新しい)母親がいないと。

 眞人は弓を持って、青い鷺に自分の母親がいると言われた、そして、新しい母親が入ったと思われる塔に入っていくのだった。


 という内容だ。ここまではまだまだ序盤である。

 絵的には、見た方はもちろん気づかれていると思うが、至るところに今までの作品のテイストを散りばめている。

 あっ、ここ、ナウシカだ!

 あっ、ここ、ラピュタだ!

 あっ、ここ、千と千尋だ!

 という感じだ。

 だが、メッセージ性という意味では、今作は何か特別な想いを感じた。

 今までのジブリ映画は例えば”科学力の危うさ”だったり、”過保護な子供の成長”だったり、”環境問題”だったり、世界の問題点などを表現するものが多かった。だが、今作はどちらかというと普遍的な、哲学的な面を持ち合わせていて、長い人生を生きた宮崎駿監督が伝えたいことを表現しているように思う。

 それが、最初に書いたが、まさに「君たちはどう生きるか」だ。

 結局のところ、あの塔は何か特別な存在によってもたらされたモノで、自分の世界を具現化できる装置のようである。

 物語の中盤で世話人の一人が話していた。

 何か隕石のようなものが落ちてきて、あの塔が出来上がったのだ。それを大叔父が周囲に囲いとなる建物を付けたと。そして、大叔父はその中に入って、姿を消したと。

 大叔父は自分の世界を作ったが、その世界を創造(たぶん想像の方が近い?)する力が弱まっていて、もうすぐこの世界は消滅するのだと言っているのだと私は思った。

 それを継がせようと鷺を使い、自分の血を引く眞人を呼び、話を持ちかけたのだ。

 そして、これは勝手な想像だが、その世界というのはたぶん物語の中で小説として登場していた「君たちはどう生きるか」の中の世界なのだろう。その物語は大叔父が書いたものなのではないかと思っている。

 塔に入る前に眞人はその小説を読み、涙していた。眞人はその世界に共感する心を持っていると言える。

 その眞人に自分の好きな世界を作りなさい。そしてそこに住みなさいと持ちかけたのだ。

 だが、眞人はそこに辿り着くまでに様々な経験をする。

 鷺に騙されそうになりつつ、いろんな困難を共に乗り越え、仲間として認識するようになったこと。

 新しい母親と出会い、その人が一生懸命眞人に接しようとしているにも関わらず、自分は跳ね返すばかりだったため、その人は心が折れかけ、塔に入ったことを知ったこと。塔の中で新しい母親と眞人が出会った時、母親に「あんたなんか大嫌いだ」と言われ、上記のことにやっと気づいたこと。

 この世界の嫌われもの=”輪廻転生の魂を食い物にするペリカン”にもどうしようもない理由があるということを知ったこと。

 他にもいろんな経験をし、これらの経験から眞人は大叔父の世界を継ぐという提案を断るのだ。

 大叔父は言う、外の世界は滅び行く世界なのだ!と。

 だが、眞人はそれでも良い!青い鷺のような友達を作る=仲間を作ると言っていた。

 話が長くなったが、つまり宮崎駿は

「自分の好きな世界にとじ込もって生きるも良し、この滅びるかもしれない、汚れた世界で生きるも良し、さあ、君たちはどう生きるか?」

 と言っているのだと思った。

 眞人の選択は宮崎駿がそうあって欲しいと願う姿なのだろう。

 この物語を見ていて、ふとヘミングウェイの言葉を思い出した。

「この世界は美しい。戦うに意味のあるところだ。」

 そして、塔の中にはヒミ(だったかな?)という女の子が出てくる。これははっきりと眞人の実の母親と分かっており、そのことは最初に世話人たちが話していた”眞人の実の母親は一度塔に入り、一年後に何も変わらず出てきた”という話に合致している。

 つまりは塔の中は四次元的で母親は子供の頃に塔に入り、眞人=自分の生む子供のことを知り、自分が病院で火事により亡くなることも知ったのだった。その上で自分の世界に戻ったのだ。

 自分はこんなに素晴らしい子を産むのだと。自分の子への愛情がそうさせたのだ。なんとも切ない。

 また、この物語には水、海が多く出てくる。これはもちろんポニョの影響もあるだろう。だが、勝手な想像だが、情報の海、ビットの海のことではないだろうかと思っている。

 さらに勝手な想像であるが、大叔父は宮崎駿監督ご本人で、眞人が視聴者なのかもしれない。私の世界に浸るだけじゃなく、自分の世界を作りなさい。飛び出しなさい。とそう言っているようにも思えた。

 少し前に完結したエヴァンゲリオンも同じようなメッセージだったように思う。

 ”現実社会は汚れているも素晴らしいのだ!!”的なところだったと記憶している。

 描き方は全然違うにしても精神性は似ているのかもと思った。

 そして、最後の再び東京に戻るシーン。あそこでごちゃごちゃ描かないのは、さすが宮崎駿監督!!私の好きな”紅の豚”方式。(笑)あとは見た人が考えたことが正解というスタンス。私は大好きです。

 しかし、最初の火事のシーンといい、自転車で押す荷車の動きといい、本当に描き方に細部までこだわり抜いてて、もうすごいとしか言いようがない。失礼な言い方かもしれないが、あのお歳であのエネルギーを出せるのは本当にバケモノだと思います。

 まだまだ若い世代はもっともっとエネルギー出さないとなと元気をもらいました。

 あと、最後にナウシカ2、作っていただけるともっと感動します。(笑)

 しかし、題名に書いたけど、今回は”海外在住エンジニア”は全く関係ない内容ですね。(笑)そこは人寄せと思って見逃してくださいませ。

 皆さんも”君たちはどう生きるか”を見て、どうお感じになったか、感想お聞かせいただけると嬉しいです。


あとがきは割愛させていただきます。

本編が短いので、本編のみでお楽しみください。


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