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かってきままに  作者: 友枝 哲
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第2回 海外在住エンジニアが”オッペンハイマー”を観た感想を書いてみた。[ネタバレ注意]

本編が短いので、そちらでお楽しみください。

●2023年8月17日(木)

 私事ではあるが、今日が夏休み(有給)最後の日。そこで、海外在住の利を活かし、日本ではまだ公開されていない”オッペンハイマー”を観てきた。

 オッペンハイマーは、今や日本のいろんな映画評論などで結構叩かれている。

 バービーがアホ丸出しでネタにするから、余計に叩かれてしまっている感もある。(ノーラン監督もそうじゃないと言えば良いのに、たぶん契約か何かで広告に口出しできないのではないかと思っている。あまりにノーラン贔屓かな?)

 が、私が映画を観たところ、映画評論で書かれている内容は、原爆というものを主体にそれの悪性を表現しているかどうかのみに焦点を当てて書かれており、ノーラン監督が言いたいことはそれだけではないと感じたので、映画評論を鵜呑みにしないでほしいと思った次第である。

 結論として、私はありだと感じた。なぜそう思ったのかを以下に示す。

(以下、ネタバレ注意です。映画を観る前に情報を入れたくない人は読まないことをお勧めします。)

 あの映画は”原爆”に焦点を当てたものではない。(と思う。)主たるはアメリカの正義は正しいのか?について、”オッペンハイマー”という人物視点で描いた物語である。(と思う。)

 もちろん原爆を造ったプロジェクトリーダーとして、オッペンハイマーが描かれ、成功した際に、周囲は歓喜し、それとは対称的に、そこからのオッペンハイマーの罪悪感を抱くシーンが描かれている。

 オッペンハイマーの逸話で良く言われているトルーマン大統領に”私の手は血塗られてしまった。”というシーンもちゃんと描かれているし、広島、長崎のフィルムを見るオッペンハイマーの後悔の念はひしひしと伝わってくる。

 もちろん、だからといって、これを被爆者の方が見ても何ともないかというと絶対にそんなことはない。はっきり言って日本人としてはかなり胸くそ悪いシーンがあった。

 だから賛否は絶対に起きる。

 だが、物語の大半は、1954年あたりにアメリカで起こった”赤狩り”、つまり共産党員の社会的排除活動にオッペンハイマーが吊し上げられ、それを議論しているところが描かれている。実際にオッペンハイマーはアメリカ共産党員であり、集会にも参加していることが描かれている。

 共産党員だからという理由で、原爆の情報などを他国に漏洩しているのではないかと攻められる。だが、そんな証拠は挙がらない。そんな時に、一緒に開発をしていたメンバーから灰色な意見が挙がる。

 しかし、本質はオッペンハイマーがその後アメリカが開発を進めた水爆に対して、強い反対を示したこと、原爆の脅威と核軍縮を世界に呼び掛けたことに懸念を持つ政府(?)の動きなのである。

 結局、オッペンハイマーはFBIの監視下に置かれることとなる。そして、灰色の証言を行ったメンバーこそが”水爆の父”と呼ばれているテラーであり、アメリカは水爆を造ってしまった。この動向こそがアメリカの正義なのだ。

 最後のシーン、オッペンハイマーとアインシュタインが会話するシーンがある。

 そして、最後の最後にオッペンハイマーが言う台詞がきっとノーラン監督がアメリカの正義の行く末を表しているものだったのではないだろうか。

 最後の台詞とは”破滅への連鎖反応を我々が引き起こした”的なことを言っている。

 その言葉の後、原爆、もしくは水爆で世界が滅びゆくシーンが描かれている。それがアメリカの正義の行く末なのだと言いたいのではないだろうか。

 たぶんノーラン監督は原爆だけに焦点を当てたくないということで、こういう描き方にしたのだと思う。

 なので、私の結論は”あり”だ。(この題名が”原爆の父”ならなしだが。)

 日本でも早く上映されることを願っている。

 私も物語を創る端くれとして、出来るだけ絶望で物語を終わらたくはないと考えている。なので、この話の最後がこのようなシーンであってほしくなかった。それだけが私がノーラン監督に少し失望した点である。


本編が短いので、そちらでお楽しみください。

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