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22話

※今回のあとがきは例のスキップ回に着いての話になります

_______裏の世界、魔王の屋敷。

二階にある僕の部屋は、いつも静寂に包まれている。

人の気配は殆どなく、執事も徘徊している時に出会わなければ遭遇もしない。

そんな孤独に包まれた空間で、僕はフランシミアの手書きラブレターを額縁に入れて飾ると、ソファにくつろいだ。

フランシミアから手に入れた血液は半分に分けて、とりあえず半分は飲んでみる。

それは甘美な味で、しかしスパイスのような混ざり物があるからか少し舌にピリつく。


「ふむ……」


甘いのに少し刺激的、マサラチャイのような感じだ。

僕個人としてはこのスパイス要素を取り除き甘味を強くすればとろけるような味で完璧なのだが、彼女の生活環境を変えれば血の味は変わるものだろうか。

これも要検証だ、なんて独り言を吐きながら、僕はもう半分の血液を持ちながら、頭の中でどういう風にするか練り上げる。

実際、フランシミアに言われなくても遺伝子情報を元に遠隔で投影する案は既に考えついていた。

がしかし、それをわざわざ考えさせて言わせることで検証という名目で、合法にミアの血液を入手したのだ。

そうして僕は血液を使い、モニターを出す。

フランシミアの平行世界の姿、モニターに映されたアレが見たいと期待をしながら開いてみると、あの美しい顔が見えた瞬間、画面が黒く覆い隠される。

そうして戻らなくなり、画面には何も映らなかった。


「……やはり、そう上手くはいかないか」


そう呟いてモニターを閉じると、ベッドに寝転がる。

超越魔法の研究は数百年としてきたから、ここ数ヶ月程度で手に入れたものが急激に完成していくなんて甘いものでは無いことをよくわかっている。

干渉の方法は僕自身も成功した試しは無いし、映った相手の可能性を見るだけでも圧倒的な成長ではある。

ゆっくりと着実に。

そう考えながら目を閉じた。









_______夢を見た。

気の遠くなるような、しかし幸せな夢。


「ルオンは、とっても凄くて、やさしくて……いい人だよ…」



幼い声が、甘く甘く響き渡って。

僕は、頭を撫でられていた。

小さな体に、幼い顔。

そう、フランシミアの平行世界での姿だ。

記憶は脳の整理だと言う。

寝る直前までそれを求めていたから、夢に出るのはある意味当然だ。

余程この少女が、頭にこびり付いたのだろう。

しかし、記憶の整理として整えられない運命も、同時にある気がした。



____フランシミアは運命だ。レイバウンスにとって、そして僕にとっての運命。

「_______」となりうる存在である彼女は、一目見た瞬間からこの怜悧な心が突き動かされた。

会ったことも話したことも無いはずの相手なのに、そう確信した。

それがまさに、頂上なる神の運命の巡り合わせと言わんばかりに。


___そうして、少女は声を上げた。


「中々夜が開けないね、ルオン」


少女は僕に近寄り、声を囁いた。

明晰夢の類では無いからか体を動かすことも声を出すことも出来ず、一人称の視点で、独りでに僕は喋り出す。


「でも、……僕もいつか、明日の朝日が見れる日が来るんだろう?」


不思議な会話。朝日など、表の世界に出れば毎日のように見られると言うのに。

少女は切ないような、振り絞るような声で僕に声をかける。


「うん、わたしが連れて行ってあげる。ふたりで、朝日……見に行こうね」


あまりにも優しい声。

僕を受け入れる、甘い甘い声。


僕はいつだって孤独だった。

それは誰も近寄らず、そして誰も近寄らせなかったから。

千年以上生きて得た結論はつまらないようなもので、僕は僕以外の下等生物に情を抱くことなど辞めた。

それなのに、フランシミアには確かな熱を、情を抱いていた。


あぁ、特別だ。

フランシミアは特別なんだ。

この僕の人生を変えるために生まれてきた、ひとつの舞台装置なんだ。

そしてそれは……「_______」となることで、完成するのだ。


この僕、ルオン・ヴェロ・エルドリッジに命を与える機械仕掛けの神として。


「___」


認識できない声が僕の口から漏れた。

確かに言葉として発したはずなのに、なんと言ったのか、聞こえもせず、脳も認識しない。

ただ酷く優しいその声は、誰にも受け入れられなかった僕を優しく包むように抱きしめた。

優しく甘い匂いと、ふわふわとした肉の感触と、艶やかな髪の一本一本が僕の体を刺激し尽くす。


(あぁ……なんて、幸せな夢なんだろう)


このまま溶けて、死んでしまえたらいいのに。

何も苦しいことも悲しいことも、嫌なことも知らないまま、この少女の胸の中に抱かれて、消えてしまいたい。

きっとたどり着けるはずなのだ。


フランシミアが「_______」として完成すれば、超越魔法を手にすることが出来れば、僕の知らない全ての世界の真実と、そして真っ暗で見えないモニターの向こうにある景色が……

23話〜25話はフォルフォニアのターンなのですが全年齢版では成人向けシーンを載せないと全く意味不明な内容になるので全カットすることにしました。どうにか全年齢版に出来ないかと描写を減らしては見たのですが病むレベルに中身が無くなったのでカットした方が内容の気持ちよさの部分でも精神安定上の部分でも全然良かったです。

なので今回は22話ですが次は26話になります。

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