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9話 ※成人向け本編と内容違います


_______放課後の、静かな教室。

無属性学科の自由な生徒たちは授業が終わると一時間もせずに解散し、きっと今は思い思いの時間を過ごしていることだろう。

放課後にまで授業がある白魔法学科や、機械整備とプログラムに時間がかかりこだわりのあるものは学校で暮らす人間もいるレベルの現代魔法学科に比べれば、いや、比べなかったとしても無属性学科はこの学校で一番緩い。


そんな中、弱弱とお辞儀をする男がいた。


「ルオンさんの授業は、大変素晴らしいものでした」


ローウェン先生は生徒に辛辣 (ツッコミ)に対応していた時とは大違いに、低姿勢でルオンにそう告げた。

しかし彼は、ふん、と一言で薙ぎ払う。


「僕が出来るのは当然だ」


その雄々しい態度もまた、優秀さ故なのだろうとローウェンは考えた後に、またひとつ会釈をしてではこれで、と去っていく。

誰もいなくなった教室で、ルオンはため息をついた。

何せ彼はドのつく人嫌いだ。フランシミアがいなければ、学校など寄り付きはしない。

しかも普段は"趣味兼生きがい"の為以外は裏の世界から出ることはなく、なんならフランシミアと出会ったあの日でさえその一環で外に出たということしか無かった。

しかもルオンはずっと病み気味で、俗に言うダウナーでメンヘラなタイプだった。

普段は寡黙で無口、ルスランから話題を振られないと絶対に喋らない。

しかも世間話を嫌い、そういう類の話をされた瞬間立ち上がり出ていく始末。

気に入らなければ癇癪を起こして暴れだし、しかも彼は魔王候補でありながら既に魔王同等かそれ以上の持っているからか規模も大きい。夜伽相手の女が気に入らないとなったら、周辺ごと滅ぼしてしまいかけるくらいには。

それで500年前、彼の情緒不安定さひとつで人のある国は滅びかけ原因も分からぬまま大戦争へ発展した。

流石にルオンはルスランと魔王であるルカインに説教されるものの、一切聞く耳を持たず、反省もしていない。

そうして魔王候補たちに当たり前のように与えられていた夜伽の為の女性たちは、ルオンにはあてがわれなくなり、ルオンは自分で好みの女を調達することになっていた。

そんな魔王たちが住む屋敷で最近変わったことの話題と言えばルオンが上機嫌な事だ。

彼の機嫌が良くなるのは好みの幼女を手篭めにした後か、趣味でいい結果を出した時だけだと言うのに。

しかも癇癪を起こすことも少ない。

執事達と魔王の胃痛もかなり減っていた。

それもそのはず。


「フランシミア……フランシミア、アミュレット」


フランシミアのロッカーは、いわゆるガリ勉だからかしっかり教科書はないもののあとの勉強道具は放り投げられたままだ。

普段JtoBで戦っているからだろう、学校から配布された杖もそのまま置かれている。

ルオンはそれを開け、式典用のローブを取れば顔いっぱいにそれを覆って、吸い始める。


「は……あ、ぁぁ……ミア…僕のミアの匂い……」


ルオンはゾクゾクと脳から快楽物質が漏れだした。


「ミア…早く僕のものになるんだ…、ミア…ミア…」


彼女のロッカーに溢れた要らない備品を嗅いだあと、ルオンは懐から魔法カメラを取り出す。

そこに映し出されたのは幕机の内側に設置されたカメラの……丁度椅子の座面の様なものだ。

そこにあるのは柔らかな肉、先に見えるのは黒い布地。


ルオン・ヴェロ・エルドリッジはシンプルに言えばロリコンだ。

筋金入りの幼女趣味なその男は、無駄に力と権力を持つ。

彼は学園長に会いに行ったあと、そのまま無属性学科の教室に行き猫亜人の嗅覚でレヴィの座る席を特定し、ちょうどいい位置を計算して幕机の内側にカメラを設置していたのだ。

そうして盗撮されたフランシミアのインナーは、彼の今日の大きな釣果だ。

いくらでも女を弄べるルオンにとってこの行為は屠門大嚼に過ぎないが、彼のその感情を無理やり人の器に当てはめるのならば「恋」なのだ、一応。

……言おうと思えばそれは恋だし、愛。

物は言いよう。


ルオンはフランシミアのローブを良いように利用して、おぞましい言葉をブツブツとつぶやきながら一人の時間を愉しむ。

押し付けて、捩じ込んで、吐き出して。

そういう想像に脳を染め、ルオンは自らの妄想に勤しんだ。

フランシミアとの楽しい時間を考え、ニタニタといやらしく笑っているとヒュンと後ろから音が立つ。


ルオンはローブを拝借して空間魔法で自宅にねじ込むとロッカーを締め、何事も無かったかのように教壇へ向かおうとする。

扉が開くと、噎せ返るような雄の匂いに顔を顰め、その男は口を開いた。


「……、まあ、薄々想像着いてはいたよ……ルオン。」


彼はルスランだ。ルオンと同じく猫亜人に化けて、貼り付けた笑みを浮かべた。


「……貴様が何の用だ」


「何、君と同じさ。求めるものが居る、それとより良き逢瀬を楽しむ。それだけのこと」


ルスランがそういうと返事もしないままルオンは裏の世界へ消えていく。

いくら無属性学科にあらゆる事象改変を起こさない結界があろうとも、そんなもの所詮人の一魔術師作ったものに過ぎない。

ルオンの絶対的な力に、それはとても勝てないものだ。


そうして消えていったルオンを、ルスランは遠目で見つめた。


「_______本当に良かったよ。ルオン。君がカルト宗教なんかに明け暮れていて。お陰で僕は魔王になれるし……、おかげで、君と争うこともない。」




全年齢版初の成人向け版と内容が違う回です。この回はまだマシな方です


※タイトルナンバリングに関しては本編に合わせるため、丸ごとカットされた回の次は数字が飛びます。その前の回の後書きでカットすることは言うので数話くらい飛んでる時はそういうことです

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