僕は異世界に行ったのか?~8時だよ~
「目を覚ましたのね?こうじーー!」
お母さんが泣いていた。あれ?ここは病院のベッド?おかしいな。さっきまで異世界にいたはずなのに。異世界『ドリフ』に召喚され大活躍した僕たちは『ドリフターズ』と呼ばれタケシ、サンマ率いる魔の軍団『ひょーきん族』と戦っていた。土曜夜8時から始まった大決戦。えーっと。結果はどうなったんだっけ?
「お母さん。僕とチョーさんとブーさんが雷魔法の使い手でね?カトちゃんとケンちゃんが『お風呂屋さんみたいな魔法があったら』なんて言って熱湯を魔物に何度もかけたり……」
「こうじ。あなた夢を見てたのよ。あなたはね?交通事故にあって今日まで病院で寝てたのよ?」
「えっ?」
チョーさん。ブーちゃん。カトちゃん。ケンちゃん。そして僕の乗ったバスが崖から落ちる事故があったらしい。
「じゃ……じゃあ皆は!?」
「おーい!こうじ~」
「お前も起きたペッか!?」
「あっ!」
僕の病室にやってきたのはブーちゃんとカトちゃん。頭には包帯。じゃあやっぱり事故ってのは本当だったんだ。思い出してきた。なーんだ全部夢か。
「こうじ……ドリフターズ。覚えてるか?」
「!?」
夢……じゃない?
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『三人同じ夢を見ていた』なんて誰に言っても信じては貰えなかった。内容も内容だしね。
ドリフターズの話は僕たち三人の間では禁句になった。忘れようと思ったんだ。
それでいいと思った。ドリフターズの事を思い出そうとするとどうしても『事故で助からなかった』チョーさんとケンちゃんの事を思い出してしまうから。それから長い時間が経った。長い長い時間がね。
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『8時だよ!』
老衰で死んだ僕たちは異世界にいた。こっちの世界は時間の経過が酷く遅いらしくチョーさんとケンちゃんは若いままだった。
「なんだいお前らヨボヨボにフケちまって!駄目だこりゃ!」
「年取っちゃや~よ♪なんてね。お前らがいなくなって敗北続きだったんだ!……若返れ!」
「うぉぉぉ!」
チョーさんとケンちゃんの若さを分けてもらった僕たちは全員60ー70才ぐらいになった。若くなってこれかぁ。全員おじさんになっちゃったなぁ。
『いくぞバカ野郎!なんだバカ野郎!』
『ファーーっwww』
ひょーきん族が攻めてくる!?護らなきゃ!僕たちの第二の故郷。『ドリフ』を!
「よーーし!次いってみよー!」
チョーさんのかけ声をきっかけに僕たちは走り出した。土曜夜8時の戦いはこれからだ!