96話 傷ついた魔物
ワイバーンを倒しながら頂上付近の大きな洞窟に辿り着いた。
「ギャアァァ――――!」
洞窟内から青く燃えているワイバーンが吹っ飛んで下に落ちた。
青い炎……洞窟に他の魔物がいるみたいだ。
『青い炎を扱えるなんて恐らく異常種がいるみたいだね』
「やっぱりそうか、油断はできないな」
『そうだけど……何か変だよね……もっと魔力が強くてもいい気がする……』
エフィナもおかしいと思っているのか。
「まあ、この目で確かめないとわからないか」
『うん、そうだね!』
洞窟内は少し暗いな。
「――ライト」
光魔法を使い――周りを明るくした。
ワイバーンの反応がある場所へと進む――。
意外に距離があるな……。
「「「ギャアァァ!」」」
ワイバーンの群れが見えてきた――何かを火を吐いたり、嚙みついたり、尻尾で叩いている。
縄張り争いでもしているのか?
さらに近づくとハッキリわかった。
ほかのワイバーンと比べて一回り小さく傷を負い、やせ細った青いワイバーンだ。
『珍しい……ブルーワイバーンだね……』
「異常種か?」
『違うよ稀種みたいなものだよ』
稀種? そんなに珍しいのか。
『このままだとあの子……身体が持たないよ……』
確かに魔力が少なくなってきている。だから反応に引っ掛からないのか。
稀種って魔物と言えど、この世界の天然記念物な存在だよな……。
山奥なら人にも危害を加えていないし助けるか。
「ブルーワイバーンを助ける。アイシス、準備はいいか?」
「承知いたしました」
『うん、いい判断だね!』
まずはブルーワイバーンを守らないと――。
「――プロテクション!」
無魔法でブルーワイバーンを全身魔力でコーティングして防壁を創った。
これで安心だ。
再び無魔法使う――。
「――ヘイトアップ!」
「「「ギャアァ! ギャアァ――――!」」」
ワイバーンの群れは俺に気づいたのか向かってくる――。
「アイシス、一掃するぞ」
「かしこまりました」
アイシスと一緒に【混合魔法】を使う――。
「「――――アイシクルトルネード!」」
「「「ギャアァァァァァァ――――!?」」」
鋭い氷の竜巻を起こし――――ワイバーンを吞み込む。
竜巻が弱まるとワイバーンは傷だらけになり――地面に落ちる。
ほかはもういないな。
ブルーワイバーンに近づく――。
威嚇や攻撃はしてこない――敵と認知はしていないみたいだ。
『人よ……なぜ妾を助ける……』
「な……しゃべれるのか……?」
『妾は長年生きておる……言葉など容易いことよ……』
まさか知性ある魔物は初めて見る……妾? このブルーワイバーン雌なのか……それよりも。
「害があるとは思わないからな。今傷を治してやる――ヒール!」
回復魔法を使う――傷が多いせいか治りが遅い……。
「私も手伝います――――ハイヒール」
アイシスは中級の回復魔法を使ってくれる。助かる。
もう少しだ……けど深い傷はまだ治らない……一か八かやってみる――。
「――――ハイヒール!」
よし、俺も中級の回復魔法を使える――これなら――。
傷だらけのブルーワイバーンは全て完治した。
『妾は魔物だぞ……助けていいのか……』
「別に襲ってこないし、いいんじゃないか。そのまま素通りってのも酷だから」
『そうだよ! 君かなり珍しいから放っては置けないよ!』
『ぬ? どこからか声が聞こえるのぉ……』
エフィナは念話を送ったのか。
ブルーワイバーンにエフィナのことを伝えると――。
『なんと……そのような珍妙が……』
「いや、俺からしたら魔物がしゃべれるのが珍妙だと思うが……それで、どうして襲われていたんだ?」
『実はのぉ――』
話によると長年ここでのんびり暮らしていたが、ここ最近にワイバーンが集団がここを縄張りにし争いが起きたと言う。
あまりの多さに対処仕切れなくなり息絶える寸前だったのこと。
やっぱり知性があるとほかと違って単独行動するよな。
それに隠居生活を邪魔されたとかたまったもんじゃない。
「大変だったな……」
『其方たちが来て感謝している……しかし腹が減って動けぬ……』
この様子だと長期間は何も食べていない。
何かの縁だミツキさんに説明して動けるようになるまで面倒見るか。
「わかった、動けるまで飯を食わせてやるからゆっくり休んでくれ」
『誠か!? それはありがたい……其方は優しいのぉ……』
ブルーワイバーンは涙を流している……よほどお腹が空いているようだ。
「ちょっと待ってくれよ。あとは仲間に説明しないと」
タイミング良くフランカたちが来た――。
「お~い! ダンナとアイシスそこにいるのか?」
「2人とも来たよ!」
『フランカと精霊には説明したから大丈夫だよ!』
エフィナさん相変わらず手際がいいですね……。
「変わったワイバーンがいる!」
「まさかコイツ……異常種!?」
「2人とも、大丈夫ですの!?」
ミツキさん、ウィロウさん、グラシアさんに訳を話す。
「大変でしたね! ではブルーワイバーンさんが良くなるまでここに泊まりましょう!」
ミツキさんは喜んで受け入れてくれた。守り神と一緒に住んでいたから躊躇いはないみたいで助かる。
「まさか……魔物を手助けするとか……」
「少し抵抗がありますわ……」
2人はあまり乗り気でないようだ。
無理もない魔物は倒す者だと教わっているから抵抗はあるよな。
「知性があるので大丈夫ですよ。限界みたいだし飯をあげないと――肉でいいのか?」
『ありがたい……食べられる物であればなんでも良いのじゃ……妾は好き嫌いはない……できれば肉は塩をつけて焼いてほしい……味のある物は好みである……』
雑食なのか!?
それにグルメだな……長年生きているとそうなるか……。
ある問題が発生した……。
「塩か……手持ちの量だと足りないな……」
食べる量を考えると全然足りない……。
『塩なら心配いらぬ……妾の後ろに沢山あるのじゃ……』
後ろ? ブルーワイバーンの後ろに進むと――。
周りに白い結晶が生成されている…………これ、岩塩か!?
舐めてみると――しょっぱい……岩塩でした……。
「岩塩だぁ~! 高く売れそうです!」
確かに結晶でできているのは高く売れそうだな。
『妾の恩人じゃ。好きなだけ持っていくとよいぞ』
『わ~い、ありがとうございます!』
ミツキさんは早速アイテムボックスからピッケルを出して採掘する。
商人の血が騒ぎますね……。
それじゃあ、ありがたくもらいますか。
塩は確保したあとは調理方はどうするか――。
「ダンナ、大きな塊があったぜ!」
フランカが持ち上げてきたのは直径5m以上はある岩塩だ。
「すごいのあったな……」
「そこらへんに転がっているからまだあるぞ!」
「もう宝の山だ……」
「これで岩塩プレートにしてバーベキューでもしようぜ!」
あっ、それを忘れていた……。
「今すぐプレートにできるか?」
「ああ、問題ないぜ!」
そうと決まれば、今日の夕食はBBQだ。




