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94話 土砂降り


 ――翌日。


『お寝坊さん、いつまで寝ているんだ! もうすぐお昼になるよ!』


 エフィナの声で起き上がる。

 ん? もうすぐお昼?


「今日も朝早く出るはずじゃあ……」


『寝ぼけているね! 窓を見てみなよ!』


 窓を見ると土砂降りですぐ近くで雷が落ちている。

 この家は防音対策がバッチリだから外の音が聞こえない。


「これだと出るのは無理だな……」


『そういうこと! 今日はゆっくり休んでいいみたいだよ! ほら、もうみんな朝ご飯食べたから早く行きな!』


「わかった」


 リビングに向かうと――みんなお茶を飲んでくつろいでいた。


「おはようございます! 雨がすごく降っているので今日はゆっくり休んでください!」


「わかりました」


 テーブルに置いてあるおにぎりと味噌汁を食べて――俺もリビングでゆっくりする。

 

 時間が経ち――みんなそれぞれ違うことをしている。

 フランカは工房で作業を始め、ミツキさんはそれを見学している。


 精霊は普段通り本を読んでいる。


 アイシス、ウィロウさん、グラシアさんはお菓子の食べ比べをしている。

 俺はその横で3人の話を聞いていた。


「全部美味しいけど、このパンナコッタと言う甘味は滑らかで美味しいですわ……気に入りました」


「私はチーズケーキが気に入ったな、濃厚なチーズが甘さと合って美味しい!」


「私はガトーショコラでございます。甘さ控えめで1日中食べ続けられる余裕があります」


 和んでいるところ申し訳ないが…………食べ過ぎだろ!?

 グラシアさんは10個、ウィロウさんは2ホール、特にアイシス…………5ホールも食べている!?

 その前にパンケーキ、ミルクレープ、マドレーヌ、フィナンシェなど食べているのに……アイシスは別として、2人は昼食を食べられるのか……。


「あの……そんなに食べたら昼食が……」


「問題ありませんわ」

「問題ないぞ」

「問題ありません、別腹です」 

 

 それならいいです……大きなお世話だった……。


 他も見に行くか、工房に入ると――金属音が鳴り響く。

 フランカは赤くなっている金属を金鎚(ゴールドハンマー)で叩いて作っていて――ミツキさんはその近くで見ている。

 …………いや、近すぎだろう!? 火傷するぞ!?


「熱くないのですか……」


「全然平気です!」


 平気なのか!?


『驚いているけど、男の娘は()()()()()()が発動して大丈夫みたいだね』


『それか……じゃあ、その魔物って火耐性があるってことなのか?』


『そこまではわからないけど、加護が発動しているからそうかもしれない』


 その魔物いろいろと気になるな……。

 あとで聞いてみるか。


「ふう……これくらいでいいか、飯でも食おうぜ!」


「はい! 昼食は何かな~」


 リビングに戻ると――テーブルには一昨日狩ったキングバッファローの牛タンシチュー、牛タン丼、味噌汁、サラダが置いてある。

 凝っていますね……。

 タンシチューとか時間がかかるのに、いつの間に作っていたんだ……柔らかくて美味しいけど。 


「舌なんてゲテモノが食うのかと思ったが違うみたいだな……こんなに美味しいなんて……」


「さすがですわね、この調理法は賢者の知恵かしら?」


「キングバッファローの舌がこんなに美味しいなんて初めて知りました! 今度村の人に教えます!」 


 牛タンなんてこの世界は食べないからな。

 ミツキさんは気に入ったのか牛タン丼を5杯食べた。


 その後、みんなでリビングでくつろぐ。


 タイミングもいいしミツキさんの村のことを聞いてみる。


「前から思っていましたが、ミツキさんの故郷はほかと比べて全然違うみたいですが、具体的にはどう違うのですか?」


 そう言うとミツキさんは待っていましたかのように答えてくれる。


「そうですね! 畳がないことです! どこに行っても畳がなくて驚きました!」


 畳があるのか……じゃあ、日本と同じ家みたいだな。


「あとですね! 神社がなかったです! 周りになく参拝できなくて残念でした!」

 

 神社あるのかよ!? いや、待てよ何を祀っているんだ?  


「ちなみに何を祀っていますか?」


「守り神様です!」


 あっ、そうでしたね……。

 このタイミングで聞けそうだ。


「あの、いつも言っている守り神って魔物ですよね? 何の魔物ですか?」


 それを言うとミツキさんは首を傾げる。


「う~ん……どの魔物にも当てはまらないのでわかりません!」


 当てはまらないとか異常種か?

 だったらウィロウさんとグラシアさんなら何度も行っているからわかるはず、2人に聞いてみると。


「そこに行ったが姿は見えなかったぞ」

「何度も行きましたが警戒されているのか姿を現れませんでしたわ」


 やっぱり外部から来ていると姿を見せないのか……。


「それじゃあ、似ている魔物とかいますか?」


「似ているのは…………ブラックウルフに少し似ています! よく守り神様は旅人から「いぬっころ」と呼ばれていたそうです!」


 そうすると狼か犬の部類か。

 もしかして狛犬? 

 大体はわかってきた。


「あと守り神様はドラゴンに嚙みついて倒したとかよく自慢しています!」


 ドラゴンよりも強いのか!?

 まあ、本当なのかわからないけど……ホラ話もありえる。


「なるほど、わかりました。ありがとうご――」


「あとですね! 私の村の人は――」


 話を終わらせようとしたら、ミツキさんは話し足りないのかいろいろと話してくれた……。

 今日は時間がたっぷりあるからいいか。


 村で住んでいる人数は5128人いること――。

 食事はみんなすること――。

 みんな働き者――。

 周りは魔物が多いがみんなして強力して戦っていること――。

 みんな笑顔で毎日が楽しんでいることなど……。


 ちょっとおかしいぞ……それならミツキさんは村から離れなくてもよかったのでは?

 こんなに同族愛が強いならアイテムボックスを持っていても無理に村の外に出なくてもいいはず……。

 何かありそうだ……。


「ちょっとレイを借りるよ」

「レイ、ちょっと話がありますわ」


 ウィロウさんとグラシアさんは感づいたのか、俺をつれてリビングから離れ廊下に移動した。


「レイ、何か深刻な顔で言いたそうだったから私たちに話してからミツキさんに言ってくれ」

「そうですわ、レイが何か考えていたのは嫌な予感がしませんわ」


 疑っていますね……。

 2人にミツキさんの疑問点があることを言うと……。


「良かった……早く気づいて……」

「本当に良かったですわ……」


 何か言ってはいけないことだったのか……。


「どうしてですか……」


「実はね――」

「実はですわね――」


 2人の話によるとミツキさんが村を出た理由は両親が原因不明の病になり――薬を探すため、村を出て商人になったらしい。

 やっとのことで1等級のポーションが手に入り、両親に飲ませたが効かずに息を絶えたと言う……。

 そんな過去があったのか……2人が止めてくれなければ言いそうだった……。


 守り神の加護はどうしたんだ?

 それ以上に深刻な病だったのか……。

 エフィナに聞いてみると――。


『加護はそこまで万能ではないからね……女神の加護でもそうだよ……』


 限度はあるか……。

 もうこの話はなしで。


「わかりました……このことは言いません」


「ああ、そうしてくれな」

「お願いしますわ」


 再びリビングに戻る。


「何を話していたのですか?」


 気になりますよね……。


「それは……ミツキさんと一緒にお風呂に入る順番を相談していたんだよ……」


「そ、そうですわ! 今日はレイに決定しましたわ! そうですわよね……レイ」


 唐突に考えたごまかしですな……。


「そうなんですか!? わ~い、今日はレイさんと入れる!」


 喜んでいますね……2人なんとかごまかしてホッとしている……。 


 けど、アイシス、フランカ、精霊は納得していませんでした……。


『ボクが説明するから安心して入ってきて』


 その後、エフィナが説得して渋々納得した。


「それでは入って来ます!」


 ミツキさんと浴室に向かい――身体を洗い――湯船に浸る。


「やっぱり、レイさんの近くにいると落ち着きます!」

 

「そうですか……」


 いつものように股の近くに座っています……。


「レイさん、私は今幸せです! こんなにいい人に恵まれて感謝してます!」


「それはミツキさんが頑張っているからですよ」


「そんなことはありません! もっと頑張らないといけません! 村を豊かにする約束をしています!」


「約束ですか?」


「はい! お父さんとお母さんと約束しています! だからもっと頑張ります!」


 まさか……両親と約束を……だから商人を続けているのか……。

 ウィロウさんとグラシアさんのあとに聞くと切ないですよ……。


「俺は応援してますよ……何か手伝えることがあればなんでも言ってください」


「ありがとうございます! これからもよろしくお願いします!」


 ミツキさんは物凄い笑顔で返してきた…………尊いです。


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 時間が経ち風呂をあがった。


 村を豊かにするか……俺も時間があればミツキさんの故郷に行ってみたいものだ。

 それで何か困ったことがあれば手助けはしたい。

 旅人が貢献したように……。


 さて、夕食でも食べるか。  

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